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21_21 DESIGN SIGHT 企画展「The Original」【もしも100万円あったらー妄想お引っ越しチャレンジ】
「もしも100万円あったら」
SHElikesライターコミュニティで企画してくださっている「リハビリnote.」の今月のテーマ「もしも100万円あったら」に参加します!
このテーマに合わせて、ご紹介してみたい展覧会があります。
東京・六本木〈21_21 DESIGN SIGHT〉で開かれていた「The Original」。白地に赤のメインビジュアルが目をひきます。
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会場には、家具、文房具、おもちゃ、台所用品など、生活に身近なプロダクトが展示されています。展示品のほとんどが量産品で、実際に入手して使うこともできるというのが大きな特徴です。
デザインの第一線で活躍する3名―土田貴宏氏、深澤直人氏、田代かおる氏が絞り込んだ、生活に身近な「オリジナル」が展示されています。
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本展では、世の中に深く影響を与えるデザインを「The Original」と定義し、紹介します。ただし、ここでいう「The Original」は必ずしもものづくりの歴史における「始まり」という意味ではありません。多くのデザイナーを触発するような、根源的な魅力と影響力をそなえ、そのエッセンスが後にまでつながれていくものです。
「The Original」開催概要
オリジナリティは、固定概念を打ち破って新しいものを生み出し、ときに世の中を大きく変えるものです。また、時代の流れに埋没し、一度は忘れ去られたオリジナリティであっても、のちに見直されて、時代を超えて影響を与えることもあります。
ですが、たくさんのモノや情報がやりとりされ、濁流のように私たちの周りを流れていく現代社会。モノも情報も人も、互いに影響し合って絶えず変化していて、どれが「オリジナル」なのか見つけ出すことが難しくなっている世の中です。
逆に言えば、「オリジナルはどれか」ということを考えなくても、十分暮らしていける世の中とも言えます。
目新しくて画期的な製品が発売されれば、すぐさま話題に。人気で売り切れ続出、入手困難。でも2~3か月もすれば、類似の商品が別のいろいろなところから発売されるようになります。より安価で十分な品質のものが買えるようになったり、むしろ新しい機能が追加されて、性能が良くなっていたり。
使ってみた反応が「やっぱり元祖は違うね」となるか「安いので十分だ」となるかは、ニーズや価値観によっても様々です。そのため、世間一般の評価を一概に捉えることは難しく、必ずしもオリジナルを使うことがいいというわけでもありません。
もちろん、資本主義的な価値観からすれば、より良い製品を手軽に手にできるのは、消費者にとってうれしいことです。
そして、資本主義的な価値観からすれば、(法律や企業倫理の範囲内で)模倣や転用をしてでも売れる商品を追い求めるものも自然な流れといえます。
反対に、オリジナリティが強すぎて、あまり真似されないものもあります。優れたデザインであっても、他に真似されないままでは世の中から忘れ去られてしまう。そういうことも展示の中で触れられていました。
「オリジナル」がどれだったか、すぐに忘れられてしまう。一度も「オリジナル」を手にしたことがない人をたくさん残したまま、「オリジナル」は他の類似品と一緒に埋没していく。人々は、どんどん「オリジナル」の力を忘れていく。
そんな今こそ「オリジナル」の力を感じよう、というのがこの展覧会の趣旨です。
会場に並べられた「オリジナル」を目の当たりにして、私が思ったのは「オリジナルに囲まれて、一度は暮らしてみたい」ということ。
100万円あったら、「オリジナル」に囲まれて、どんな生活ができるんだろう。
予算100万円で、「The Original」な生活を妄想する
ということで、100万円を上限に私が「一緒に暮らしたい!」と思った作品たちを、個人的な理想と偏愛のみで選んでいき、ご紹介していこうと思います。
価格は税込みで、送料などは含めていません。
10畳一間の1LDKに引っ越し、一人暮らしを始めようというタイミングを想定しています。
在庫切れや廃盤になっている商品も一部ありますが、関係ありません。妄想なので。
(残念ながら、「The Original」は6月25日までで会期終了しています……すみません……。こんな風に投稿するなら、もっと早めに書けばよかったなあ……とすごい反省しています……。写真なるべくいっぱい載せるので許してください🙇)
私の妄想に最後までお付き合いいただければ幸いです。
1.Tako アームチェア 〈深澤直人〉
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一つ目は、「The Original」の展示品選定を担当した一人、プロダクトデザイナーの深澤直人による椅子。
「早く座りなよ~」と言わんばかりの曲線美。見るからに座りやすそうで、親しみやすさや温かみを感じます。
木材を曲げて造形するのではなく、彫刻のように気を削り出すことで作られているというのも心惹かれるポイント。ダイニングに置くのは絶対これがいいです。
調べてみたら、座面にクッションがついているものもあるようです。クッションのカラーバリエーションも豊富なので、選ぶのが楽しそう。お値段は¥204,600。
2.スーパー楕円テーブル〈フリッツ・ハンセン〉
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数学者で詩人のビート・ハインは、楕円と長方形の間のような、ふっくらした図形を「スーパー楕円」と名付けました。スマートフォンのUIデザインや、スタジアムの形など、幅広い分野で活用されている形です。
その形を天板に用いてフリッツ・ハンセンがデザインしたテーブル。周りを囲んだ全員が、自然と目線を合わせやすいという利点があります。
すっきりさと温かみのバランスがすごい好みです。ちょっと散らかってしまっても、このテーブルが真ん中にあったら強制的に清潔感が出せそう。
一人暮らしの想定ですが、人と目線を合わせやすいという特徴を存分に生かせる日を夢見て、強く生きていきます。お値段は313,500円。
3.大塚製薬 カロリーメイト〈細谷巌〉
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会場を出てコンビニに駆け込めば、5分程度で手に入るであろうこちらが3つ目。言わずと知れたバランス栄養食ですが、実は優れたデザインがたくさん隠れています。
コンパクトで携帯や保存に便利なパッケージデザイン。一本がちょうど100kcalでカロリー計算しやすいこと。ブロックに開いた穴は、焼成の時間短縮のためのものだそうです。
我が家では、カロリーメイトを非常食としてストックしておくのが常識。いつ何が起きるか分からないので、早めに買っておこうと思います。商品希望小売価格220円。
4.柳宗理 キッチンツール 〈柳宗理〉
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戦後日本の工業デザインを大きく発展させた柳宗理。手がけたデザインは、鍋や包丁、食器、家具などの日用品や、橋や建造物など幅広い分野に渡ります。
そのすべてに通じているのが「使う人の視線に立って、日々の生活を豊かにし、長く使われるものを」という理念。見た目の美しさだけでなく、生活の中での使いやすさが徹底的に考えられています。
それは、実際に手に取った瞬間分かりました。ミュージアムショップで柳宗理のカトラリーが売られていたので、試しに手に取ってみました。しっかりと手の中に持っている感触はあるのに、軽くて、手になじんで、まるで持っていないかのよう。
私の理想の生活には欠かせない存在。是非とも活躍していただきたい。キッチンツールとカトラリーから、ひとまず一人暮らしで最低限必要そうなものだけ揃えようと思います。
レードルM ¥2,970
バタービーター ¥2,970
ディナーフォーク ¥935
ディナースプーン ¥935
5.ペーパーペーパービン 〈クララ・フォン・ツヴァイベルク〉
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スウェーデンのデザイナー、クララ・フォン・ツヴァイベルクがデザインした「ゴミ箱」。中と外の色の組み合わせと、リズム感のある折り目がステキです。
ゴミ箱にするのはもったいない気もするけれど、ゴミ箱こそ気持ちを明るくしてくれるようなものにした方がいいんじゃないか。こんなゴミ箱が部屋の隅にちょこんと座っていたら、嫌なことがあっても忘れられそう。
表面をコーティングしてあり、紙以外のごみを入れても汚れが付きにくくなっています。リサイクル紙を使用し、環境にも優しい製品です。2,860円。
6.ルイーザ アームチェア 〈フランコ・アルビニ〉
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直線的なデザインのなかに、細かいこだわりが光ります。イタリアで最も歴史と権威あるデザイン賞である、コンパッソ・ドーロ賞を1955年に受賞するなど、数多くの賞を受賞している椅子です。
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斜め後ろから見ても、堂々たるいでたち。座ったらすっと背筋を伸ばしてもらえそうです。窓のそばに置いて、毎朝座ってコーヒーを飲むのをルーティンにしたいと思います。297,000円。
7.LWD27 〈ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン〉
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哲学者として有名なヴィトゲンシュタインですが、建築家としての一面もありました。装飾を排したこのドアノブからも、哲学者らしい、徹底的に論理的で、禁欲的な印象が伝わってきます。
ちなみにこのドアノブ、触れる形で展示してありました。
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「ボーっとするなよ!」って言われているみたい
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実際触ってみた感想は「握りにくくはないんだけど、絶妙に違和感があるんだよな」という感じ。哲学の本を読んだ時に感じる「こちらに一切譲らない読みづらい文章を、一生懸命に読んでいたら出会えるハッとする感覚」によく似ていました。
「人間の体に合わせたデザイン」とか「癒し」みたいなものがよいとされる世の中に暮らしていると、こういう禁欲的なデザインがとても新鮮に感じられます。
生活の中に少しはこういう刺激があった方がいいかもしれない、まだ一応20代だし。ということでドアノブはこれにします。37,950円。
8.トリオ 〈アキッレ・カスティリオーニ&ジャンカルロ・ポッツィ〉
こういう、部屋のデッドスペースを活用できる、三角形のサイドテーブル的なやつ。よく見かけて便利そうなんだけど、倒れやすかったり、あんまりたくさん物が乗らなかったりして、意外と使いにくいんだよな、という印象。
でもこの天板や足の微妙な角度と位置関係。もしかしてすごくバランスがいいのでは??「オリジナル」はやっぱり違うってことか……。よし、試してみます(妄想で)。115,500円。
9.アルギュ 〈ロナン&エルワン・ブルレック〉
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植物のようなこちら、プラスチックでできていて、部屋の間仕切りとして使うものです。ひとつのパーツにつき19個の連結部があり、自由に形や大きさを変えることができます。
光や音を通すので、完全に空間を遮ることなく、ちょっとした目隠しや間仕切りをすることができます。コミュニケーションを遮断せず、圧迫感のない広々とした空間に。オフィスやカフェなどで大活躍しそうです。
家の中でも、ベッドの横に吊り下たら、目隠しになって安心して眠れそう。ってまだベッドがないですね。お値段は25個入りで14,300円。
10.「Le Sfere ≪MODEL 2109/16/14≫」〈ジノ・サルファッティ〉
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イタリア語で「球体」を意味する「Le Sfere」シリーズは、月からの光に魅了されたジノ・サルファッティによってデザインされました。(写真左上)
展示会場入ってすぐのスペースで出迎えてくれたあたたかい光。フレームの上に丸い電球が乗っかった形状をしています。シンプルでも、プライベートでも、ゴージャスで商業的な施設でも、あらゆる空間にマッチするデザイン。
ここまでに集めた個性豊かな家具たちを、優しく包み込んでまとめあげてくれそうです。お値段1,954,000円。
…………1,954,000円?????!!!約2百万!???えっ?????あっ……
さーせんでした!!!!!
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
夢見ごこちで妄想してたら、急に現実を突きつけられました……。Le Sfereは諦めるとして。ここらでちょうど100万円。
今まで揃えた「The Original」たちをおさらいしてみようと思います。
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合計999,900円でフィニッシュ!
ちょっと予算に余裕が出たので、カロリーメイトをあと2個と、ペーパーペーパービンをあと2個追加しました。
カロリーメイトは、味をフルーツ、チョコ、バニラにします。
ペーパーペーパービンは3色を1個ずつ買って、リビングに1個、キッチンに燃えるゴミと燃えないゴミで2個、置こうと思います。
いや~楽しかった。妄想とはいえ、どんな生活をしたいか、家具や生活雑貨を通して考えることができるのは、自分のことを見つめ直すいい時間になりました。
一般的な展覧会に展示されるのは、世界で一つだけの美術品や、数点しか残っていない貴重な品物。それこそ手に入れるのは夢のまた夢、ということがほとんどです。オークションで勝ち抜かなければならなかったり、値段がつけられないくらい貴重だったり。
でも「The Original」は、展示品のほとんどが入手できる工業製品。
予算を立てて、どれを手に入れようか考える、なんて遊びができるのは、工業製品として確立され、定価がきちんと定められているからです。
もちろん、美術品と工業製品を同じテーブルに乗せて議論することはできません。ですが、「貴重だから素晴らしい」の逆が単純に「ありふれたものは素晴らしくない」となるのではなく、「素晴らしいものをたくさん作るすごさ」があると思うのです。
単に形としてデザインが優れているというだけでなく、量産品として生産するためのデザイン上の工夫や、全く同じものを同じ品質で作る技術力がなければ成立しません。
そういうデザイナーの工夫や、ものづくりを支える技術力あってこその、「オリジナル」なのだと改めて感じました。
ただ、今回揃えたものだけで暮らしていけるわけでもないのも事実です。ベッドもない、鍋もない、窓にかけるカーテンもない。
「オリジナル」で揃えるのは、庶民には金銭的に厳しい部分があるなあと痛感したと共に、たくさんの「オリジナル」を知ることができて、この企画展に足を運んでよかったなと思います。
それに、今回揃えられなかった品々の中にも、きっとたくさんの「オリジナル」があるでしょう。まだまだ「オリジナル」に出会えると思うと、ワクワクしてきます。
また、私が選んだ組合せが果たしていい組合せなのかどうか。例えば「スーパー楕円テーブル」と「Tako アームチェア」を組み合わせて使うとき、自分の体に合うかどうか、実際に寸法を測ったり、座ってみたりしないと分からないわけです。
雰囲気だって、もっと統一した方がいいのかもしれません。でも、本当にいいデザイン同士は、一見どんなに離れて見えるものでも、実際に並べて見ると不思議となじんだりもする。
実際に自分の部屋に置いて生活してみたい好奇心で、ワクワクさせられます。
「The Original」の世界はまだまだ広く、深い。
「安いから」とか「すぐ手に入るから」、「新しいから」、「便利だから」というものさしだけでなく、「ものと向き合い、選び取るときのものさしはたくさんある」ということを感じた展覧会でした。
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