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腸閉塞

母は自宅マンションからタクシーを呼び、自ら入院を懇願し、入院した。きっとフラフラだったに違いない。父は海外赴任中で、自宅には1人。助けを求められる人が近くにいなかった。

私、入院しました。部屋番号は●●です。と、連絡をもらった後、旦那と私は仕事後に車で病院へ向かった。

腸閉塞と診断された。

たしか、病室で横たわる母と私と2人で医師から説明を受けた。

腸閉塞…なんか聞き慣れた病名で、命に別状はないんじゃないかと楽観視していた。治ってまた元気になるって。

2人で、腸閉塞かぁってなって。その後、母は今日一日いろいろな検査をしたらしくぐったりと寝ていた。

医師に、ご家族の方こちらへ、と呼び出されて

ドキっとした。

個室みたいなところに案内されて、今回の腸閉塞の説明を受ける。腸閉塞の原因は結論から言うと…

癌の可能性が高い。

医師は断言を避けるので、どれもこれも遠回しの言い方なのだが、素人の私でも、嫌な予感というか、良くないんだろうな…というニュアンスは伝わってた。要は、大腸癌の疑いがかなり高い、と言われたようなものだった。

手術して、摘出したものを病理検査に出さないとハッキリした事は分からない、と言われて、モヤモヤとしながら、心臓は大きく波打ちながら、個室を出た。手術は早急に手配された。普通なら数日は待たされるはずの大きな病院で。

母になんて言おう…。癌の可能性あるって言われた。なんて、言えないよ。頭の中でぐるぐる、思考がパニック状態。母の病室へ戻る。

今はまだ伝えない方がいいよな、疲れているし、癌なんて聞いたらゆっくり眠れないだろうし、と自分なりに理由を考えて。また明日お見舞いにくるからね、と言って帰ることにした。

旦那の待つ車に戻る。

旦那にすべてを話すと、張っていた糸が切れるように脱力感とともに涙が溢れた。

お母さん、癌かもしれない…。

死んじゃうかもしれない…!

旦那は冷静でいてくれて、まずは父に連絡しなさい、と。その次に私から見た祖母(母の母)へも連絡しなさい、と。もうこの辺の記憶は曖昧で、どう伝えたかも覚えていない。

とにかく、自分の母親が死ぬかもなんて考えた事がないし、癌についての知識もないし、頭の中がどうしようどうしようどうしようでいっぱいだった。不安でたまらなかった。

この日から癌の検索魔になったし、お見舞いやら、結婚式の細々とした手配やら、仕事やら、実家の猫の世話やらで、自分も肺炎になったりと体を壊しがちになった。来月には私たちの結婚式が控えている。この状況からしたら結婚式なんて二の次だ。なんでこのタイミングなんだろう。神様って本当にいるのかな…

それにしても、患者が自ら入院させて欲しいと言うまで、病院は何もしてくれなかった。経過観察ばかりで。癌ってそんなに悪くなるまで見落とされるものなの?

後からどんどん冷静になり、医療機関に対しても怒りが込み上げた。誰かのせいにしたかった。



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