新生・帝京の原動力は1年生エース―帝京高校試合ルポ―
【2021年秋季東京大会】
2回戦 帝京6-0駒場学園 於江戸川区球場
スコアボードには、もう0が8つ刻まれている。最後のバッターのバットの空を切らせ、実に“らしい”締め方で、帝京高校・高橋蒼人は9つ目の0をスコアボードにつけた。
東の横綱とまで称される帝京は、秋の時点でチームとしての完成度が高い。
新チーム同士の戦いとなる秋季大会は、身体の線の細さ、シートノックや細かいプレーでのミスなど、まだチームが不完全な状態であることが多い。
その中にあって、既に高校生離れした肉体をつくり上げ、大したミスもないどころか試合中の進塁打や選手間の情報交換など随所でチーム力の高さを見せつける帝京は、見るだけで他のチームと違うということが伝わって来る。
前田三夫前監督が一線を退いても、良い意味で今まで通りの帝京のようだ。
その中心にいたのは、1年生エースの高橋だった。
↑帝京・高橋蒼人(投手)
駒場学園との1戦は、日が高くなりようやく寒さが和らいだ頃に始まった。
初球から積極的にスイングしてくる駒場学園打線を相手に、高橋は丁寧に低めをつき続けた。
初回は1安打を許すも、2奪三振を奪って2塁は踏ませず。その裏にすぐさま援護点をもらうと、2回は10球足らずで1三振を含む三者凡退と調子は万全だった。
先頭にヒットを許した3回も、正面に転がって来たバントを自ら処理してゲッツーを完成させ、駒場学園につけ入る隙を与えない。
圧巻だったのは4回以降だった。1本のヒットも許さず、7回まで毎回の4奪三振というノーヒットピッチングを披露する。
攻撃の方では3点リードの7回裏、高橋自身のツーベースも含む長短打を集中させ、一気に6-0とリードを広げた。なおも2死満塁でコールド成立かと思いきや、駒場学園にファインプレーが出て試合は8回に突入した。
コールドを目前にして気持ちが切れたか、高橋は8回表にこの試合2つ目となる四球を先頭に許してしまう。
が、次打者をサードゴロ、ゲッツーに打ち取ったことで再び気持ちを切り替え、そのまま9回までもうランナーは許さなかった。
最後はこの試合8つ目の三振を奪い、ゲームセット。終わってみれば9回を2安打2四球無失点と、2塁も踏ませず、外野までまともに打たれることもほぼないという快投でベスト16入りをもたらした。
駒場学園の積極性を逆手に取り、早い段階で有利なカウントをつくり、低めをつくコントロールは試合終盤になっても衰えを見せない。高橋の快投はそんなコントロールに裏打ちされたものだった。
東の横綱・帝京をつくり上げてきた前田三夫前監督が一線を退き、金田優哉監督率いる新生・帝京が真価を問われるのはこれからだ。
1年生エース・高橋の躍動は、これから始まるであろう進撃の大きな原動力となるだろう。
※おまけ
高橋とともに目を引いたのは、4番ショートの渡辺礼。この日は先制タイムリーツーベースを含む3安打2打点と活躍し、レフトフライにはなったがあと少しでホームランという大飛球も披露。なぜ背番号が20なのか気になるところだが、高橋ともども帝京の柱になるかもしれない。