なつ
まもなくに迫る学園祭、直後にまちかまえるは模試。最後の夏が暮れにかかっては居るものの、あまり掴みきれていない。
思えば夏休みが始まったときから夏の実感はこぼれ落ち続けている。
島生活3年目にして初めて、飛行機を取り違えて1週間早くに始まった夏休み。
毎日毎日、起きて、寝起きの気だるさとべっとりとした暑さをまといつつチャリをこいで、塾か図書館に向かっていた。
外に出たらメガネが曇るほど冷えた室内と、すりガラスごしの空じゃ季節もなにもない。
1番暑い昼頃を、集中力が朧なままに、性にあわない映像授業を見つめて過ごし、暗くなったらやり切った感を醸し出して家に帰る。
寝る。塾にいく。見る。帰る。寝る。じゅくに…
行き帰りのイヤホンの中からしか夏を感じられず
同じ日を繰り返す。
何かを拾うアンテナはまだぼちぼち機能しているものの、それを留めおき、味わう能力がめっきり落ちた。
そんなこんなで数ヶ月もなにも書けないで、頭の中から、何も漏れ出さないでいた。
島に帰ってきて、色々やりたいことがあったはずだった気がするんだけど、冷房と机と椅子に弱らされた身体はダンスだけで限界らしい。
バタンキューって感じで放課後から動けなくなってしまう。
先輩がこぞって帰ってきてたのにあえなかったし、海にもまだ入ってないし、変な時間におきてそのまま寝れないし。あ〜〜、うーむ、うぇ〜。
体育祭終わったら模試あるんだよなぁ。
やりたいこと全部思い出してやってる暇はあるのかな。でもノロノロしてたら海はクラゲに埋め尽くされてしまうな。
島に「らしい夏」を求めて帰ってきたけど、本当にほしかったのは合間合間に見つけて流れて行った夏を慈しむ余裕だったのかもしれないな。
受験に向き合わなきゃいけないのは分かってる。分かってるんだけどまだどっかで、青春ってやつへの未練がたらたらしてやんの。
かといっていざ「わー〜」ってなるとなり切れない自分もいるのが難題だなあ。
うまれつきの天邪鬼精神。生物学的にはそういう個体も必要な存在らしいんだけど。
近年、秋は10月くらいからになってる気がするのでまだ夏に余裕はあるはず。
暑くてジメジメしてて嫌いで嫌いで仕方ない季節だけど、1番幻想と信仰を抱えてる季節でもあるこいつに、なんとか折り合いつけていきたい。