ヘビーレイン 名馬列伝

主な勝ち鞍:無敗三冠、古馬王道完全制覇、凱旋門賞、香港トリプルクラウン

名牝オーヒロインの2番仔、また、2・3・4番仔(ヘビーレイン、セイテン、クラウディ)はマルゼンスキー三兄弟と言われその長男として競馬ブームを牽引した。
デビュー前からモノが違うと言われ、その噂通り新馬戦を大差で完勝。
続く新潟2歳Sも大差で勝利すると、その後2歳ながら海外へと遠征。
このローテーションは後の弟、妹たちの指標ともなった。
仏クリテリウムドサンクルーで初G1勝利を果たす。
日本に戻ってからは朝日杯、ホープフルステークスと連闘。
結果はどちらも先行逃げ切りで1着。2歳時の戦績はG1 3勝を含む8戦8勝と高い前評判すらも大きく上回る結果となった。

3歳はきさらぎ賞からスタート、その走りから超早熟馬と言われ始め、3歳前半には衰えるのではと囁かれ始めていた。
また調教時の手抜き癖もこの頃から目立ち始め、皐月賞は不安視されていたが堂々の一番人気、大差を付けてその実力の高さを再度知らしめた。
その後マイルCに進み路線をクラシックから切り替えたと思いきや、連闘で日本ダービーに参戦。どちらも鉄板の先行逃げ切りで勝ち切った。

夏は休養を挟むべきという声もあったが、その後再び海外へ遠征。
ここからの快進撃は伝説的名馬と言われる1つの所以である。
ドイツダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベス、インターナショナルSを完勝し凱旋門賞への道を直走る。

凱旋門賞ではアイルランドダービー馬、G1連勝中で右肩上がりのダンシングブレーヴと熾烈な争いを繰り広げたが、徐々にダンシングブレーヴが失速。ヘビーレインの衰えない末脚について行けず、内国産馬、日本調教馬としてヘビーレインが堂々の優勝を果たした。

凱旋門賞後菊花賞も余裕の大差勝ちし、無敗三冠を果たす。
その後香港カップへの調整が発表され、有馬記念にてシンザンの最高傑作、前年の菊花賞馬ミホシンザンとの決着を夢見たファンは悲しみに似た失望の念を口にしたという。

しかし陣営はその声を聞いてか、またも大胆なローテーションを組んだ。
香港カップ帰国後有馬記念へも参戦すると発表。
このレース酷使から多方面から調教師、馬主への批判が殺到した。
しかし、予定を変更することなく同レースへと出馬。2.29.1という驚異的なタイムを叩き出し見事優勝、その雑言を一蹴した。このタイムは35年以上経った今も破られていない。

伝説の87年。
マルゼンスキー三兄弟の年とも言われたこの年は長兄ヘビーレインが古馬王道完全制覇、次男セイテンが長男の後を追うように無敗三冠を制覇、期待を寄せられた三男クラウディのデビュー年であった。

無敗三冠、古馬王道完全制覇を果たした同馬は種牡馬入りを期待されたが陣営は現役続行を表明。兄弟に日本を託し、海外を主戦場として現役最終年と発表された5歳の活動を始めた。

その勢いは止まることを知らず、上半期に香港トリプルクラウンを達成。その後クイーンエリザベス2世ジュビリーSにて初の1200m短距離戦へと挑む。次男セイテンへの対抗心とも思える後方待機からの直一気で他馬をねじ伏せた。変幻自在の脚質は長男にも備わっていたのだ。
このレースを制覇し、ヘビーレインは1200m〜3200mのG1レースを制したこととなり、レース展開、レース距離に左右されない完全無欠のスーパーホースの名を手に入れた。

凱旋門賞を3歳時に手にした同馬はもう一つの芝最高峰レース、BCクラシックターフを目標として歩み始める。
英国サセックスS、インターナショナルSを制した後、米国クールモアターフマイルSを経てBCターフへと挑む予定であった。
しかし陣営はBCターフ直前でヘビーレインの引退を表明。
理由は明白で、ピークを過ぎ、同馬はすでに気力のみで走っていた。
陣営がこの決断を下したのはインターナショナルSだった。ヘビーレイン生涯唯一の2番人気。同レースの一番人気は前レースで三男(クラウディ)に土を付けた欧州の怪物ムトト。
陣営の会見では8月のサセックスSから体調の変化を感じ取ったという。
しかしそのレースでも快勝。続くインターナショナルSも2番人気ながら、辛くも優勝。
このレースでは三男の無念を長男が晴らすかの如く気合いでもぎ取った勝利だった。
後のクールモアターフマイルSでは4馬身差以上を付けるレースだったが、その走りに全盛期の輝きは無く、故障の可能性も考え目標レース直前で苦渋の引退を発表したのだった。

38戦38勝。内G1 32勝 二度の年度代表馬に選ばれ、新馬戦を除くレース全てが重賞という驚異的な記録を残し、ターフを去っていった。
最後まで治ることの無かった手抜き癖から怠惰な麒麟児という愛称で皆に愛された同馬は同年、その功績を讃え、テスコガビー、インターグシケン以来となる顕彰馬に表彰された。

種牡馬になってからもその才能は開花。
初年度産駒がデビューするとヘビーレインボーを筆頭に大物たちが続々登場。
翌年にはヘビーレインボーが三冠を達成。また海を超えたアメリカでもガヤネマノがケンタッキーオークスを制するなどしてリーディングサイアーを獲得。
その血筋は色褪せることなく広がり続けている。

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