ムーンリバー 名馬列伝
主な勝ち鞍:春古馬三冠、牝馬G1完全制覇、BCフィリー&メアターフ、インターナショナルS
マルゼンスキー三姉妹次女として競馬界を大いに沸かしたオータムサニーと最強馬と名高い父トウショウボーイとの産駒。
オータムサニーの初仔として注目を集めた当馬は母譲りのスピードを武器にデビュー戦を快勝。続く新潟2歳Sでは牡馬相手に異次元の走りを見せ圧勝。その実力の高さを知らしめた。9月はカナダ(ナタルマS)へと遠征。初G1、初海外のレースだったがそこでも一番人気を得るとその人気通りの走りを見せ優勝。来年のクラシック戦線の主役を期待されるようになる。その後はアルテミスS、阪神JFと出走しどちらも他馬を寄せ付けず圧勝。
2歳時戦績を5戦5勝 内G1 2勝という期待以上の成績で終えた。
また、この年は母の全兄、マルゼンスキー三兄弟の長男として名を馳せたヘビーレインの仔であるタワーオブテラー(母リニアクイン)、ヘビークランチ(母メジロラモーヌ)がデビュー。当馬を合わせた3頭のその抜きん出た実力を評して三帝と呼ばれ96年の競馬界を大いに盛り上げることとなる。
迎えた3歳。
その卓越したスピードで桜花賞、オークスを楽な手ごたえで勝利すると三帝揃ってアメリカへと繰り出す。ベルモントオークス招待、デルマーオークスを通過点かのように勝利すると堂々凱旋、秋華賞へと挑んだ。しかしここでも敵なし、余裕の勝利をするとその勢いのままエリザベス女王杯へ。古馬相手もなんのその、もはや牝馬に敵は居ないと思えるような大差勝ちを果たし、三帝での有馬記念決戦を熱望されるようになった。
しかし年末は再度アメリカへ。アメリカンオークスを優勝し、日米芝牝馬のレースで頂点を取った。
3歳時戦績9戦9勝。 内G1 7勝と最高の状態で年内を終えた。
しかし、その能力の高さはファンたちも理解していたが、3歳時のレース全てが牝馬限定戦ということで評価はそこまで高くなかった。
その声を聞いてなのか、年末陣営は来年、古馬王道路線への挑戦を発表。
これにはファンたちも歓喜したという。
前年の宣言通り、明けてからは牡馬との戦いにも身を投じていく。
ペガサスワールドCT、チッピングノートンS、大阪杯、天皇賞(春)へと出走。
その全てで1着を獲得する。特に天皇賞(春)では先行して逃げるマヤノトップガンにゴール手前ギリギリで追い付きハナ差の1着。生涯ここまでの接戦はこのレースだけだった。ヴィクトリアマイルを挟み春古馬三冠がかかった宝塚記念へ出走。大差で1着を取り、ここに絶対女王が誕生した。
下半期は有馬記念では無く香港カップを目標に定める。
夏の初戦は英国インターナショナルS。ここではこの年欧州三冠を達成するパントレセレブルが出走、有力馬と目されていた。
しかし、スローペースで流れる展開を見て鞍上は今ままで得意としていた後方策を捨て先行逃げ切りで完勝。その実力は日本のみならず世界の牡馬相手にも引けを取らないことを証明した。
その後、BCフィリー&メアターフへ。
BCターフへの出走も考えられたが、最後の香港カップで全力を出し切るために、牝馬最高峰のレースを敢えて叩きとして使ったところも同馬の能力の高さからだった。
そして迎えた香港カップ。有力馬集う中牝馬ながら堂々の一番人気。
引退試合と銘打って挑んだ一戦だったが、そんなことが嘘かのように大差で勝利。
現地でも大きな歓声に包まれた。
生涯戦績24戦24勝 内G1 19勝 新馬戦を除く全てが重賞レースという偉大な記録を残して絶対女王は絶対女王のままターフを去っていった。
またこの年には全妹のヘップバーンが無敗で牝馬三冠を達成。
オーヒロインからなる華麗なる血筋は脈々と日本競馬界を染めている。