【感想】グランギニョル【はじ繭2020第2夜】

第1夜 TRUMP の感想はこちらです。グランギニョル見た時点で一部疑問が既に解決しているのはご愛嬌ということで……

相変わらず何も予習していなし、前夜に見たTRUMPと見たままのグランギニョルからしか何もわかっていません。
長い裾をはためかせるのが大好きなので見ていてずっと楽しかったです。

○第1夜時点での疑問
えーっと……なんだ、とりあえずダリちゃん、ウルの出生に関して冤罪かけて悪かった。
いやまあ確かに”めっちゃ貴族でめっちゃすごくてめっちゃえらい”ダリ卿が、なんで生まれながらに悲劇が約束されてしまう合の子ダンピールが生まれるような行動に及んだのかは疑問ではあったのですが……。
まさかラファエロとウルは腹違いですらなくて、なんならアンジェリコとウルの方が異母兄弟で、アンジェリコはフラ家の血を引いていないとは。なんて複雑な家系図してたのTRUMPの登場人物たち。
でも本人たちにその意識が全くなかったあたり、父親たちはこの複雑で後ろ暗い出生を息子たちには悟らせず、立派な貴族の子息に育て上げた証左なんでしょうね。

○原初信仰とグランギニョル
どこかでいつの間にかとびっきりの悲劇を捧げたらTRUMPに通じるとかいう話になってるのが最大の悲劇だと思うのですが!!?
前夜に見た感じだと、吸血種の神様全然そんなこと興味なさそうやったぞ!!!
どの社会でもカルトってのは怖いですね。
拐かした少年少女をヤク漬けにして人体実験とは……。
薬打たれたダリは箸が転んでも面白い年頃みたいになってるし

○ダリとゲルハルト
「好きでデリコ家に生まれたのではない」「僕は君になりたかったのかもしれない」
彼らが、繭期は抜け出したものの完全に大人になる覚悟が決まりきっていない、いわばある種の”モラトリアム”を終わらせる物語でもあったのかな。それが繭期(≒思春期)への強制退行を過程にするの、面白いですね。
ゲルハルトがフリーダを討つ結末、ダリへの優しさとも思えるし、ダリに死なれたくないという意味ではゲルハルトのエゴともとれる。そしてこの時点でゲルハルト自身は既に自分の妻を失っているんですよね。いくらかは自分の所業も原因となった上で。
自らが受けた呪いを呪っていた彼らが、その呪いを受け入れ、他者の遺志や運命まで背負って立つ姿、美しかった。最後の一礼がとてつもなく綺麗。
なんかもっとたくさん言いたいことがあるのですがもはやまとまりません。ノブレス・オブリージュ……彼らは確かに、どうしようもなく、気高い貴族だった。

○春林と歌麿
春林さんのあのスタイルなんなんですか? 長い羽織がめちゃくちゃ映える……。あとその顔でダブルピースしないで。
人間と吸血種の話でもあったこのストーリーの語り部をダンピールである春林がつとめるの、適任ですね。思えばTRUMPもソフィの回想の体とっていましたが。
ダンピールと元人間の吸血種とかいう、なかなか過酷な運命と過去を背負っている設定だったと思うんですが、めちゃくちゃ逞しく爽やかでカッコいい。
「噛め!!!!」「また!!?」ってなんだこのバグをついたみたいな戦術は。でもイニシアチブにめちゃくちゃにされてる他の吸血種の姿を見る限り、このカジュアルに噛んだり効力失ったりする中途半端さ、もはやアドな気がしますね。ドーピングに使えるんだ……。
保護者だ犬だと言っていましたが、最後歌麿がマルコに討ち果たしたのは素直に感嘆しました。ダリ、ウル(子)、ゲルハルト、等々彼にやらかされた人たちは複数人いましたが、元々ダミアンに因縁があった歌麿の手で葬られる筋書き、思った以上に腑に落ちた。
この先どこかでまたダリと再会して凸凹チーム再びみたいな機会もあったのでしょうか。達者でな……。

○オズ、アンリ、キキ
カルトの被害者たち。
のみならず、彼らの足元には実験に耐えきれず発狂死した夥しい子どもたちの死体が積み上がっているんですね。
終わらない繭期の中でお互いの存在だけはかけがえのないもの。その愛はきっと繭期のまやかしではない。
暗色の衣装を纏っていた大人たちに対して本当にまるで繭みたいな純白の衣装、対比も鮮やかだった。
あの予知能力、自分の未来も見えたのかな。だとしたら自分は助からないことを悟っていたのでしょうか。
キキのその後はどこかにたぶん続いて……いるんですよね?

○フリーダ、スー
最初はあわやダリを含めた三角関係にでもなるのかとひやひやしていたのですが、ダリに対しては冤罪だったしフリーダさまはめちゃくちゃ人格者だった。重ね重ねすみませんでした。
フリーダさま、デリコ家を支えるダリのパートナーとしても優秀だし、自分の信念を社会に通すことにも積極的だし、本当によく出来た方ですね。
そしてスーも強くてまっすぐな人だった。デリコ夫妻との絆に説得力のある強さでした。
フリーダとスーのお互いを思い合うあまりにも美しい交流にやられました。
我が子たちをダリに託して息を引き取る2人、ダリにとっては愛であり呪いだなあ……とは思ってしまったけれど。

○ダリと総括
イニシアチブを握られ自分に刃を向けるフリーダを制したのはゲルハルトで、マルコ(ダミアン)を討ったのは歌麿と、ダリが手出しできない中で最後結末へ向かっていった印象があって、確かに”グランギニョルを見届ける”ことになってしまったなあ、と。
この悲劇を見届けて、目に焼き付けて、それを背負って立派な貴族として歩んでいくのですね。なにかにつけて色んなひとの口から「呪い」という言葉が出ていたので、呪いの中で凛と立つラストという印象が本当に強い。
しかしTRUMP既に見返したいけど見返したくないしなんなら忘れてしまいたいこの感じはなんなんでしょうね。

負けるな、負けるな、負けるな―――

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