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カルヴァドスで飲むカルヴァドス

ドーヴィルやトゥルーヴィルはカルヴァドス県に位置している。
そう、りんごの蒸留酒カルヴァドスの産地だ。

鳥取県には湯梨浜という町があって、湯(温泉)と梨と浜(砂丘)を売り出そうということで、平成の大合併のときにこの名前になった。

佐賀県では湯陶里市(温泉と陶器の里)が構想されていたし、伊豆の国市や南アルプス市は実際に誕生した。
長野県が田中康夫知事のときに信州県に改称するという話もあったっけ。
空港名のキラキラネームはいつの間にか定番になった。

観光の論理が、生活や文化や歴史を駆逐していく例だと思う。

カルヴァドスでは、酒の名前が地名になっているのではない。
もちろん、その逆だ。

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さすがに本場だけあって、カルヴァドス専門店というものまである。
眺めているだけで酔いがまわってきそうだ。

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生まれた年のヴィンテージものを記念にいかが?
この街に定着しているカルヴァドス文化の奥深さを感じさせる。

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ブルゴーニュやボルドー、ポルトには行ったことがある。
素晴らしい旅の思い出だ。
シャンパーニュには近々行こうと思っている。
スコットランドの蒸留所や、ベルギーのオルヴァル修道院に行くことができれば、酒の産地を巡る僕の夢は、ひととおり果たされたことになるだろう。

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カルヴァドスを覚えたのはいつだっただろうか。
東京にいるときだったか、福岡に行ってからだったか。

福岡でよく連れて行ってもらったフレンチで、2人でシャンパン1本、白ワイン1本、赤ワイン2本をあけて、そのあともポルトかソーテルヌをちびりと飲んで、もうふらふらという状態でバーに駆け込んだときに、カルヴァドスならまだ飲めた。
まだ飲めそうな気がした。
こちらが倒れる前に店が閉まった。
店がもう少し遅くまで営業していたら、体がもたなかっただろう。

たまにバーでご一緒したソムリエ氏は、カルヴァドスをトニックウォーターで割るのが好きだと言っていた。
真似してみたけれど、好きにはなれなかった。
もっぱら炭酸水で割って飲んだ。

酒は、人に教えられて覚えていくものだと思う。
ほとんどの酒は、年長の人たちから注いでもらって、自分のものになった。

ひとつひとつの酒には、それを教えてくれた人、注いでくれた人、一緒に飲んだ人との大切な記憶がついてくる。
今はいない人や、もう会わなくなった人たちも含めて。

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フランスではストレートで飲むことが一般的なのだろう。
強いままの酒が運ばれてきた。
横に置いた炭酸水を交互に口に含みながら、ゆっくりと飲む。
やはり僕には、日本で覚えたソーダ割りがあうようだ。

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