042:向日葵

目が覚めるとカンカン照りの高い空の下、ひまわりに見下ろされていた。

腕に力を入れて起き上がると二の腕にも手のひらにも乾いた土がパラパラとつく。乾いた夏の土の匂いがした。

ここはどこなんだろう。

上半身だけ起こして周りを見ても、ひまわり向日葵ヒマワリの力強い緑の茎と黄色い賑やかな花が溢れるばかりで、まったく遠くまで見渡すことができない。

何だか脱力してしまっている足を叱咤して重い体を立ち上げる。体重を支えようとしてふらついた。

ピーカン晴れだ。
空は澄み切って青く、雲ひとつ無い。
さんさんと日光が照りつけていて、光がまるでシャワーのようだ。それなのにジリジリと灼かれるような不快な暑さは感じられなく、いっそ肌に抜ける風は涼しいくらいだった。

ヒマワリの花がきらきらと陽光にきらめいている。
立って見渡しても、一面の向日葵畑のようで、遠くに山が見える以外何も他の情報を得ることは出来なかった。呆然として息をつく。

ただ、不思議と何の不安も湧いてこなく、ぼんやりとそこに立ち尽くしていた。穏やかに風が黄色の花を、大きな緑の葉を、さらさらと揺らしている。さざめく音が耳にくすぐったく響いてくる。

ふいにその風が、夏の終わりに嗅いだ景色を思い出させた。

「おぅい、こっちだぁ。」

風下からしゃがれた声がして、見ればじいちゃんが手を上げて笑っていた。
あの香りの向こうの写真よりずっと鮮やかに笑って、こっちに手を降っていた。
僕はそれに手を振り返して、じいちゃんのところへと走った。


042:向日葵


お題はこちらから: http://aria.saiin.net/~tenkaisei/questions/t100_01.html

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