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【Le Cotte Rôti】チョコレートのタルトはおいしかった。
リヨン駅からサンマルタン運河、サン・ルイ島、シテ島と歩き続け、ポンヌフを渡る。
ルーヴルを背に、市庁舎を右手に見やり、マレ地区を抜けてバスティーユ広場あたりに辿り着く。
もうかれこれ3時間も歩きまわっている。無理をしすぎたかもしれない。
いったんホテルに戻ろう。
事前に調べて気になっていたCotte Rôtiの前を通る。
開店前だがすでに灯りは点いていて、スタッフが慌ただしそうに店内を動き回っているのが見える。
さあ、今日も忙しくなるぞ、といった調子だ。
なんだか頼もしい。
よし、今宵はここにしよう。
https://lecotteroti.fr/#view-r1
参考にしたのは、もちろんミシュランガイドだ。
店選びにおいて、他にどんな選択肢が?
ネットで予約するには直前すぎたので、ホテルのフロントから電話をかけてもらう。
これが一番確実だ。
「月曜日だから休みかもしれないわよ~」
フロントの女性がいたずらっぽくつぶやく。
確かに月曜日に休みの店は多い。市場が閉まっているからだ。
日本なら水曜日と日曜日。パリは月曜日か。
しかし店が開いているのを僕は知っている。
なにせさっき確認してきたばかりなのだから。
案の定、電話がつながる。
空席ありとのこと。
「何時の予約にするの?」と尋ねてくるフロント係に、
「19:30でお願いします」と即答。
彼女は目を丸くしながら自分のアップルウォッチを見せてくる。
「今もう19:16よ。ここから近いのね?」
ここから5分もかからないことを、僕は知っている。
何から何まで計算づくみたいでなんだか後ろめたく思えてきた。
市場からCotte通りを少し下ったところに店はある。
Cotte通りだからCotte Rôtiか。
もちろん、ローヌ地方の赤ワインCôte- Rôtieをもじっているのだろう。
市場の周りには庶民的なレストランが立ち並んでいるけれど、この店だけはどこかposhだ。
前菜は、卵料理、イワシのフリットなどと悩んで、牛肉のタルタルを。
ケッパーとアンチョビソースが酸味を利かせている。
まあ、これはこれで、普通においしいのではないだろうか。そういう味。
メインは鶏、仔羊、牛などのなかからDauradeを選ぶ。鯛ですな。
オレンジ色をしているのは人参。
白っぽいクリームはココナッツ・レモンだとか。
鯛の上に所在なさげに乗せられている貝がとてもおいしい。
すごく新鮮なのだと思う。この貝をもっとください。我に貝をもっと!
鯛のことは聞かないでほしい。
そりゃあおいしいですよ。
でもそれだけ。
素材の魅力がどこかに飛んでしまっているし、どうも旨味に欠ける。
前菜といい、メインといい、酸っぱい感じのクリームソースがどこか似通っていて、ちょっと食べ飽きてしまう感じ。
そもそもフランス語のメニューを解読するだけで相当の労力が必要なうえに、全体のバランスまで計算してオーダーを組み立てる周到さは僕にはまだない。
デザートまで頼むかどうか迷ったけれど、えいやっとチョコレートムースを注文する。
うん、これはなかなかおいしい。
生っぽい感じだけど、しっかりとチョコの味がして、でもそんなに重たくもない。
客層は50代が中心のようだ。
きっといい店なのだと思う。
日本人が魚料理の出来ばえだけでフレンチを評価してはいけないのだろう。
鯛をおいしく食べるならもっと他にいい方法があるよ、などと言うのは野暮に違いない。
次にこの店に来ることがあれば、メインは肉を選ぶことにしよう。
そうだ、Côte- Rôtieを飲みに来ないと。