五胡十六国のやべーやつ 筆頭編
こんばんは。
「五胡十六国入門」です。
貴重な休みをかぐや姫は告らせたいで盛大に潰しました。後悔はしてない。天才かよ赤坂アカ。
昨日のテーマはこの時代のトップネームを紹介しようと同時に、トップふたりの知名度が突き抜け過ぎちゃってるから除外しますという宣言でした。キムタクに君臨されてたら一生ベストジーニスト大賞が変わんないでしょ? 的なアレです。
Aクラス 時代の牽引者
というわけで本日はその埒外を除いて時代を牽引した人物を紹介します。Aクラスの三人は、誰もがこの時代の時代性を象徴すると言っていい人物ですが、はじめの一名は約Sクラス。たださすがに埒外二名に較べると落ちるので、こちらに据えました。
A-1 鳩摩羅什
中国仏教界に燦然と輝く金字塔。仏教経典翻訳界における無双チート。それがこの鳩摩羅什。西方出身で、カタカナに直すとクマーラジーヴァ。何がすごいって、中国の仏教経典のベースを作ったのはこのひとと呼んでもいいくらいの翻訳貢献度。仏教は後漢の時代に伝来してきたんですが、もとの経典は当然インドの言葉で書かれていました。ただ言語の性質があまりにも漢語とかけ離れているせいで、歴代の訳僧たちはまともに漢語に翻訳できなかった。もちろん叩き台を作った功績はありますが。そこに登場、鳩摩羅什さん。「あれ、ぼく何かしちゃいました?」とばかりに各経典をバンバン漢語化しちゃいました。まぁ本人は「いや正直漢語化無理。そのメンタリティまともに伝え切れん」とか言ってたんですけどね。
西域で活躍していたところを最初西涼の呂光にかっさらわれて踊り子に犯されて、その後後秦の姚興にかっさらわれて踊り子に犯されました。ちなみに鳩摩羅什の父も高僧だったんですが西域の王にかっさらわれて王女に犯されています。どうなってんだこの一族の女運。
ちなみに煩悩多き弟子からは「うらやましいですー!」とかストレートに言われたので、鳩摩羅什さん、ニッコリほほ笑みながら針山を指さして「正直アレ丸呑みしてる気分だが?」って答えたそうです。
A-2 石勒
羯族にして、永嘉の乱以降荒れに荒れまくった華北をはじめに統一した王。奴隷出身で底辺から皇帝にのし上がった男とか言われていますが、普通に一部族長の息子なので人を統べるノウハウははじめから持ってます。奴隷になったのはあくまで西晋皇族の司馬騰による奴隷狩りを食らったせい。奴隷時代もむしろそのずば抜けた覇気で人々をバリバリ心服させています。
とは言っても無敵の快進撃をするタイプではなく、むしろなんでオメーそこで破滅してねーんだレベルの大敗を平然とかましながらも、最終的に勝つ、みたいな一番厄介なタイプ。ここについてエブリスタにある晋書本訳作品「淡々晋書 甲」では、石勒を「HP1のまま戦い続けるアンデッド」と呼んでいてゲラゲラと笑ったものです。
劉淵の配下将として活躍した、という形にはなっていますが、劉淵に帰参した段階でいきなり王位をもらっているので、服属と言うよりは同盟という形だったのでしょう。なので同盟相手である劉淵が死ぬと徐々に距離をあけ、劉聡を経て劉曜の代に至ったところで完全に決裂。決戦の時の劉曜がだいぶマヌケに書かれているので締まりませんが、劉曜をラスボスに据えてその戦いの軌跡を示すと、相当イケてるお話になるような気もしているんですよね。まぁその場合東晋からくる祖逖については見えないふりさせてやってください。石勒、普通に祖逖にビビったので。
A-3 苻堅
ちょっと検索すると「乱世平定に失敗した理想主義者の悲劇」とか出てきますが、まぁ正直自業自得だろお前って感じがします。前秦傍系皇族として生まれ、当時の君主が暴君だったから討伐して王位に就いたら盛大に謀反を喰らい、そいつを平定、前燕を打倒、周辺諸国を服属させたところでだいたいの近親者から猛反対を喰らっていた東晋討伐に動き、大敗北。淝水から戻ってきたあとには自らの失策から盛大に離反祭を喰らい、ちょくちょく自らを諫めていた近臣に対して「お前の諫言を聞かなかったばかりに……」と謝罪するくせに舌の根も乾かぬうちにまた諫言を無視して失敗。昔犯した鮮卑の皇族が復讐心に燃えて攻めかかってきたところに「戻ってくればまた愛してやるのに」とかマジKY。そんな鮮卑に苦しめられたのに怒り、戦って獲得した鮮卑捕虜二万を穴埋め。出所不明のお告げを信じて五将山に出向けばまんまと姚萇に包囲されて捕まる。
いや、一応ね、この人が覇権を取れたのは大宰相たる王猛がいたから、彼自身はアレ、という説もあるのです。けど王猛自身は前燕討伐までしか関われておらず、その後の華北統一達成は彼の功績なのです。間違いなく、すごい王様なのです。
けど史書を読んでると、そのポンコツさがすごくてね……周辺エリアの民からは愛されていたようなんですが、まぁ君たちあのポンコツぶり目の当たりにしてないしなぁ……と思わず同情してしまうのです。
以上、筆頭人物編をお送りしました。明日は重大人物編、司馬衷、劉淵、王導、慕容垂、仏図澄の紹介をお送りします。