俳優って「台詞」を覚えるしごとじゃねえから~演劇人あるある~

さて、たまには演劇人っぽい事言おうかなぁ、と思って書き始めます。
一般の皆様にとっては、演劇人って異世界の生き物だと思いますし、
「演劇やってます」って人が目の前に現れたら、「なんだかすごい」、
と思うか、「あ、お金にならないことに人生費やしている人だ」と思うかのどちらかだと思います。後者が間違いでないのが悲しいところですよね…。
とかく、そんな演劇人に出会ったときに一般人(演劇人に対しての表記だと思ってください。)の皆様がよく言う、そして演劇人が実はイラっと来る発言とその理由を書いていこうと思います。

今回は、「役者です」と名乗った人によく言っちゃう
「あんないっぱいの台詞よく覚えられますね。」です。

わかってるんです。まったく悪意がない、むしろ敬意を払って言っていただいているのもわかるんです。だから大抵の人は
「…(微苦笑)」みたいな反応返すでしょう。でも内心は違うんです。

何が違うか、と言えば。
こちら側の言葉でいえば、台詞は「覚える」ものではなく、「入れる」ものだ、という事なのです。
わかんないですよね。
もう少し角度を変えて言えば、役者の仕事は台詞を覚えることではなく、役を表現すること、なのです。
まだわかんないですよね。
さらにわかりやすくかみ砕くと、「台詞を覚える」は大前提だし、仕事の1から10のうちの0.5にも満たない作業なのだ、という事なのです。
その台詞の意味を捉え、お役の気持ちを捉え、何故言っているかを捉え、そのうえで台詞を吐きます。
俗にいう台本に書かれているのは台詞だけですが、その台詞のやり取りの間の表情、姿勢、目線、人の台詞に対するリアクション、それらすべてを一人の人間として破綻なく上演時間内に演じる事が、役者の表現という仕事なのです。

ので、「台詞覚えてすごいね」は、役者にとって「台詞覚えただけだったね」と同じ響きに感じてしまうんですね。

じゃあどういえば、というところで、一番演劇人がうれしいリアクションを紹介します。

その人のお芝居や映画を見に行くことです。
そして観客としてそのお芝居を楽しむこと。
見終わって楽しかったら、個人への評価は言わなくてもいいです。「楽しかった、教えてくれてありがとう。」
「また見に来るね。」
この言葉で、役者って生き物は「頑張ろう」と心底から思えるのです。

いち演劇人の身勝手な言葉ですが、よろしければご参考に。一人でも多くの演劇ファンが増えることを願いつつ。

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