さとがえり
おかえり ただいま
くゆる線香のにおい
あの世から魂が帰ってくる日
おばあちゃんの優しい笑顔や
いかめしいヒゲのご先祖様
名前も知らない小さな位牌の主が
肩を並べて狭い仏壇から
こちらを覗いているようすを想像する
なかには、もう生まれ変わって
どこか遠くの街で暮らしているひとも
いるのかもしれないね
おひさしぶりです
ちかごろ元気にやっていますか?
もしかしたら私の魂もいまごろ
どこか覚えていないお家の仏壇に
顔を出しているかもしれない
おかえり ただいま
くゆる線香のにおい
すすけた古い畳のにおい
水っぽい野菜と果物のにおい
蓮の葉の冷たい感触
ぼんやり灯明に浮かぶ
知らないのになつかしい顔と顔
いまは少しだけ、透き通った手をつなぐ