【SS】キスケ「アイマスEXPOに出るっピ!」
【登場人物】
キスケ:黄色い鬼。何者かにピストルで射殺される。
アカネ:赤い鬼。
アオベエ:青い鬼。ピストルを隠し持っている。
アカネ「アイマスEXPOって一体なんだい?」
アオベエ「アイマスもEXPOもわかんないでゴンス」
キスケ「アイマスEXPO(THE IDOLM@STER M@STER EXPO)は、バンダイナムコエンターテインメントが展開する『アイドルマスター』シリーズの20周年イヤーを記念して開催される大型イベントだっピ!」
キスケ「『「みんなで"アイ"を集めて みんなでつくる、みんなのための 一大アイマスイベント』というコンセプトのもと、ライブや企画ステージ、展示会、物販、コラボ飲食など、さまざまなコンテンツが集合するんだッピ!」
アカネ「用意されたような説明だねぇ。」
アオベエ「バンダイナムコ主催でゴンスか!収益のポイントは具体的にどこになるでゴンス?」
アカネ「確かに、これだけのイベントを開催するには会場費や人件費など様々な費用がかかるねぇ。仮に経費と利益がトントンだったとしても、開催に充てたリソース分は損益と言って差し支えないからねぇ。」
キスケ「そんなことに言及するだなんて無粋だっピ!」
アオベエ「いや、そこは大事なポイントでゴンス。イベント全体の見通しを理解した上で、自分がブース出展した場合の損益やそれ以外のメリット、例えば交流や名売りの効果を総合的に考えることがマストでゴンス!」
アカネ「なるほどねぇ、アオベエは意外とビジネスマインドを持っているんだねぇ。」
キスケ「でっ、でもそんなに細かいこと気にしてたら楽しめないっピよ!」
アオベエ「そりゃぁ、楽しむのも大事でゴンス。でも参加するとしたら出店費用や商品制作費用も計算しないといけないでゴンスよ。他の参加者との交流も大事でゴンスけど、事前に準備するコストと売上の見通しも考慮するべきでゴンス。」
アカネ「まぁアオベエの言うことも一理あるけど、キスケの楽しみ方の方がどちらかといえば王道な楽しみ方かもしれないねぇ。」
キスケ「そうだっピ!このEXPOはみんなで一緒にワクワクを作って楽しみを共有する場所なんだっピ!アオベエもビジネスのことばかり考えてないで楽しみを見出すんだっピ!」
アオベエ「……まぁキスケがそこまで言うならもう少し柔軟に考えてみるでゴンス。コンテンツとイベントの性質を考えたら、ビジネスで捉えるのは確かに無粋かもしれないでゴンスね。」
アカネ「キスケはアイマスEXPOで何をする予定なんだい?」
アオベエ「同人誌でも描くでゴンスか?」
キスケ「キーくんは手作りガムを売るんだっピ!これは絶対にウケるっピよ!」
アオベエ「……手作り…ガムでゴンスか?そりゃちょっと狂気の沙汰でゴンスよ……?それにアイマスEXPOのテーマとは関係ないでゴンス。」
アカネ「確かになぜガムなんだい?それも手作りなんて、ちょっと狂ってるとしか言いようがないねぇ……」
キスケ「アイマスEXPOは『みんなのための』イベントだっピ!キーくんの手作りガムをみんなに噛んでもらえればみんなハッピーになると思うっピ!」
アカネ「ハッピーになるって、違法な粉でも入れるつもりなのかい?」
アオベエ「それに参加する人達はアイドルマスターのイベントとして来るんでゴンスよ。ガムを噛みたくて来るわけじゃないでゴンス。それに手作りガムって何でゴンスか??作り方もよくわからないし衛生的に大丈夫かも怪しいでゴンス。」
アカネ「それに、手作りだとしてもちゃんとしたものを作らないと、仮に手作りガムを買ってくれる人がいたとしてもクレームが来るかもしれないよぉ?」
キスケ「……でもっ、キーくんの手作りガムはきっと世界最高の味わいになると思うッピ!ここでファンをつけて、事業展開して……みんなにアイを届けたいっピ!その第一歩だっピよ!」
アオベエ「……だったら、せめてガムじゃなくてアイマスに関連するものを考えた方がいいでゴンスよ。アイマスのアイドルをモチーフにしたお菓子とか、少しでも関連があればみんなも喜んでくれるはずでゴンス。お菓子作りが得意なアイドルだっているでゴンスし、ドーナツやアメが好きなアイドルだっているでゴンス。」
アカネ「確かにアイドルマスターというコンテンツの多様性に寄り添った商品展開は来場者の心を掴みやすいかもしれないねぇ。」
キスケ「ガムが好きなアイドルはいないっピか?」
アカネ「……どうだろうねぇ。」
アオベエ「……ところでキスケ、食品を出すって大丈夫でゴンスか?イベントの規則はもとより、食品販売には色々な法的な資格や規制があるでゴンスよ?」
キスケ「えっ…法的資格…?鬼に法が適応されるっピか?」
アカネ「……確かに……」
キスケ「どちらにしてもキーくんの愛と情熱があれば資格なんていらないっピ!」
アオベエ「いやいや、仮に違法だった場合はそんな言い訳じゃ済まされないでゴンス。罰金どころか、下手すると懲役刑もあるでゴンスよ!オレは本件に関わるのはごめんでゴンス!!!」
キスケ「地獄から来た鬼が服役を怖がってどうするんだッピ!!!」
アカネ「ちょっとちょっと、二人とも落ち着きなよぉ。ここは穏便に……」
アオベエ「いや、ここで譲るわけにはいかないでゴンス!法の下でオレたちは平等でゴンス!!!ルールは守るべきでゴンスよ!!!!」
キスケ「ふざけるなっピ!人間が考えた法のもとに置かれるのなんてごめんだっピ!!!!!」
二人は次第にヒートアップし、ついにはお互いに掴み掛かり顔面を殴り始めた。
アカネ「ちょっとちょっと!!!落ち着きなよぉ!!!ここで殴り合って何になるんだい?」
アオベエ「メス鬼ごときがうるさいでゴンス!!!オレは……オレの正義とこの国の法のためにやるでゴンス!!!!これで終わりでゴンスよ!!!!!」
アオベエは決意を固め、普段から懐に隠し持っていたピストルを取り出し、キスケに銃口を向けた。
アカネ「ちょ、ちょっと待ちなよアオベエ!!!!いくらなんでも!!!」
しかしアオベエの決意は固く、キスケに向けた銃口そのままにトリガーを引いた。
【アカネ視点】
アカネはその瞬間を目の当たりにして、驚きと恐怖が入り混じった表情を浮かべた。
アカネ「……あ……っ……!?」
アオベエがピストルをキスケに向け引き金を引き、鉛の弾がキスケの左目を貫いたその瞬間、アカネはその場で体が硬直し、その後痙攣し始めた。
アカネ「ぅあ……キ……」
アカネは痙攣で思うように言葉を発することができず、キスケと同じように呻き声を上げることしかできなかった。
全身に力が入らず、緩んだ口元からは泡を吹き、床にへたれ込んだ下半身からは糞尿を垂れ流している。
アカネ「……」
アカネはどうすることもできず、ただ口をパクパクと開閉させながら動かなくなるキスケを見つめることしかできなかった。
恐怖が彼女を支配していた。
【アオベエ視点】
撃った。
キスケを撃ち殺した。
アオベエはキスケの左目を正確に撃ち抜いたピストルを右手に持ったまま、突然何かが吹っ切れたように絶叫した。
アオベエ「ゥゥオオオオオアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
アオベエはスッと立ち上がると、だんだんと動かなくなっていくキスケを無視しながら着ていた衣服を一気に脱ぎ始めた。
視界の傍らに泡を吹きながら糞尿を垂れ流しているアカネが映ってもアオベエの行動は一向に止まらなかった。
全裸になったアオベエは、街の雑踏の中へ向かって走り出した。
アオベエ「自由でゴンス……自由でゴンス……!」
アオベエは全力で街を駆け抜け、狂ったように叫びながら商店街を疾走した。その姿は、アオベエが「鬼」であることを思い出させるように悍ましく、恐ろしいものだった。
全てが狂っている、と感じた瞬間だった。
《法廷編へ続く》
【エンディング曲】
Remember The Name (feat. eminem & 50Cent) / Ed Sheeran