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人類は麺類

美食の町・香港で暮らしていても、毎日中華ばかりでは飽きてくることもあります。母が作る料理は中華系が多く、おかずに菜心のオイスターソース炒めなどをしょっちゅう食べていたのですが、所用で出かける時には外食することもあります。

そんな時に和食を食べることがあるのですが、これが高いんですね。
特に昔は和食レストランが少なくて、有名どころでは大丸のテナントだった「大和」などがありましたが、特においしいわけではなかったです。

おいしかったのは「金田中」ですが、ここは日本の本店が料亭なのでかなり高く、2回くらいしか行ったことがありません。松茸の土瓶蒸しもう一度飲みたかった。

そのほかにも日本人倶楽部にレストランがあり、カレーライスとか鰻丼、カツ丼など丼ものとかチャーハン(中華じゃん…)とかがあったので、中環に行く用事があるときはここに寄ることが多かったです。

しかし、非常に残念なことに「ラーメン」がないのです。
小学生だったころの私、香港に住む前は「ラーメンはもともと中華料理であり、香港にも当然ラーメン屋がある」と思っていました。
ところが現実は違っていました。町中に「ラーメン屋」が一軒も見当たらないのです。
当たり前ですけど。

かろうじて覚えているのは先述の「大和」に「中華そば」があったくらいです。大体「ラーメン」と「中華そば」が同じものだという認識もなく。しかもそんなにおいしいわけでもなく。
粥麵店か茶餐店に行けばもちろん麺類はあるんですけどね。ただ日本のラーメンとは大分違いますし、町を一人で出歩いて店を探すのは治安上ちょっと恐いので、入ったことがありませんでした。

で、どうしてもラーメンが食べたいわけですよ。

幸いなことに、インスタントラーメンだけは日本製が入手出来たので結構食べました。

香港に於けるThe・ラーメン、出前一丁。実物の写真がないのでクリアファイルを。

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私が住んでいた当時、日清食品のラーメンは3種類あり、それぞれ別のテレビCMを流していました。

まず、今は生産していない「日清伊麵」というのがありましたが、これはチキンラーメンの香港版です。
テーブルの上にうやうやしく置いてあるフタ付きの丼。四方八方からいろいろな手が伸びて、一人が蓋を取った瞬間「嘩~!」となる実写CM。

そして定番「出前一丁」。

もう一つ、短命に終わった「麻油雞湯麵」というのもあったのですが、実食はしませんでしたのでどんなラーメンかは不明。
ただCMが印象的で、アラビアンナイト風の清仔が洞窟の扉の入り口で「芝麻開門!」「雞湯麵開門!」と叫ぶと扉が開き、中には「麻油雞湯麵」が山積みになっていて「嘩~!好多呀!」というお話。

以下は某ブログからのコピペ。
http://blog.xuite.net/smilethanks/hkblog/158662353-%E8%8A%9D%E9%BA%BB%E9%96%8B%E9%96%80,+%E9%9B%9E%E6%B9%AF%E9%BA%B5%E9%96%8B%E9%96%80

父親和二姐係一個回家入門前,人未到聲先到的人,小時候他們永遠不會按門鐘,而是離家門老遠便聲叫嚷:「芝麻開門,雞湯麵開門!」
小時候的我,很喜歡他們的回家聲音,因為他們總會有些東西帶回家。
到了成年,便很怕他們回家仍叫嚷:「芝麻開門,雞湯麵開門!」,因為搬了新式屋村,鄰舍關係及習慣已不如往昔般。
不過,父親在廿多年前已經封口,他們現在可能在天家會再一齊大叫:「芝麻開門,雞湯麵開門!」

おお!私の他にも覚えている人がいるではないか!

「麻油雞湯麵」はセリフのみですが、「日清伊麵」と「出前一丁」はCMソングが同じでした。これの原曲は「青春舞曲」というウイグル族の民族音楽なのですが、よくお遊戯ダンスに使う曲として香港の小学生なら誰でも知っています。これに日清食品が歌詞を付けてCMソングに仕立てたんですね。

当時の写真はまず検索に引っかからないのですが、唯一見つけたのがこの写真。「日清伊麵」「麻油雞湯麵」「出前一丁」も含めた3種類そろい踏み!これは貴重!
どうやら「麻油雞湯麵」の輸入代理店は別の会社らしいです。なんともややこしい。

「出前一丁」1968年在日本推出,1969年殺入香港市場,40年來,仍受香港歡迎。初時的「出前一丁」只得麻油麵和雞湯麵,且全部都是日本生產運港,所以價錢非常昂貴,但好多人仍指定只吃出前一丁的即食麵。

Posted by W Foundation on Wednesday, March 20, 2013

(出典:Old Hong Kong at W Foundation, Facebook)

出前一丁にはバッタもんもありますね。
これは1980年代からある由緒正しき(?)バッタもん、「七寶一丁」。

スープの味がかなり濃く、麺の食感はあまりよくないようです。

ところで日本のラーメンと言えば日清以外ほとんど見かけなかったのですが、なんと「チャルメラ」があったんですね。残念ながら実物は見た覚えがありません。

1968年廣告。現今,很多香港人不可少的食糧是即食麵,甚至有些人可以一日三餐即食麵。自從1958年日清公司推出即食麵之後,不止日本很多食品公司相繼推出,而且將這種快速煮食文化帶到香港。獨立包裝内附調味料的日式湯麵對於當時的人是新鮮事物。

Posted by 吳昊(老花鏡) on Sunday, September 6, 2015


(出典:吳昊(老花鏡), Facebook)

さらにはこんなのも。「蟹王麵」。
こちらも当時は見たことがなかったラーメンです。わざわざパッケージに「日本製」と書いてありますが、兵庫県のメーカーで東京あたりでは知名度が低いです。
1970年代で国内販売を中止しているようですが、なぜか香港とマカオではまだ売れています。香港島側のスーパーでは見かけませんが、新界の一部のスーパーで買えるそうです。

香港で人気の 1968年発売のロングセラー「蟹王麺」 ラー油が決め手の あっさりした味わいです。 香港に行かれた際に 是非見つけてみてくださいm(_ _)m

Posted by イトメン株式会社 on Tuesday, September 19, 2017

(出典:イトメン株式会社, Facebook)

そのほかにも、香港の貿易業者がスポットで輸入したラーメンもありました。種類はそんなに多くはなかったかな。「麦みそラーメン」というのがなかなかおいしかった!

さて、地元香港製のラーメンは結局一度も食べずじまいで、今から思えばなんとももったいない事でした。
特に公仔麵を食べておかなかったのは失敗でした。

袋にちゃんと公仔(人形)がいる!

消えたラーメンの一つにBANGBANG即食麵があり、伊麵と上湯麵の2種類でした。こんなのです。

原來 BANG!BANG!都有生產即食麵……

Posted by 小寶店(懷舊) on Tuesday, May 19, 2015

(出典:小寶店(懷舊), Facebook)

テレビCMは実写で、ピクニックに出かけた人たちがおいしそうに食べていました。しかし野外で食べるのに、カップ麵ではなくわざわざ袋麵を鍋で煮て食べるってどうなんでしょう?とはいえ食べたかったラーメンの一つです。
当時のCMソングがここで聴けます。

【我們的60年‧回憶眾籌💬】精選分享(廿八) 😋正所謂「民以食為天」,好多嘢食都曾經喺 #商業電台 賣廣告,聽聲都想食呀🍜🍳! 🎉食物唔只用嚟填肚,仲有著數!由食物品牌搞嘅...

Posted by my903.com 商業電台 on Wednesday, May 29, 2019

(出典:my903.com 商業電台, Facebook)

歌詞が載っている写真を見つけたので転載します。ただ字が小さくてよく見えないので、これで合っているかどうか保証はできません。

增加體力爲上算、
返工旅行帶咗先!
BANGBANG即食麵、
X 曬米共X!← このXの所が読めない(泣)
即煮即食人人愛、
不必心急咪打尖!
BANGBANG即食麵、
食極食唔厭!

当時の宣伝ポスター。写っている男性は、タレントで子供番組の司会者、黄汝燊(通称辛尼哥哥)。

【1978 跳飛機 食靚麵】 BANG BANG即食麵 食極食唔厭 #跳飛機 #Sunny哥哥 #BangBang #繽繽

Posted by 威哥會館 on Friday, September 18, 2020

(出典:威哥會館, Facebook)

BANGBANGは不思議な会社で、映画の配給、レコードの出版元、ファッションの小売をやっていたのですが、78年頃なぜか突然ラーメンを売り出しました。理由はさっぱりわかりません。古い話なので香港の人でもあまり詳しく知る人はいなさそうですが。

香港製ではなく大陸製と思われるラーメンもあり、やはりテレビCMが印象的だったのが「Super Saimin」。漢字がちょっと不明なのですが、ナレーションで「蝦肉細麵」と言っていたような気がしますが自信はありません。
鍋に海老やら蟹やら野菜やらが麵と一緒に飛び込んで、なぜか鍋が急速回転してぴたっと止まると湯気の立った美味しそうなSuper Saiminが出来上がるというアニメですが、日本でも釜飯の素のテレビCMで同じような場面を見た気がするのはデジャヴー?

当時は食べなかったのですが、高校時代に修学旅行先だった上海の友誼商店で見つけ、とても懐かしくて買って帰りました。
味はさっぱり系の塩味だったかな?スープは予想以上でしたが麵の戻りが悪く、変に芯が残った感じがしてまずかったです。
はっきり言って出前一丁の敵ではありませんでした。

香港製以外のラーメンでは、MAGGIのラーメンを食べたことがあります。そう、あのブイヨンのMAGGIです。
MAGGIのラーメンは当然黄色いパッケージなのですが、袋に漢字が書いていなかった覚えがあるんです。つまり、香港製ではなさそうなんですね。
肝心の味付けは印象が薄いのですが、そこそこ美味しかった覚えだけはあります。でも結局そのあと買うことはなく、出前一丁など日本のラーメンに戻りました。

帰国の少し前には「出前一丁」が3種類に増え、中でもカレー味がお気に入りとなったのでした。
テレビCMはなんだか無難な感じになっていました。

私は1980年に帰国してしまいましたので、香港のラーメン事情がそれからどうなったのかについては残念ながら詳しくないです。
帰国後ほどなくして、日本では高級ラーメンブームが起きています。発売順に明星食品「中華三昧」、東洋水産「華味餐庁」、ハウス食品「楊夫人(マダムヤン)」、日清食品「麵皇」、やや遅れてサンヨー食品「桃李居」の5種類でした。結局今でも残っているのは最初に出した中華三昧だけですね。
ちなみに「人類は麺類」は麵皇のキャッチフレーズです。知っている人はアラフィフ以上でしょう。

今の香港は店で食べるにしても日本のラーメンが大流行ですから、まさに隔世の感があります。
日本式ラーメンチェーンの草分けは味千拉麵と思われますが、香港に行くと食べるかどうかいつも迷うんですよ。
東京には店がないので食べられないし、かといって日本で食べるラーメンと味は大差なさそうだし…。

また次回も迷うのかな。


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