自分の同人誌を国立国会図書館に納本する方法 (有償・無償、持ち込み・郵送 パターン別解説)
漫画の原稿を描くための資料探しのために国会図書館を利用した際、納本制度に興味が湧きました。この記事では実際に納本するときに知っておくとよさそうなことをまとめています。
納本とは
『単に図書館に本を送る』ことを『寄贈』、それのうち『自分が出版した本を責任ある公的機関に納入することを』ことを『納本』といいます。
納本制度にもとづけば、同人だろうが自費出版だろうが頒布を目的として相当部数作成された同人誌があればコピー本以外は全部納本しなければいけません。相当部数の基準については曖昧ですが、オンデマンド印刷の場合15部からが目安とされているので、15部以上を基準にして良いかと思います。
納本は法的義務のため無視すると罰金もあるそうです。
が、しかし、今まで一度もその罰則を適用されたことはないそう。
というわけで、現状は納本の義務は無視してもいい義務です。
特に同人誌に関しては納本したい人だけが納本すれば良いと思います。
では納本の何が嬉しいかというと、国立国会図書館という最強の書庫で末長く保存され、国会図書館利用者ならだれでも無償で読めるというところでしょう。
ここにロマンを感じたら納本してみてはいかがでしょうか!
同人誌を納本する際に気になりそうなこと
国会図書館の利用者なら、誰でも無料で読めるようになります。
国会図書館では貸出をやっていません。館内だけで読める状態になります。
国会図書館を利用できるのは18歳以上です。
国会図書館の利用者は成人に限られるので、どんな本を納本しても未成年の目に入ることはありません。どの書店よりもゾーニングされています。
安心してエログロ本を納本しましょう。
二次創作同人誌でも納本できます。
国立国会図書館サーチで検索すると、すでに納本(寄贈)されている本がちらほらあります。
コピー本は納本できません。
先の引用にある通り、ホチキス留めなど簡易綴じのものは対象外です。
遠い未来に、利用者がインターネットを通じて本文画像が閲覧できる『個人向けデジタル化資料送信サービス』に登録される可能性があります。
基本的には著作者の死後70年以上が経過し著作権が切れた出版物のうち入手困難なものが該当するため、納本したいのならばあんまり気にしなくていいところだと思います。
今のところは漫画は除外されているようです。
https://www.ndl.go.jp/jp/preservation/digitization/digitization_agreement03_202112.pdf
直接持ち込んで納本する方法
持ち物
納本したい本
1〜2冊納本することができます。
1冊目は東京館に、2冊目は関西館に置かれます。
【有償で納本する場合】印鑑
【有償で納本する場合】頒布時の値段がわかる資料
通販ページかお品書きをすぐに見せられるようにしておきましょう。
自分は確認の際に見せるだけでしたが、印刷しておくと安心かと。
場所
国会図書館です。通常の利用者出入り口ではなく、通用口(西口)から入ります。関係者用の入り口ですね。
西口の受付の人に「自費出版の本を納本しにきました。」と言えば、あとはいい感じに案内してくれます。
郵送・宅急便で納本する方法
公式ホームページだと書き方が散らばっているので、こっちでまとめようと思います。
送るもの
納本したい本
1〜2冊納本することができます。
1冊目は東京館に、2冊目は関西館に置かれます。
【ペンネームを使用している場合】ペンネームの人物は発行者本人である旨を書いたメモ
【受領書がほしい場合】受領書を希望する旨と送付先を記入したメモ
【有償で納本する場合】出版物納入書 1枚
【有償で納本する場合】頒布価格がわかる資料
例)お品書きや通販サイトのスクリーンショットをコピーしたもの
送り先
納本する数
納本は1冊でOKですが、2冊納本すると1冊は東京館にもう1冊は関西館に置かれます。
著者名にペンネームを使っている場合
ペンネームの人物は発行者本人である旨を書いたメモを添えてください。
公式pdfには記載がありませんが、直接納本しに行った時に質問をしてそのような回答をいただきました。
実際に私が送ったメモはこんな感じです。こんな感じでOKです。
受領書が欲しい場合
受領書を希望する旨と送付先を記入したメモを添えてください。
受領書があると「無事納入された」ということがわかるので、あったほうが嬉しいですね。
有償で納本する場合
有償で納本する場合、納入出版物代償金支払い制度を利用します。
こちらの制度を使うと、頒布価格の50%の金額が国庫金から支払われます。
100部以上刊行されている場合のみ有償で納本できるので、同人誌の場合はある程度規模があるサークル限定となりますね。
というわけで、まずは以下のPDFにある電話番号に電話をかけます。https://www.ndl.go.jp/jp/collect/deposit/pdf/deposit_request_pvt.pdf
価格、頒布部数、名前、ペンネーム、住所、連絡先を聞かれるので、答えられるように事前に準備しておくと良いです。
連絡後、国会図書館より出版物納入書と説明書の一式が送られてきます。
ノンカーボン紙で2枚1セットになっています。2枚目にも捺印するように説明がありますが、提出するのは1枚目だけです。
同人誌の場合、発行者にサークル名を、代表者名に本名を書きましょう。
また、小売価格については税抜の場合は明記しておくように説明がありますが、税抜きでも税込でも明記しておいてください。(未記入で提出した際、電話で確認されました)
実際に納本をしてみた
納本の手順はここまで。ここからは実体験の日記です。
今回は以下の4パターンで納本してみました。
直接持ち込んで納本(有償 / 受領書あり)
郵送納本(有償 / 受領書あり)
郵送納本(無償 / 受領書あり)
郵送納本(無償 / 受領書なし)
直接持ち込んで納本(有償 / 受領書あり)
1月16日
冒頭に書いた通り以前国会図書館を利用したことがあったので、その時の流れでまずは利用者口から入りました。が、しかし受付の方に納本したいと伝えると西口から入るよう案内されたので、一旦外に出て利用者口の反対側の西口に向かうことに。少し遠いので皆さんには直に西口に向かってほしいです。
一瞬柵を収納しているスペースに騙されそうになりましたが、建物に入って入館手続きを行ない、案内に従い納本受付カウンターまで移動しました。
納本カウンターで本を出して職員さんを呼びます。
有償か無償か聞かれたので有償と答えたところ、係の人が交代することに。(有償で納本する人、あんまりいないんだろうな……)
有償納本の場合は、出版物納入書を記入します。が、ここで印鑑が必要だったことが判明。やむなく後日郵送することに。
また、頒布時の価格がわかるものとして通販ページかお品書きの画像の提示を求められました。
通販は委託ということもあり価格を高め設定にしているのでイベント時のお品書きを使おうと考え、ツイッターにアップしているお品書きを提示しようと思ったのですが……
頒布時に使ってたアカウントが凍結してるんだよなぁ!
というわけでお品書きも一緒に後日郵送ということに。
優しく応対してくれたので、何一つ準備してないことに申し訳なくなりました。
1月17日
案内通りに出版物納入書を記入し郵送しました。今度こそ納本されろ!
1月19日
国会図書館より、メールで連絡が来ました。
税込か税抜きかの記入をしていなかったので確認したいとのことです。
ちゃんと税込・税抜きの記入をしておきましょう!
2月3日
エゴサしていたらこんなツイートが。
というわけで無事に私のエロ同人誌が国会図書館に登録されました!めでたしめでたし。
3月17日
少し時間が空きましたが、納入出版物代償金の振り込み完了通知が届きました。
郵送納本(有償 / 受領書あり)
2月8日
今回は郵送納本なので、【有償で納本する場合】にならってまずは電話をかけました。
出版物についての質問に答え、出版物納入書を送ってもらいます。
2月10日
国会図書館から封筒が届きました。中身は出版物納入書と説明書です。直接持ち込んだ時にいただいたものと同じですね。
2月17日
少し日が開きましたが、送付をします。
今回は以下のセットで送ります。
納本したい本2冊
ペンネームを使用している旨、受領書がほしい旨を書いたメモ
頒布時のお品書き
出版物納入書
送付にはレターパックライトを使用しました。
3月3日
ふと思い出したので国立国会図書館サーチで検索してみたところ。
ありました!しっかり登録されています。
3月5日
受領書が届きました。これにて納本完了です。
郵送納本(無償 / 受領書あり)
3月13日
以前持ち込んで納本した時に質問した通り、ペンネームを使用している旨を書いたマジモンのメモ書きを作成します。
そしてメモと本体をレターパックに入れてポストにシュート。
3月20日
受領書が届きました。これにて納本完了です。
今回はまだ国立国会図書館サーチには登録されていないみたいです。
3月31日
国立国会図書館サーチへの登録を確認しました!
郵送納本(無償 / 受領書なし)
3月20日
以前持ち込んで納本した時に質問した通り、ペンネームを使用している旨を書いたマジモンのメモ書きを作成します。
レターパックにメモと本体を入れて投函します。
3月31日
思い出したので国立国会図書館サーチで検索したところ、登録されていることを確認しました。
これにて既刊は全部納本完了です!
納本完了
これで在庫がなくなろうが私が死のうが国会図書館には保存されます。可能な限り未来永劫残されることが確定したエロ漫画、いい響きです。
そして閲覧禁止の禁書にならなければいつでも国会図書館で私の描いたエロ漫画を読めるということになります。禁書にならないことを祈るばかりです。
所感
有償での納本はぶっちゃけめんどくさい。
よほど高い本以外は手間に対してそんなにお金がもらえるわけじゃないので、無償で納本する方がおすすめです。
納本のやり方、もっとわかりやすくネット上に公開してほしいな……
本当に納品書などがなくてもいいのか調べたりしました。先人はほぼみんな送付状を書いてますが公式には送付状をつけろというような記載がなく、だいぶ惑わされました。
おまけ
手元に1冊しか残ってない本も納本したのですが、やっぱり自分の手元にも残しておきたかったので中古屋で自分の本を買いました。
中古本ということで、男性向けエロ漫画の竿役のヌードイラスト集という誰も得しない袋とじが開けられているかどうかが非常に気になりましたが、届いたものは開けられていませんでした。残念!