続・その道の名は総督の名
(カバー写真:Pottinger Street 砵典乍街 1890年代, Wikipedia)
前回の記事では総督の名前の付いた道路をまとめましたが、その他にも臨時の総督や行政長官、大臣や次官クラスの役人、イギリス本国の政治家(多くは爵位持ち)、外交官、軍人、総督の奥さんなどネーミングはバラエティに富んでいます。
今回は、前回書ききれなかった道路名を臨時の総督と行政長官を中心にピックアップしてみます。人物名は極力歴史の古い順に書いてありますが、一部やむを得ず前後しているところもあります。
写真は断りのない限りすべてWikipediaからです。
・Alexander Robert JOHNSTON 莊士敦(ELLIOT、POTTINGERの副官)→ Johnston Road 莊士敦道 灣仔にあります。
・Sir George Charles D'AGUILAR 德己立(初代、第2代総督時代の副総督)
→ D'Aguilar Street 德己立街 中環にあります。
→ Cape D'Aguilar Road 鶴咀道 鶴咀にあります。
https://static.wikia.nocookie.net/hongkongbus/images/7/7b/IMG_20210622_Cape_D%27_Aguilar.jpg/revision/latest?cb=20210622125916&path-prefix=zh
(出典:香港巴士大典)
・William STAVELEY 士他花利(第2代から第3代総督までのつなぎ、第3代総督時代の副総督)
→ Staveley Street 士他花利街 中環にあります。
・William Hull CAINE 堅(第4代から第5代総督までのつなぎ、行政長官)
→ Caine Road 堅道 中環にあります。
・William Thomas MERCER 孖沙(第5代から第6代総督までのつなぎ、行政長官)
→ Mercer Street 孖沙街 上環にあります。
・Henry Wase WHITFIELD 威非路(第6代から第7代総督までのつなぎ)
→ Whitfield Road 威非路道 天后にあります。
・John Gardiner AUSTIN 柯士甸(第7代から第8代総督までのつなぎ、行政長官)
→ Austin Road 柯士甸道 佐敦にあります。
→ Austin Road West 柯士甸道西 佐敦にあります。
→ Austin Avenue 柯士甸路 佐敦にあります。
(写真なし)
→ Mount Austin Road 柯士甸山道 太平山にあります。
・Malcolm Struan TONNOCHY 杜老誌(第8代から第9代総督までのつなぎ、行政長官)
→ Tonnochy Road 杜老誌道 灣仔にあります。
・Sir William Henry MARSH 馬師又は馬殊(第8代から第9代総督までのつなぎ及び第9代から第10代総督までのつなぎ、行政長官)
→ Marsh Road馬師道 灣仔にあります。
→ Marsh Street 孖庶街 紅磡にあります。
https://static.wikia.nocookie.net/hongkongbus/images/8/84/Marsh_Street1_20180525.jpg/revision/latest?cb=20180525165935&path-prefix=zh
(出典:香港巴士大典)
・Sir William Gordon CAMERON 金馬倫(第9代から第10代総督までのつなぎ)
→ Cameron Road 金馬倫道 尖沙咀にあります。
→ Cameron Lane 金馬倫里 尖沙咀にあります。
(出典:FOURSQUARE CITY GUIDE)
→ Mount Cameron Road 金馬麟山道 太平山にあります。
・Frederick STEWART 史釗域(行政長官)
→ Stewart Road 史釗域道 灣仔にあります。
・Sir Francis FLEMING 菲林明(行政長官)
→ Fleming Road 菲林明道 灣仔にあります。
・Sir George Thomas Michael O'BRIEN 柯布連(行政長官)
→ O'Brien Road 柯布連道 灣仔にあります。
・Sir James Haldane Stewart LOCKHART 駱克(行政長官)
→ Lockhart Road 駱克道 灣仔から銅鑼灣にかけてあります。
・Sir George Digby BARKER 白加(第10代から第11代総督までのつなぎ)
→ Barker Road 白加道 太平山にあります。
・Alexander Macdonald THOMSON 譚臣(行政長官)
→Thomson Road 譚臣道 灣仔にあります。
・Sir Wilsone BLACK 布力(第11代から第12代総督までのつなぎ)
→Black's Link 布力徑 灣仔から香港仔にかけてあります。
・Sir William Julius GASCOIGNE 加士居(第12代総督時代の副総督)
→ Gascoigne Road 加士居道 油麻地にあります。
・Arthur Winbolt BREWIN 蒲魯賢(臨時行政長官)
→ Brewin Path 蒲魯賢徑 太平山にあります。
(写真なし)
・Sir Claud SEVERN 施勳(第14代から第15代総督までのつなぎ、15代から第16代総督までのつなぎ及び第16代から第17代総督までのつなぎ、行政長官)
→ Severn Road 施勳道 太平山にあります。
(写真なし)
・Sir Cecil Halliday Jepson HARCOURT 楊慕琦(戦時中第21代総督が日本軍によって解任された後、戦後総督に復帰するまでのつなぎ。軍政府総督。)
→ Harcourt Road 夏慤道 中環にあります。
番外:
・Lady Clementi's Ride 金夫人馳馬徑
香港仔から渣甸山にかけてあります。「金夫人」とは第17代総督CLEMENTIの奥さんです。
当時の私が地図でこの道を見つけた時は、なんて面白い名前の道だろうと笑ってしまいました。金夫人がどこの誰だかなんて小学生には大して興味がないことでしたが、そのネーミングがあまりにもリアルで、細い山道を馬に乗った女性がパカパカと上り下りするのが眼に浮かぶようでした。
Sir Cecil's Ride 金督馳馬徑という道路名もあるくらいですから、夫婦で乗馬が好きだったのでしょうか?
こうして書き並べてみたのですが、総督が正式に着任するまでの間の代行総督が意外に多いことに驚かされます。しかも長い人は一年以上や複数回勤めた人もいますし、任命者であるイギリス本国は何やってたんでしょうかね?それに長く勤めたから名前が残ったのかというと、そうでもないようです。
爵位持ちの政治家に由来する道路名の場合、2/3ほどは総督、行政長官クラスなのですが、香港とは無関係なイギリス本国の政治家も20人ほどいます。選ぶ基準がよくわかりません。
爵位のない大臣や次官クラスの役人の場合は、香港と無関係な人はいないようです。
また、有名な軍人の名前をつけた道路が30本以上あるのですが、香港と無関係な人が半分近くいます。例えばNelson Street 奶路臣街の由来はイギリス軍の英雄ネルソン提督からですが、香港とは何の縁もないのです。そもそも時代がまるで違います。
ちなみに日本人にもっとも縁があるのは、Parkes Street 白加士街のネーミング元となった第2代駐日英国大使ハリー・パークスですね。パークスは広東でも外交官生活を送っています。
その他にも有名な商人や銀行家など民間から由来する名前もあり、ジャーディンなどはその典型です。
それらのネーミングを踏まえると、第11代総督Sir William ROBINSON 羅便臣の名前が残されていないというのは、かなり異例な事のように感じられます。もしかして、何か余程のことをやらかしたんでしょうか?なんだか不憫になってしまいます。
さて、実は前回の記事をアップした直後、大事なコトを忘れているのに気づきました。
Queen’s Road皇后大道は?
King’s Road英皇道は?
Prince Edward Road 太子道は?
…。
むしろこちらを先に書くべきだったのでは…?
noteをご愛読のイギリス王室関係者の皆様、本当にごめんなさい!
というわけで次回は王室の名前のついた道路をまとめます。