なないろはモヤモヤとしたグレー〈11月毎日投稿〉
1は水色2は赤色、3は黄色で4はピンク。
共感覚というものがある。人が文字や音などを認識したときに、一般的な意味や形として理解されるのに加えて、一般的には無関係とされる感覚も引き起こされるというもの。
共感覚を持っている人もいれば、持っていない人もいるらしい。私はこれがある自覚がある。「1」って見たり聞いたりすると、頭の中にふわ~っと水色が広がるような感じ。
この感覚は「あいうえお」にもあるし、アルファベットにも漢字にもあるし、「ドレミファソラシド」にもある。
なにを認識したときになにを感じるかというのは、共感覚を持っている人の中でもそれぞれ違う。話を聞いてみると「1は赤!」という人もいたりする。でもその人の中ではその結びつきはわりと固定的になっている。
私も小学校で算数を習うころには確実に「1は水色」と思っていた記憶があって、おえかき遊びをするときはそれに引っ張られたりしていた。「カラーペンで自由に色を変えて数字を書いて下さい」と言われたら、1を緑や茶色で書こうという気は起きない、水色で書くだろうなと思う。なんか、そんな感じ。
どうしてこの感覚がある人とない人がいるのか、その原因はよく分かっていないらしいのだけれど、脳のちょっとした働きの違いでそういう違いが生まれているのではないかと言われている。
共感覚は、あって得するものではないし、損をするものでもないと思っている。色や形などのイメージと結びつけて覚えられるので、学校の勉強でも暗記は多少得意、というのはあったかもしれない。
でも算数や数学の勉強をしようとすると、それぞれの数字ごとの色のイメージが邪魔をして、集中できなかったり計算ミスをしやすかったりする。
長所もあれば短所もある。優しいとか真面目とかと同じように、性格や特徴の1つとして思ってもらえたらいいのかなと、個人的には思う。
私の中で、ひらがなの「や ゆ よ」は淡くてグレーがかった青、赤、黄色である。
多分、淡い色の雰囲気は、やわらかい音のイメージから来ているのだろう。「ゆ」は「湯」、つまりお風呂から連想して赤。「3人組」みたいなところから、戦隊モノでよく出てきそうなこの3色になった気がする。「や」の方がクールな印象の青で、「よ」の方が親しみやすい黄色かなあ、みたいな。
意識的に「これはこの色にしよう」と決めたわけではなく、自然といつの間にかそうなっていた。だからその色になった理由は自分でも定かではないのだけれど、自分の身の回りのことから連想して、自分としてしっくりくる説明をするとすれば、そうなるかなあ、というだけの話。
BUMP OF CHICKENの「なないろ」は「闇雲にでも信じたよ」という歌詞から始まる。次の段落では「やじろべえみたいな正しさだ」と続く。
「や」という文字が段落の最初に連続して置かれていて、なんとなく印象に残る。「や」は私の中では青みがかったグレーだ。今にも雨が降りそうな、どんよりした曇り空のイメージに近い。「なないろ」という言葉の、鮮やかで色彩豊かなイメージとはてんで違う。
いや、作詞した藤原さんが私と同じ共感覚的結びつきを持っているとは思わないし、藤原さんが共感覚を持っているのかどうかという話も、聞いたことがないので分からない。
これはあくまでも私の勝手なイメージでしかないので、それによってなにか曲に込められた意味が紐解けるとかそういう話ではない。けれど、大切な違和感として私の中に残っていたので、ちょっとお話ししたいなと思った。
で、ちょっと前に色彩検定を受けたときの知識を掘り起こして考えてみたのだけれど、そういえばグレーは「いろいろな色がまんべんなく含まれている色」だったなと思い出した。
このグラフの横軸は光の波長を表していて、縦軸はそれぞれの色が、どの波長の光をどれくらい反射しているかを表す。光自体に色があるのではなく、人の目で知覚するときに、電磁波の波長の違いが色の違いとして認識される。
つまり、グレーの光を見ているとき、目に「グレーの波長」が届いているのではなくて、赤や青や緑、いろいろな波長の光が混ざった状態で届いていて、それが目や脳で処理されたあとに「グレー」として認識しているということだ。
白と黒、そしてその中間のグレーは、いろいろな波長の光がまんべんなく混ざっている(黒は光をほとんど吸収するが、全ての光を吸収する”完全な黒”は地球上には存在しないので、どんなに真っ黒に見えても多少は光を反射している)。
この「や」という言葉のグレーは、実は色とりどりの光がごちゃまぜになった色なのだ。どんよりモヤモヤしているグレーをじっと見つめたら、心の中のなないろに気付けるかもしれない。
サビのこの歌詞を読んだら、いろんなことがぽこぽこっとはまって、私の勝手な妄言もあながち間違っていないんじゃないかと思われてきた。音楽と言葉って、本当に面白いなと思う。