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香港人はブランデーがお好き

飲食店などでの酒類の提供をめぐり、いろいろ物議を醸している昨今です。私はあまり外で飲み歩く習慣がないのでそれほど困ってはいませんが、それでもたまには居酒屋でもバーでも行きたいと思うこともあります。
もう2年も外飲みしていないのですが、いつになったら落ち着いて飲めるようになるのでしょうか?

はずかしながら、私はそれなりの酒飲みなんです。あーはずかしい。
この記事だって、深夜飲みながら編集していますし。

私が小学校に上がるか上がらないかくらいの時、たまたま家でイカの塩辛を漬けていたんです。その塩辛をまだ漬かりきらないうちにつまみ食いをしたら、今は亡き祖母に叱られました。
未だに覚えていますが、

「この子は酒飲みになるね。」

と、あきれた顔で言われました。

大当たりです!

おばあちゃんありがとう。
立派な(?)酒飲みになりました。

……まぁそんなに強くはないのですが、今でも晩酌は欠かしません。

さて、私の父も酒を飲みますので、家には常に何がしかの酒がありました。
もちろん香港で暮らしていたころも例外ではありません。

当時借りていた部屋の造りは変わっていて、台所の入り口がバーのカウンターのようになっていて、そこで接客出来るようになっていました。
どうやら部屋のオーナーが改造したらしいのです。
壁には作り付けの棚が備えられ、洋酒が何本か並んでいます。

オーナーは同じマンションの一つ上の階に住んでいた福建人でしたが、そちらの部屋は改造されていない普通の造りで、リビングからそのまま台所に入れました。

そんなわけで私は小学生の分際でバーテンダー気分でしたが、さすがに酒を飲むわけにはいきませんでした。

父はよくブランデーを飲んでいました。
当時はイギリス領の香港ですから、ウィスキーを飲む香港人が圧倒的なのかと思いきや、意外にもブランデーの愛飲者が多いのです。
調味料の「X.O.醤」を使ったことのある方も多いと思いますが、ネーミングの「X.O.」からしてブランデーの等級を表すものですから、いかに香港人がブランデーに親しんでいるかがわかります。

日本ではブランデーをたしなむというと、暖炉の前でバスローブをはおり、シガーをくわえ、片手はブランデーグラスを回しつつ、もう一方の手で膝の上のペルシャ猫を撫でている中高年男性のイメージでしょうか?
香港でそんな想像をする人は昔からいないでしょうねぇ。

香港ではテレビでもブランデーのCMが流れていました。日本でブランデーのテレビCMって見たことあります?私は見た覚えがありません(最近はテレビそのものを見ないのですが)。

こんなのとか。↓

こんなのとか。↓

こんなのとか。↓

どれも香港らしさ満載ですね。

香港人は小麦よりブドウのほうが体に良いと思っているので、ウィスキーよりブランデーを好むと聞いたことがありますが、実際どうなんでしょう?事実かどうかはわかりません。

そしてその飲み方なんですが、ブランデーでは邪道とされがちな水割りにする人が結構いたのです。さすがにCMでは水割りにはしていませんが…。
暑いからでしょうか?

私が酒を飲めるようになったころはちょうどバブル期です。学生でもアルバイト代を貯めて海外旅行をする人がとても増えた時期でしたが、私も例外ではなく、気軽に香港へ行ったものでした。
香港へ行くのはいつも夏休み期間です。特に学生時代は夏休みが取り放題ですから、ゲストハウスに一週間くらい滞在していました。

いうまでもなく夏の香港は酷暑ですから、ついつい昼間からビールを飲んでしまいます。なにしろコンビニでビールが買えるんですからやめられません。当時の日本では酒販はガチガチの規制業種で、コンビニでは買えませんでした。

香港では酒販に規制が無いと見えて、昔からスーパーでもコンビニでも普通に売っています。惠康や百佳などにワインやら中国酒やらが無造作に並べてあるのを見たときは、当時の日本のスーパーでは見かけない光景なので素直にすごい!と思いました。
さらにレジの横のコーナーには高そうなウィスキーとブランデーが並んでいます。

そこで、かつて父が愛飲していたブランデー「F.O.V.長頸」を見つけました。F.O.V.というのはFinest Old Vintageの略で、コニャックのV.S.O.P.です。
日本では学生がブランデーを飲む機会はほとんど無く、ちょっと敷居の高い酒でもありましたが、懐かしさのあまり購入してしまいました。

これです↓

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帰国後、早速開けて飲んでみました。

おいしい。
そうだ、思い出した。この香り。
父はこんなおいしい酒を飲んでいたのか。

それ以来、私はすっかりブランデーにハマりました。
あまり安くはありませんので毎日飲むわけにはいかないのですが、酒屋で様々なブランデーを買ってくるようになりました。

でもやっぱりF.O.V.が自分の舌には合うんです。日本には売っていないので、香港へ行くたびに免税範囲の3本ずつ買って帰るようになりました。

F.O.V.はテレビCMももちろんあります。
ちょっとYou tubeを検索しただけで10数本のCMがあっという間に見つかりましたが、一番香港らしいのはコレですね。↓

これもおもしろい。和食にブランデー?↓

なにしろどこのスーパーに行っても必ず置いてある人気商品で、80年代後半あたりの値段はHK$300.-前後だったと思います。

あとで知ったのですが、80年代の一時期に大丸百貨店が輸入しており、そのお値段は¥15,000.-。当時のレートがHK$1.-≒¥20~25.-前後だったことを考えれば、随分高価です。レミー、カミュなどポピュラーなV.S.O.P.よりかなり強気の価格設定ですね。

なぜ大丸がF.O.V.を輸入していたかは定かではありませんが、香港に大丸があったことと無関係ではないのかな?と想像しています。
香港ではどこのスーパーでも買えるほどでしたから、もしかしたら香港駐在を終えた大丸の社員が、日本でも売れると踏んだんでしょうか?あくまでも私の想像でしかありませんが。

さて、2014年の3月に香港へ行った時の話です。
当然F.O.V.を買って帰るつもりでいたのですが、某スーパーへ行くとあれ?置いてない…。在庫切れ?別のスーパーに行っても見当たらない…。スーパーには置かなくなったのかと思ってあわてて酒屋を探し、行ってみてもやっぱりない…。レジのおばちゃんに聞くと、置いてないとのつれない返事でした。
どうやら輸入代理店が取り扱いを止めてしまったらしいんです。

えーーーーー?

あんなに人気商品だったのに、あっさり入手不可能になってしまった。
理不尽な。

少なくとも40年以上の歴史を持つ商品だったのに、残念至極。
時代の流れってヤツですかね。

帰国後ネットでいろいろ調べたのですが、F.O.V.はHINE社がアジア向けに普及品として作った商品のため、フランス本国でも入手は困難とわかりました。2014年の時点で香港市場を放棄してしまったくらいですから、もう今では生産自体が終了した可能性が高いです。HINEのブランデー自体は現在でも香港で入手可能なのですが。

HINEのホームページはこちら。
http://www.hinecognac.com/

でもやっぱりF.O.V.が飲みたいのです!

在庫を少しずつ大事に飲んでいましたが、さすがにあと1回分かな。

ずいぶん愉しませて頂きました。

長い間ありがとう。

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