凛世GRADの絵を描く -コミュのワンシーンを絵にするまでの思考の過程-
初めまして、五勺升(@5syakumas)と申します。
シャニマスの感想をつぶやいたり、ごくまれに趣味で絵を描いたりしています。
noteは初めて書きます。なるべく事前に調べてはいるのですが、ルールや作法的に良くない部分があったりしたら教えてもらえると嬉しいです。
拙い部分もあると思いますがよろしくお願いします。
本記事では自分が凛世のイラストを描くにあたって考えていたことや、何故そういった描写をすることにしたのかを、コミュを読み解きながら説明しようと思います。
絵の製作過程の解説であると同時に、凛世コミュの解説となります。
描いた絵
絵とnoteを合わせて一つの作品くらいの気持ちで描きました。
お絵描き歴は浅いのでお手柔らかにお願いします。
シーンの概要、および執筆理由
シーン概要
凛世GRADの「いたかった」というコミュ内において、凛世が「──────いたい…………っ」と言っているシーンです。
絵を描きたいと思った理由
このシーンには今までの凛世コミュの中で扱われてきた数多のモチーフが高密度で詰まっており、絵として形にする面白味があると思いました。
シャニマスはあくまで文字がメインの作品ではあるのですが、非常に情景描写が丁寧であり、自らの頭の中で想像することで文字で語られている以上に読み取れる意図も多くあると思っています。
それらを何とか表現し絵を見た人に伝えたいと思い、描くことにしました。
一言で言うと、「このシーンめちゃくちゃ考えられてる!!!!」ということを絵によって伝えたかったです。
noteを書くことにした理由
元々noteはなしで絵によって描写を伝えられれば良いと思っていたのですが、この絵を描くにあたってコミュを整理している内に、過程で行った諸々の思索を個別の記事にしても面白いかもしれないと思いました。
また、自分の実力の問題もあるのですが、絵だけで全てを伝えきるのは不可能だろうなと思いました。
noteも含めて一つの作品にすることでより多くの人に伝わり、楽しんでもらえるのではないかと思いこの形式をとることにしました。
記事の方針
凛世GRADを読んだことがある人が一つの解説記事として楽しめる
凛世GRADを読んだことがない人・最近シャニマスに触れた人が、イラストを通して凛世コミュの魅了やシャニマスの魅力に触れる
コミュを絵として表現する、という一つの楽しみ方を知る
という三点を目標にしています。
なので、凛世に詳しくない・凛世GRADを読んだことがない方も気にせず読んでみていただければと思います(楽しめなかったらごめんなさい)
スクショを用いて色々なコミュにも言及していますが、あくまで「ここで書かれているよ」という論拠を示しているだけなので、そのコミュについて深く知っている必要はありません。適宜それがどういった場面なのか軽く説明しています。
当然ながら凛世GRAD自体のネタバレ・その他凛世コミュのネタバレは含まれるのでご了承ください。
記事内で触れるコミュはGRADまでに実装された凛世のコミュほぼ全てです。逆にGRAD以降のコミュへの言及は意識的に避けています。
断定口調で書いてある部分もあるのですが、基本的に全ての主張に「~と自分は思っています」が付いていると思って読んでください。
コミュの読み方は人それぞれですし、そもそも凛世GRADは難しいので自分もそこまで自信ありません。
他noteからの引用がないのは本当に引用していないからです。同じ結論になっている方は握手しましょう。
本記事の構成
各種モチーフについて、凛世コミュ全体においてどういった意味があるのかを考察し、その上で絵に反映させるにはどう描けばいいのかを考えていきます。
コミュ内容の説明タイミング
コミュの内容は必要になったタイミングで適宜触れます。
GRADについては途中であらすじを紹介します。
最初にあらすじを置こうか悩んだのですが、本題に入るまでがどんどん長くなってしまうのでやめました。
途中まではGRADを知らなくてもある程度わかる内容なので、若干もやもやする方もいらっしゃるかもしれませんが、気にせず読んでいただければと思います。
記事内で使用する用語一覧
シャニマス初心者用です。すでに何度か出ている単語もありますが本題に入る前に説明します。
雰囲気で読んでくださっても大丈夫です。
P:プロデューサーの略称。文字数節約のためこう表記します。
Pカード:プロデュースカード。主にアイドル個人の物語が描かれます。
Sカード:サポートカード。主にユニットの物語が描かれます。
共通コミュ:WING、感謝祭、GRADといったカードとは別に実装される物語です。ゲーム部分を担います。主にアイドルとしての成長が描かれます。
WING:一番最初の共通コミュです。新人アイドルの登竜門とも言われるWINGという大会の優勝を目指す中で、各自のアイドルとしての在り方を見つけます。自己紹介的な面も大きいです。
感謝祭:二番目の共通コミュです。ユニットで協力しファン感謝祭を作り上げます。ユニットメンバーとの絡みを主軸として物語が描かれます。
GRAD:三番目の共通コミュです。アイドル個人個人が競い合うテレビ番組です。各々のアイドルとしての成長にフォーカスした物語が描かれます。
絵の構成要素を確認する
ここから絵についての具体的な話に入っていきます。
まず初めに何を描くべきかを確認します。
前提として場所は海です。コミュ内で明確に描写があるためここは悩むまでもなく確定です。
背景画像から夕方であることもわかります。海に来た時はまだ明るかったので、長い時間海で思い悩んでいたことが伺えます。
とりあえず、色々と描いてみます。
この段階ではまだあまり厳密な読み込みはしていません、絵も雑です。
描こうと思い立つ程度には、このあたりのモチーフは重要なんだろうなという意識はすでにあるので、そういった自分の頭の中にあったぼんやりとしたイメージを描き出していっています。
描いてみると、このイラストを構成する要素としては凛世・太陽・空・海・砂浜などの要素があることがわかります。
では具体的に、この時の凛世は立ちすくんでいたのでしょうか?歩いていたのでしょうか?
服は何を着ていたのでしょうか?
砂浜のどのあたりにいたのでしょうか?
空に雲はどれくらいあったのでしょうか?
太陽はどれくらい沈んでいたのでしょうか?
絵として描いていくには、これら全てについて自分の中で答えを出さなければなりません。
一つ一つについて、コミュを踏まえながらイラストの中でどうあるべきかを整理してみます。
また、あえて最初に言及しておくのですが、最終的な構図ではコミュの背景イラストもかなり意識しています。
文字によってすでに描写されている情景を一つのイラストとして書き直してしまうのは、無粋な面もあると自分の中では思っています。なので描いていくに際して、なるべく各自の心の中にあった景色との乖離を少なくしたいと考えています。
凛世のポーズはどうなっているべきか
とりあえず絵の主役である凛世について、どういったポーズであったか考えてみます。
改めてコミュを読み返してみると、台詞の直後には足音のSEと息を切らす様子が描写されています。
また、直前に凛世が叫ぶシーンがありますが、この叫びの後にも足音のSEが入っています。
おそらく走っているのだろうと思われます。
凛世が走るシーンは、GRAD以前のコミュでもたびたび描かれていました。
凛世コミュでの走る描写の扱い
何か意味はないかと、凛世が走っているシーンを見返してみます。
いくつかシーンを挙げます。
【杜野凛世の印象派】「drawing4(かんかんかん)」。
上手くタイミングが合わずPと話すことができないまま事務所を後にした凛世。
残念そうな面持ちで帰路につき電車が通り過ぎるのを待っていたところ、踏切の向こうにPの姿を見つけます。
【十二月短篇】「赤の踊り子の主題・変」で花火を見に行くシーン。
本当は時間がないのにそれを隠し花火を見ようと提案するP。凛世はその嘘に気づいています。
とても嬉しそうに、急かすように、屋上へと駆けます。
そして最も印象的なのが【水色感情】True「R&P」にてPに言われた「杜野は、自慢のアイドルですから!」という言葉を何度も反芻するシーン(特定のワンシーンではなく、このコミュで凛世はずっと走っています)
凛世はその大人し気な印象に反して感情が昂ると走るというのが何度も描かれていました。
そしてそれは、溢れ出る情動が体の動き・叫びとなって外部に漏れ出ているものだと思っています。
絵の中での走らせ方
最初に述べた通り今回描くシーンでも凛世は走っていると思われますが、コミュを踏まえ心情を想像することで抑えきれない凛世の感情の表現としての走りであることがわかってきます。
絵を描くために注目するまで気づいていなかったのですが、自分が思っていたより走るということは意識的に描写されていそうでした。
どのように走っているかまでは決めきれませんが、少なくとも走っていることは確定であり、凛世の感情が反映されることが求められそうに思えます。
海の意味と扱い方
次に、シーンの場所である海について考えてみます。
絵としての話に入る前に、まずは自分が持っていた凛世コミュにおける海の扱いについての前提を説明します。
この前提をもって海に注目します。
凛世コミュでの"海外"・"和と洋"の扱い
海について考えるにあたって、海の話に入る前に凛世コミュにおける海外・和と洋の扱いについて説明します。
凛世といえば和風なイメージがありますが、それに対をなすように凛世コミュでは洋のモチーフが印象的に使用されます。いくつか例をあげます。
朝コミュ「Morning③」での正解選択肢「洋服も似合うと思う」
着物が似合うとPに言われ、洋服の方が良いでしょうかと問う凛世。
その問い対する最も好感度が上がる選択肢がこれです。
【水色感情】「A2.恋は何色(R.Morino)」で聴くレコード。
喫茶店に置いてあったレコードを気にする凛世の様子を見て、一緒に聴いてみようとPは提案します。海外のシャンソンが流れ始めます。
曲についてよく知らず謝るPに、自分もそうであるとほほ笑む凛世。
お互い知らなかったがゆえに、Pと一緒に音楽に耳を傾けるという幸せな時間が訪れます。
【十二月短篇】での"カルメン"は海外製の口紅の名前であると同時に、その口紅の名付けの元になっている海外の小説・劇の名前です。
画像は1コミュ目「紅の踊り子の主題・序」でメイクスタッフに口紅を教えてもらったところです。海の向こうという言葉が出てきます。
同カード内の他のコミュでもカルメンと口紅は登場します
対して和風のモチーフですが、これはもう省略します。
凛世と言えば和と言えるほど、着物や和歌、折り紙、などなどいくらでも挙げられます。
これらを踏まえた上で、各モチーフがどのように用いられているのかを考えます。
和のものは"元々の凛世自身"を象徴するもののような印象を受けます。
そう考えると、洋・海外のものは"凛世にないもの・変化をもたらすもの"のように思えます。
そしてまた、それら洋のものは凛世がアイドルになることで触れることができたもののようにも思えます。Pとの会話や仕事で教わったものなど、全てはアイドルだからこそです。
(不誠実になってしまうので補足説明をするのですが、別に凛世は和のことしか知らない人間ではなく、むしろ洋の物・作品にも非常に詳しいです。カルメンの一説を諳んじるくらいには教養があります。あくまでコミュ中でのモチーフの扱いの部分についてです)
凛世コミュでの"世界"の扱い
また更に話が飛ぶのですが、このあたりまで考えたあたりで凛世コミュにおける世界の扱いについても考えが及んだので、前提の共有をします。
凛世コミュにおいて"世界が広がる"という表現は時たま使われます。一番印象的なのはWING優勝でしょうか。
凛世は、アイドルになって「世界が広がった」と言います。自分を想い応援してくれる人がいることを知り、それに報いたいと思うようになったと。
世界の広がりについては彼女のユニットメンバーとの関わりからも伺えることです。少女漫画について学んだり、百均ショップには百円以上の品もあることを知ったり、朝の特撮ヒーローに詳しくなったり……
小さくくだらないことにも思えますが、アイドルになったことによって出来た繋がりで、自分だけでは知りえなかった世界に日々触れています。
(Sコミュと感謝祭は主にここが描かれています)
また、もう一つ、凛世にとっての大きな変化があります。それは「恋」です。これを語らずして凛世は語れないでしょう。
凛世はPに恋をしていることが明確に描かれているアイドルです。Pカードでは主にこの恋心に焦点が当てられた話が描かれます。前述した洋のモチーフを見返してみても、そこには常にPの姿があります。
恋についても凛世の変化であり世界の広がりの一つなのではないかと思っています。
凛世の変化について触れましたが、変化により得られたものこそがこれらの世界なのではないかと思います。
絵の中での海の描写方針
海とは海外に繋がる場所です。
海外から来るものにより、凛世は新たな世界に触れました。
これらを踏まえ、海とは凛世に変化をもたらすものが来る場所であり、広がる世界との接点であると考えます。アイドルの世界そのものと考えることもできるでしょう。
"コミュ内でそこにいるから"という以上に海というロケーションが重要であるように思えてきました。
絵としての描き方を考えるために、改めてこのシーンにおける凛世の心情を振り返ってみます。
凛世はアイドルとして人の心を動かせないことに思い悩んでいました。
はっきりと「人の心を動かす力が欲しい」と言っています。
同時に、Pの傍にいることができないことにも苦しんでいます。
この後Pから励ましの言葉をかけられた際も「このままでは戻ることができない」「役に立てない」と言っています。
「自分はアイドルとしていられない」と思うと同時に、強く「アイドルでありたい」「Pの傍にいたい」と思っていることがこのシーンからは伺えます。
ここでは凛世は変化と進展を、その向こうの世界を切望しています。
海は手を伸ばしたいがその方法がわからない、焦がれるものであると同時に現状自らを苦しめているものでもあります。
これらを絵で表現するのであれば、やはり海は大きく、遠くまで続いて奥が見えない手が届かない様子を出すのが良いのだろうなと思いました。
鬱屈した心情とは逆に、美しく描くべきだろうとも思います。凛世の状態を反映させて淀んだ海にはしない方が良さそうです。
また凛世と海の配置ですが、凛世は海に直面しているというよりは、海に向き合えていない方が上手く近づけていない感じが出て良いかなと考えていました。海に向かって走っているというイメージもありませんでしたし。
海について考えがまとまってきました。最終的にどう描くかは他の要素も踏まえて最後に決めることにします。
空の意味と扱い方
絵の中に空もあるので空についても考えていきます。
ひとまず例によってコミュ内での扱いを見返していきます。
凛世コミュでの"空"の扱い
【ふらここのうた】「ふらここ」。
ブランコを仰向けになって漕ぐと空が近づくみたいで楽しいと言うP。凛世もそれに続きます。
躊躇う凛世がPに導かれて新しいものに触れる様子や、それでいて互いにすれ違う二人の様子がブランコに重ねて描かれます。
【杜野凛世の印象派】「drawing1(きみがそら)」。
仕事の都合で凛世は数日に渡ってPと会えない日々を過ごさなくてはならなくなりました。
会えない間ずっと空は雨が降っていますが、Pと会える日は晴れ渡っています。凛世の心情が空(天気)と結び付けて描かれます。
【水色感情】「R&P」では空に特別言及されるわけではありませんが、背景イラストの演出が特徴的です。
空を背景に、凛世のことを知れていなかったと反省するP。
空を背景に、Pから褒められた言葉を反芻し喜ぶ凛世。
暗転を挟んで同じ空が表示されることにより、対照的な二人の様子が非常に印象的に描かれています。
けっこう色んな使われ方をしていて、今一つ決定打に欠ける印象です。
同じものを見ているがすれ違っている様子やシンプルに心情に天気を重ねる描写に使われてます(後者は特段凛世コミュだけの特徴的な描写ではないと思っています)
Pと凛世が出会うと晴れる描写などから、Pと凛世を繋げる存在と見てもいいかもしれません。
また、これは凛世コミュだけではなくシャニマス全体で言えることなのですが、空や海自体がアイドルや世界の比喩として用いられることが多くあります。【ふらここのうた】での空の描写もこういった面があると思っています。
絵の中での空の描写方針
中々煮え切らないまま絵の話に移ります。
なにはともあれ実際のシーン中を見返して空の描写がないか見てみます。
凛世が海に着き声を上げるまで、空は一切映されません。
凛世から見た電車の景色や海の景色、凛世を探すP視点での街の様子などが映され続けます。
しかし、描こうとしているシーンの直後、ずっと気づいていなかったPの電話に凛世が気づき出るシーンで、ついに空が映されます。
ここでようやく凛世とPが繋がったのだと考えることができると思います。
例として色々な使用例を挙げましたが、今回のシーンにおいてはこの意味合いが強いかなと思います。
それでいて、ここではまだ凛世とPがお互いの意識をすり合わせられていません。
では直前のシーンたる、絵にしようとしている場面では空はどうなっているのが良さそうでしょうか。
個人的に、ここではまだ空はあまり見えていない方がいいのかなと考えました。まだPと凛世は繋がれていません。
空をアイドルの世界と考えた場合も、海と同様それは凛世には上手く見えていないものです。
凛世の心情描写も兼ねて適宜雲で隠されていると良さそうです。
それでいて、この直後の凛世とPが繋がり直接話すシーンの示唆としてほどよく開けて広がりを持っているような、そんな印象を与えられると良いなと考えていました。
方針が定まってきました。こちらも海と同様、最終的にどう描くかは他の要素も踏まえて最後に決めることにします。
凛世GRADの内容の概要
なんとなくノリが掴めてきたでしょうか。記事としてもちょうど半分くらいです(読んでいただき本当にありがとうございます……!)
以降の内容の説明のためにも、ここでようやく凛世GRADの内容を紹介します。既読の方は読み飛ばしてくださってもいいですし、内容を思い出すのに使っていただいてもいいです。
その前に断っておくのですが、全てを語るのは不可能でした。
凛世GRADは非常に独特な構成をしており、どう書いてもその魅力を伝えるのが難しかったです。もし興味を持っていただけましたら是非自分で読んでみていただければと思います。
(本当はこの記事だけで完結できるよう真面目にあらすじも書いていたのですが、全然途中なのに5000字を超えたあたりでやめました。降参です)
あらすじ
凛世はあるネットドラマに出演することになります。
ドラマのあらすじは以下です。
凛世GRADは、このドラマの脚本がモノローグにより少しずつ語られ、凛世の状況と重ねて描かれます。
GRAD中、このドラマはまだ脚本ができておらず、結末がわからない状態でコミュは進んでいきます。
最終回の台本が届き結末が明かされるのは、GRADのエンディングです。
凛世はGRADに向けてレッスンをする中でトレーナーに言われた「機械のようだ」「AIのようだ」という言葉に思い悩みます。自らは心を込めて踊っているつもりなのに、何故そういった評価をされるのか。
脚本にも登場する少女α・βの境遇に自分を重ねているところもあるのでしょう。『人の心を動かす』ということがわからなくなっていきます。
そんな悩みはパフォーマンスにも表れだします。不調に気づいたPは凛世にオフを提案します。
アイドルでありたい、Pの傍にいたい凛世は嫌がりますが、Pはそんな凛世の言葉を(あくまで善意で)聞かずに、オフを決定してしまいます。
オフになりPと離れ離れになった凛世は余計に思い悩んでいきます。
どうすれば前に進めるのか。悲痛そうなつぶやきが空に消えていきます。
「欲しい……」
「人の心を……動かす……力が……────」
ある日、凛世は海に向かっていました。劇の内容を何度も思い返し、悩みながら電車に揺られます。
海に着いた凛世は、トレーナーに言われたことを思い出し反芻しながら、ぐるぐると考えを巡らせます。
「心をこめて……踊る……演じる…… その他に……何が…………」
「それで…… 何が……不足なのでしょう……────」
抑圧された悩みは、ついにあふれ出し、凛世は悲痛な叫びを上げ駆け出します。
気づけば夕方になっていました。
駆けていた凛世は、絞り出すように弱々しくつぶやきます。
「──────いたい………………っ」
ここが絵のシーンです。
凛世が電車に乗っている時から、電話に出ないことを訝しんだPは凛世を探すために駆け回っている描写が何度か挟まれていました。
このシーンの後にPからの電話にようやく気付きます。
ようやく凛世の居場所がわかり、二人は出会えました。
Pは凛世に謝罪すると同時に、凛世の想いを問います。
このままでは戻れない、自分には『あ』がないから。そんな凛世の言葉をPは強く否定します。凛世には『あ』も『あ』じゃない言葉もあると。
その言葉を受け凛世は、少しずつ、秘めていた自らの心の内を紡いでいきます。
「……────
──いたかった…………っ」
「──あいたかった…………」
「前に……進みたくて…………
人の……心を…………動かしたくて…………」
「──
わからなくて…………」
「────プロデューサーさまに……
会いたかった…………───────」
ここまでが絵のシーンを説明するのに必要な凛世GRADのあらすじです。
雰囲気が伝わるよう印象的な台詞を抜粋しました。声の演技も凄まじいです。
この内容でだいたいGRAD全体の八割くらいです。
この後にGRAD本選とその後があります。ドラマの脚本と重ねられていたGRADでしたが、この海のシーンで明確にドラマと違う展開になります。
この後こそ真に面白い部分なので、気になった方は是非読んで欲しいです。
決勝後コミュとかも最高ですね。
補足説明
凛世は役の練習として、Pとは『あ』だけの会話を、トレーナーとは『あ』なしの会話を行っています。
「いたい」「いたかった」など『あ』があることが意識された台詞が多いのはこのためです。
対して明確に『あ』を省略していると思われる場面では「_りがとうございました」のように、アンダーバーを使い強調した描写がされています。
「いたかった」の真意については、読解に委ねられています。
『あ』の扱われ方・意味
ちょっとあらすじだと登場回数が少なくなってしまっているのですが、凛世GRADは『あ』というものが物凄く印象的に使用されています。
博士が何故少女αに『あ』を残したのか、というがドラマの脚本のミソでもあります。
結論だけ言うと『あ』は凛世の中の伝えたい・表現したい欲の暗喩として用いられていると思います。
本記事でもこの前提で話を進めていきます。
ちなみに説明する前だったので遠回しな言い方になってしまっているのですが、ポーズの項において説明した走ることが抑えきれない感情の表現だ、という結論は要は走ることもまた一つの『あ』であると言っています。
余談
(海の項とか読んだ後だと、このへんの脚本もなんだか示唆的に思えてきませんか…?)
色の意味と扱い方
GRADの内容がわかったところで、再度絵の話に戻っていきます。
画面を構成する色についても考えてみます。
凛世コミュでは色が非常に印象的に使用されます。
具体的には赤と青です。
(この絵を描こうと思ったキッカケの大部分は「ここのシーンの色の使い方凄いな……」と思ったからだったりします)
『記事の方針』で書いた通り、この記事の内容は全て僕がそう考えているというだけなのですが、読み返してみるとこの色の項目が一番その傾向が強い気がします。
あくまで事実ではなく個人の考えなので気をつけてください。
なにはともあれ各色について使用箇所を確認してみて、意味について深堀りしていきましょう。
(赤・青ともに使用箇所が非常に多いので、悩みつつ抜粋しています。選べていないシーンについてはご容赦を……)
赤の使用箇所
【想いいろは】で着ている服。
【想いいろは】はリリースと同時に実装された凛世の一枚目のカードです。
凛世の恋の行方を取り扱っており、少女漫画を思わせる(ともすればコミカルにも思える)内容が印象的です。
【十二月短篇】の服と口紅、花火。
Pカードのコミュでは、カードに割り当てられている私服がシュエーションに合わない場合デフォルト衣装を着るようになっています。凛世の場合は青い和服です。
このカードの私服であるドレスは仕事用の服なので、他のシーンでは基本的に青い和服を着ており「紅の踊り子の主題・変」でのみ、この紅のドレスを着ます。青から赤への切り替えという形で、衣装割り当ての仕様が非常に効果的に使われています。
背景画像で色が示されるパターンもあります。
画像は【十二月短篇】「紅の踊り子の主題・変」です。
同じコミュからの出典になってしまいましたが、それだけ【十二月短篇】は赤が意識的に使用されているコミュです。
青の使用箇所
凛世のイメージカラーは青色です。ライブでも青色の棒を振りますね。
もうこれだけで十分すぎるほどに印象が強いです。
初見時の凛世の印象は青の人がほとんでしょう(だからこそPカードで赤が強く押し出されている意外性が際立ちます)
デフォルト衣装の和服も青色です。
記事内ですでに常識かのように言及してしまっていますが、この服のことです。
【水色感情】のタイトル・コミュ内の台詞で用いられる水色という単語。
および凛世のモノローグの際に使用される背景イラスト。
【水色感情】も難しいコミュであり、説明するだけでnoteが書けると思います。
コミュを読んでいくと語られていた感情というものが凛世だけではなくPのものでもあったということがわかります。Pはアイドル側の人間であり、恋する赤い凛世の対になすものとしても納得がいくでしょう。
同時に凛世側はどうなのかというと、Trueのコミュでは「自慢のアイドルだ」と言われて非常に喜ぶ様子が描かれます。Pカードなので恋としてPに褒められて喜んでいるのかと思っていたのですが、青がアイドルを表現するのであればシンプルにアイドルとして喜んでいる面もあるのかもしれないと思っています。
水色感情難しいのでまだそこまで腑に落とせていないです。
各色の用いられ方
ようやく前提の共有が終わったところで、具体的に色がどう使用されているのか考えていきます。
赤は恋心と非常に関連付けて用いられています。これについては凛世のコミュ内で一貫しています。
青はイメージカラーでもあることからもアイドルと関連付けて考えることができます。また水色感情を見るにPとも結び付けられそうです。
ここでGRADに立ち返ってみます。
GRADでは途中まで少女αを恋する少女としての凛世に、少女βをアイドルの凛世に重ねて描写されています。
しかし「いたかった」でそれはPの口から明確に否定されます。
『あ』も『あ』じゃない言葉もどちらも凛世の中にはあると。ここで明確にネットドラマと展開が別れます。
恋する少女とアイドルという二つの面が凛世にあることは事実です。
そしてどちらも、『あ』を持っていながらそれを上手く表現することができていません。
凛世は『あ』をPに伝えることができていません。それはPと傍にいられればそれで良いと思っている積極性の不足であり、またPの望みに応えることこそが報いることだと思っているからです。迷惑になるかも……と思い自分の欲求を飲み込む様子が何度も描かれています。
凛世はアイドルの世界には『あ』を持ち込みませんでした。凛世は心をこめて勤める献身こそが、ファンの想いに報いることだと思っており、意識的に自分の欲求を排してパフォーマンスしている様子があります。
恋する少女としてもアイドルとしても、相手に報いることを優先し自己の欲を律します。『あ』がありながらそれを伝えない姿は、少女αであり少女βでもあるのです。
再び色の話に戻ります。
Pカードでは凛世の恋心にフォーカスする都合上赤は凛世の恋心の描写だと思っていました。
しかしGRADにおいて、凛世の恋についての欲である『あ』とアイドルとしての欲の『あ』は並べて語られました。
これを踏まえると、赤は恋に限らず凛世の感情・欲求の色として拡張して考えても差し支えなく思えてきます。少なくともGRADにおいて自分はそう考えています。
対する青はどうでしょうか。
青はPやアイドルとしての凛世の象徴のように用いられていました。
ここはそこまで大きく変わらないかなと思っています。凛世が報いたい相手であり、同時に凛世が自発的に欲求を抑える姿です。
絵での色の使用方針
こういった色についての描写を踏まえた上で、今回の絵のシチュエーションについて考えます(ようやく絵の話に帰ってきました……)
夕日は赤色です。対して、海は青色です。空も青色です。
夕方なので画面内の全ての物は夕焼けの赤に染められていると思われます。
素直に描けば必ず空や海の青に夕日の赤を混ぜることになるのですが、ここまで読んだ方であればこれが非常に意味のある行為であり、慎重にならなければならないことを理解していただけると思います。
改めてGRADでのシチュエーションを振り返ります。
凛世はアイドルとして、表現に悩んでいました。
そして、不調を改善するためにオフを取ることになり、Pとも離れ離れになってしまいます。
恋としてもアイドルとしても思い悩む凛世は、一人つぶやきます。
「欲しい……」「人の心を……動かす……力が……────」
オフの中のある日、悩む凛世はふらりと海を訪れます。
海を眺めながら、トレーナーに言われたことを思い出し、悲嘆に暮れます。
こみ上げてきた想いはやがてあふれ出し、悲痛な叫びをあげ駆け出します。
このシーンではアイドルとしてファンに報いるため・恋においてPに尽くすために抑えていた赤い想い、ファン・Pの心を動かしたいという気持ちが、形を成さず激情としてあふれ出しています。
であれば、赤は凛世を抑える全ての青を押しのけて溢れるように描かれるべきだと考えました。混ざる、ではなく押しのけ溢れるです。
海の青であったり空の青を夕日の赤で上書きするイメージです。
また、空の項で曇った心情を表現するために雲は描いていきたいとしましたが、このシーンではそういった全ての心情よりも溢れる想いが勝っていると思っているので、雲は描きつつ赤く染めてしまいます。
夕日の赤ではありますが、なるべく強く、なるべく赤く描いていきます。
(ちなみにここの判断は難しく、赤と青を混ぜてしまってもいいのでは?と思う方もいるかもしれないのですが、凛世GRAD「決勝後コミュ 勝利」のラストの演出を踏まえて、まだ独立して赤と青を描くべきだろうなと判断しました。ここは衝動的に溢れているシーンで、これ以降少しずつ気持ちを出していけるようになっていくのかなと思っています)
光(太陽)の意味と扱い方
凛世コミュでは光の描写も多いです。逆に太陽の描写はそこまで思いつかないなと思っていました。
個人的には夕焼けの太陽は太陽としてではなく光として考えた方が面白くなるなと思っていたので、それについて説明します。
まずはコミュの確認からです。もう慣れてきましたね。
凛世コミュでの"光"の扱い
WING優勝コミュ『世界』での客席の光。
詩的に美しくライブの様子を語る凛世。アイドルとしての喜びでした。
【十二月短篇】「夜、と呼べばはいと言ふ」の街の光。
クリスマスの電飾の中、照らされるPの顔を見つめます。
【十二月短篇】「紅の踊り子の主題・変」での花火。
光自体は花火のものですが、こちらもPを光として見ているかのような描写がなされています。コミュ内では計三発の花火について言及されますが、最初の二発が画像の黄色で、最後の一発が赤色です。
光は凛世が惹かれているものと同時に描かれます。
それはPに対して、ファン(客席の光)に対して、アイドルの世界に対して感じている煌きなのかなと思っています。
絵の中での光(太陽)の描写方針
このシーンは屋外で海なので明確な光源は太陽のみです。
それ以外に、海が反射によってキラキラ光っていると思います。あと湿った砂浜も意外と光るんですよね。難しいです。
このシーンで凛世は強く強くPを、アイドルの世界を求めています。
凛世が惹かれ求める光は、一段と強く輝いているのではないかと思いました。
そして光が強く輝くからこそ、それを求め溢れる赤もより強くなるのかなと思いました。
太陽は光らせます。白飛びさせるくらいがちょうどいいと思います。
それを受けた海、つまり凛世の求める世界も同様です。キラキラと煌いていて欲しいなと思います。
太陽の方針も定まりましたね。ついでに海も光らせることになりました。
もう一歩です。
凛世の服の選定
こちらが最後になります。服についても考えます。
どんな絵でも裸じゃない限りはどの服を着せるか悩みます。普段は「この服かわいい!」くらいのテンションで描いたりしますが。
今回のシーンでは明確な決め手はないので、絵で表現したかったことを振り返りながら考えていきます。
まず前提として、GRADコミュのほとんどのシーンには決まった服がありません。プレイヤーが私服選択画面から選択した服を着ます。これはシャニマスのゲーム仕様です。
「she / she」ラストのランニングをしているシーンではジャージを着るようになっていたりと、あまりにも不自然になるケースでは服が指定されていることもあるにはあります。
今回描こうとしているシーンでは指定されていないためプレイヤー指定の服を着ます。
※自由な服でコミュを楽しんで欲しい、という意図からこういった仕様になっていると思われるので、本来このシーンに正解の服はありません。
絵を描くにあたってどの服を着せるべきか考えているだけなので、ここで決めた内容が正解なんてことは一切ないです。
海に至るまでの流れをもう一度辿ってみます。
コミュ冒頭ですでに凛世は駅のホームにいます。
自身の演じる劇について思い悩む描写・少しずつ変わっていく風景・並行して凛世を探すPの様子が描かれます。
そして凛世は海に着き、思い悩んでいるうちに夕方になっています。
考え事をしながら、どこともなく海に向かっている印象を受けます。
明確な意図のない衝動的な行動として映ります。
こういった時に物凄くお洒落をするか、というと、自分はしないかなと思いました。
おそらく着慣れている服を何気なく着るのではないかと思います。
ということで凛世が着慣れているであろう和服の線で考えてみます。
凛世の衣装においてデフォルトの青い和服以外の和服は全て赤系統です。服自体の配色が暗いものもありますが、髪飾りなどで鮮やかな赤が差し色として使われています。
このシーンの凛世は、前項でも述べていたように自身の欲を押さえつけられています。
そして、その後の夕日のシーンでは当然凛世も夕日に照らされているので、凛世も赤く染め上げられていると思われます。
そういったシチュエーションを考えると、青い和服を使った方がより表現したいことに近い意味を持たせられそうです。
また、和服はとても走りづらいです。
最初に説明した通り凛世が走るということを感情の発露として扱います。
そんな走りを妨げるような和服であることは、抑圧された心情ともマッチするように思えます。
青い和服によって体を包まれ、動きづらそうに走る凛世。
その姿は夕日によって照らされ、服の青は赤へと染め上がる。
なんだかとても都合が良くなってきました。良さそうです。
というわけで
青い:凛世の状況に合っている上に赤に変わってくれるのが美味しい
動きづらい:感情の発露たる走りを妨げるというのが状況にマッチする
あたりの要素が絵を通して表現したいことに対して色々と都合が良かったので、今回はデフォルトの青い和服で描くことにしました。
凛世といえばこの服だよね、で特に考えずに着せているわけではないです。
絵の構図を仕上げる
ここまでの内容で、凛世コミュにおけるモチーフの扱いについてはかなり整理できたと思います。
おさらいします。
ようやく絵が描けそうになってきました。
考える上での一つの骨子として、この絵で表現したいことを決めます。
とはいえどういうシーンかは決まっているので、何に力を入れるかという話です。この絵では
・溢れ出る感情を表す景色、特に太陽と煌く海
・凛世の悩み・苦しみ・無力感
を表現していこうと思います。
色々と書いてきましたが、やはりこの二つが大きいと思います。
ではどのようにモチーフを配置していくかです。
まず絵のメインは風景にしたいと思いました。このシーンでは凛世自身によるものよりも、風景によって語られる凛世の心情の方が大きいです。赤い景色が凛世の感情を語ります。
凛世をどれくらい大きく描くがですが、やはり小さく見下ろすように描いた方が凛世の弱々しさは表現できるかなと思いました。このシーンでは強く叫んでいるというより、突けば転んでしまいそうな焦燥した様子だと思っています。
凛世の顔はどうしましょうか。ちょうど逆光で見えづらいはずです。顔は感情を語る上で重要ですが、今回は景色にその役は任せたいです。見えなくてもいいかもしれません。
とはいえ全く見えないと、どこか不穏な感じが強くなりすぎてしまったり、別の意味が乗ってしまう恐れもあるので、様子を見つつ調整していきます。
あと最初に少し描いた通り、原作での背景画像も意識して構図は決めていきます。
というわけでこんな感じのことを考えながらモチーフを配置していって、後は絵の様子を見て描きながら決めていきます(突然てきとうになってしまってすいません)
ここは僕の実力が不足しているのもあると思うのですが、正直一枚の絵としての魅力とそこで語るべきことのバランスを取るというのは非常に難しいです。
例えば画面全体を真っ赤にしてみて「なんかメリハリがなくて微妙だな……」と思ってやめたり、明暗差でコントラストをつけてメリハリを出そうとして「いやここはこんな暗い印象じゃない」と描き直したり、中々難しいです。ずっと試行錯誤しています。
多分もっと前の段階からそういった部分も見通して構図を考えることができたら良いのだろうなと思うんですが、ここは要練習です。今回の作品も練習です。日々考え続けていきたいです。
完成!!
これまでの考えを踏まえ、描いて消して描いて消してを繰り返し、なんとかかんとか完成です。ここまで読んでいただきありがとうございました。
改めて絵を載せておきます。
最初のモチベーションは以下でした。
………正直、まだまだ実力が追い付いていないなと思います。
もっと良い絵が描きたいです、精進します……
ですが、描写に込められた意図について、少しは共感してもらえたのではないかと思います。
文字はもちろん、声、背景、効果音、そして複数コミュを跨いだモチーフの使用、それらを組み合わせて描かれる雄弁な景色。
この絵を通して、自分が抱いていたシャニマスの一つの魅力が伝わっていれば幸いです。
また、シャニマスには深い意味を考えずともただただ美しいと感じられる場面も多いです。
このnoteを読んだ結果として、コミュを読みながら時たま立ち止まって風景を想像してもらえるようになるだけでも、とても嬉しいなと思います。
(ここまで読んだ方は折角ですし好きな情景描写でも発表しておいてもらえると僕が喜びます。個人的には「さざなみはいつも凡庸な音がする」の第6話「結局」でノクチルが話している間ずっと海が映されているのとかとても好きです)
後書き
凛世GRADって四年前なの!?!!?
今更凛世GRADについて長々note書くの意味わからんなと自分でも思っていたのですが、思ったより前でビックリしました。
僕がシャニマスを始めた時にはもうGRADは実装されていたんですが、シャニマスで一番最初に「こんなことやるのか!!!!!」と衝撃を受けたコミュが凛世GRADだったので、いつか絵を描きたいなと思っていました。ついでにnoteを書くことになるとは思っていませんでしたが……(ちなみに初見時は内容はほとんど理解できてなくて雰囲気で衝撃を受けていました。シャニ始めて三日目とかだった気がします)
でもGRADって新規の人が進めていけばいつかは読むコミュではあるので、定期的に語ってもいいですよね。
シャニマス7年目のテーマはJoinus!ですし、公式・ファン共に新規獲得のモチベが高いように思えます。
ぜひ新しく始めた方はGRADまで読んで欲しいなと思っています。このnoteがその一助になれば幸いです。
なんだかんだ結構長いnoteになってしまって反省しています。
内容が同じなら文字数は少なければ少ない方が良いと思っているので、削れる箇所は削ったのですが難しかったです。絵の要素全部説明しないと片手落ちになってしまうのですよね。
とにもかくにもここまで読んでくださった方は本当にありがとうございます。
実は僕がシャニマス用のアカウントを運用し始めたのは半年くらい前です。なので偉そうに長々と語っていますが、実績がほとんどありません。
ここまでしっかりコミュを絵にするのも初めてやりました。
こういう記事って内容はもちろんのこと、誰が言っているのかも重要だと(個人的には)思っているのですが、これからの活動に期待ということでなんとかその点にはお目こぼしいただけると嬉しいです。
雑記
言及するタイミングがなかったり、今一つ考えをまとめきれなかった点について適当に書いておきます。
ほとんどTwitter(現X)みたいな内容です。急に雑になりますがご了承ください。
正直読んでも読まなくてもいいです。4000字くらいありますし。
要は語り足りないんすよ。
直前のシーンを描かなかった理由
凛世GRADが好きな方は、このシーンの直前にある凛世が叫んでいるシーンの方が印象に残っている方もいると思います。というか僕もそうです。
では何故そのシーンを描かなかったのかというと、シンプルに描かない方が良いと思ったからです。
ここでは暗転演出が使用されており、叫び声だけが聞こえることが非常に効果的に使用されています。
そういった演出もあり、読んだ人の中にはそれぞれの強いイメージがあると思います。ここは自分としても絵として形にせずに凛世の様子を想像するにとどめておきたかったです。
凛世がどんな表情でどんな気持ちであったか、考え続けていたいですね。
凛世が海に行った理由がわからん
ずっと考えていたんですがわかりませんでした。何か示唆されるコミュありましたっけ。誰か教えてください。
このnoteに書いたように、メタ的には海って重要なモチーフだなとは思っているんですが、凛世という"人間"がふらりと行く場所として海を"選ぶ"イメージがありませんでした。
姉が遠くに嫁いでしまったという話はあって、凛世は姉がいなくなったのをとても寂しく思っていたという描写はあったりするので、幼少期の凛世が"想いを馳せる遠い場所の象徴"として海を眺めていたとかあったら良いなと思いました。Sコミュとかにあったりするかな。Sコミュの記憶が怪しいです。
いまだ実装されぬ凛世STEPで海に行った理由が回収されたら嬉しいなと思います。ここの回収求めてるの俺だけかも。
まぁでも凛世STEPに関してはこのnoteの内容を覆される方がよっぽど怖いです。ひぃ~。
凛世とPの出会いについての妄想
和洋のモチーフを踏まえると、凛世とPの出会いは鼻緒が切れてしまった凛世の下駄(和)をPがハンカチ(洋)で直すという形になっているのも示唆的に思えてきます。
下駄が"歩くために必要な物である"というのも良いなと思っています。
海の項で触れようか悩んだのですが、完全に妄想な上に本筋ともあまり関係ないので削りました。妄想すぎてもう完全にただのTwitterっすね。
GRAD以降での海の扱い
GRADまで、と最初に言ったのであえて触れなかったのですが、GRAD後の凛世コミュにおいても海外や海は印象的に用いられています。
海外と聞いてカタコトの日本語や特徴的なダンスが頭に浮かんでいる方もいるかもしれません。
海といえばGRAD直後に行く海沿いの街の景色が思い起こされます。それとも凛世が決意を語った場所でしょうか。
海や海外について、個人的にはむしろGRAD後の印象の方が強いです。
シャニマス全体で見たモチーフの使用について
凛世コミュについて話を絞っているので逆に主語が狭まりすぎていると感じている部分もあるのですが、海とか空とかシャニマス全体で結構意識的に使用されているなぁと思っています。
あとは空の青と夕日の赤(オレンジ)とか。歌詞で使われたりすると色々嬉しいですよね。
放クラのSカードでもたまに夕日が印象的に使われたりするのですが、そのケースでは"時間の経過"や"一つの区切り"のようなものを意図して使われることが多い気がしています。そこまで真面目に読み込んだわけではないですが。
【うつくしいあした】の夕暮れの情景とかとても好きです。あとは放クラ感謝祭の寮組帰宅シーンとか。
放クラは夕焼けの寂しさを次の一日の希望で上書いてくれます。
凛世のデフォルトの和服の構造
デフォルト私服の和服は二部式着物といって上下に分かれた作りになっています。
簡易版、と言うと少しニュアンスも違うのですが、着やすさや動きやすさがメリットの形式だそうです。
着物でありながら動くこと・利便性を意識している作りが凛世の欲を表現しているみたいな感じで上手いこと言えないかなと考えていたのですが、十割妄想になるので盛り込みませんでした。そもそも着物に詳しくないですし。
多分普段使いの着物を考えると自然と二部式になるんだと思います。
描こうと思って観察すると気づくのですが、意外と知られていないかなと思います。
豆知識としては面白いかなと思ったので紹介しておきます。
ちなみに柄はクレマチスという花だそうです。凛世であることを踏まえるともしくはテッセン?花に詳しくないのが悔やまれます。
豆知識です。
凛世の瞳の赤の意味
色の項では絵と関係なかったので触れませんでしたが、凛世の瞳も赤色です。
瞳って感情を語るものだよなあと個人的に思っていて、これはシャニマスの立ち絵の動きなんかもに感じられると思います。
じゃあ瞳の赤は恋心という感情なのかというと、それも違う気がするんですよね、明確な根拠はなく個人的な感覚ですが。凛世って生まれた頃から瞳は赤いのでしょうし(キャラデザにそれ言っちゃうのって感じでもありますが)
であれば瞳が赤いのはなんで?となると、このnoteで書いた通り恋にもアイドルにもいえる欲や感情の赤なのかなと思っています。瞳に使われてるし赤は恋にだけに当てはめられる色じゃないのかも、って考えの方が先にあった気がしてきました。
WINGで凛世がPだけでなくファンのためにも報いたい、と打ち明けるシーンがあります。コミュのタイトルは「揺れる瞳」です。
ここは初めて凛世のアイドルとしての欲が描かれるシーンだったりします。Pへの献身が揺らいでいてそのことを指しているだけかもしれませんが。
まぁやっぱり妄想の域を出ないですね、かなり適当なこと言ってます。
"絵で何かを伝える"ということについて色々考えていました
今回は「シャニマスが行っている情景描写の優美さ・巧さをどうすれば伝えられるだろうか」ということを考えた時に、情景描写なのだからまずはわかりやすい一枚絵をフックにしてその解説を行いながら、その描写は元々原作の時点で行われていたものですよ、と展開していくのがわかりやすいかなみたいなことを考えていました。
出来上がった記事を見てみると当初の想定からだいぶ構成が変わっています。難しいですね。
長々とnoteを書きましたが、言わないだけで絵を描く人は結構色々考えてる人が多いのではないかと思っています。
(色々考えずに「この子かわいい!!!!!!!!」だけを考えている場合もあります、普段の僕は大体これです、時と場合によります)
自分は絵が主戦場だとは思っていないので恥も外聞もなくベラベラ喋ってしまいましたが、本当は絵だけで語れたらなぁと思っています。
また、そもそも意図が全て伝わる必要もなくて、そこに意図を込めるということに意味があるのかなとも思っています。
なんかすごく意図がこもってそうなイラストかっこいいですよね。世の神絵師達は本当に凄いです。
同時に、絵や映像だけで何かを伝えるのはとても難しいのだろうなということを最近はよく考えていました。
言葉にせよ絵にせよ、意思を伝えるには共通の認識が必要です。言葉であればシンプルにその言語のことを知っている必要がありますし、それ以外にも使い方の文化であったり仲間内のスラングであったり、色々でしょう。
絵においても、分野によっては色やモチーフ毎に意味があったりします。それを知らずに鑑賞した際の気持ちを否定するつもりはありませんが、やはり受け取り方には大きく差が出るでしょう。
今回の絵のような場合も同様だと思っていました。コミュの内容を読み込んでいればこのnoteがなくてもある程度内容を汲める人もいたかもしれません。しかしそれはほんの一握りの人だけだと思います。
(そもそもそのへんの人間が描いた絵や映像から込められた意図を読み取ろうとする人は少ないと思っています)
自分も、なるべく頑張って意図を汲み取ろうと努力はしているのですが、それでも取りこぼす物が多いです。
自分で表現しようとなると、なおさらその難しさを痛感します。今回はかなり良い練習になりました。
(もう気づいてきた方もいるかもしれないですが、雑記なので明確な結論はないです。そもそも散らかりすぎですし。なんか良い感じに書けたら後書きに含めたかったのですが)
今回は表現したい内容の特性から判断して絵を用いたという面があります。
誰かに何かを伝える上での手段として、個人的には絵と文字をそこまで大きく区別していません。
あくまでコミュの魅力を語りたいという想いがあって、その手段として今回は文字より絵の方がいいかな~と思ったという感じです。
なんかこのあたり、もっと自由であれたらいいなと思っています。
ファン活動としても感想を書いたり、絵を描いたり、うちわを作ったり、花を贈ったり、色んな形がありますもんね。その時その時の自分の伝えたいことに応じて、色々とやっていけたらいいな、なんてことを考えています。
自分はまだまだ未熟なので、色々と足りていない部分もあるのですが、これからも人に伝えるために技術を磨いていきたいなと思いました。
同時に、自分が込めたのと同様に誰かがそこに込めた想いについて、それを慮り、知ろうとしていきたいなと思います。
折角ですし最後は凛世GRADのスクショで締めようと思います。
改めてここまで読んでいただきありがとうございました。
これからもシャニマスの描写について、彼女達の気持ちについて、そして誰かの作品に込められた想いについて、考えていきたいです。
本記事における"凛世"という文字列の登場回数
283回です。タイトル・見出し・タグ・スクショ内の文字列を含みます。
たくさん名前が呼べて嬉しいです。