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あなたとぴりか|白って、こんなに表情豊かな色だったんですね!

昨年末の企画「あなたとぴりか」にご参加くださった皆様、
改めまして、ありがとうございました!

私達が想像していたより、はるかにたくさんの作品をお寄せいただきました。
しかも、個性豊かな力作ぞろい。
運営一同への、素敵なクリスマスプレゼントになりました。

それでは「白」のまとめ記事です。

アドベントカレンダー|マー君さん

いちばん最初にいただいた、マー君さんの物語。
「正統派ホラー来たぁ!!!」と、小躍りしたくなっちゃいました。

正統派の物語には、王道だからこその、個性的なアクセントが必要だと思います。
サンタクロースの服がどうして赤いのか。このホラー最大のスパイスは、やはりこれでしょう。
ピエロが残忍な罪を犯す怖さに通じる、正統派にぴったりの香辛料。すごく良く効いていると思います。

そして私は、フェイシアのこの言葉で一気に怖くなりました。
「内臓は後でわたしがいただくからね」
しかも、料理長の耳元で囁いたんです……癖になりそうな怖さ。
その彼女が「最後の獲物」を訪ねていくところで終わるのが最恐、じゃなかった、最高です。
マー君さん、怖くておもしろい、王道のホラーをありがとうございました!

ロスト・リアリティ|とき子さん

誰にも思いつかないような、とき子さん唯一無二の世界。
その眼に、すべての人間が白く美しく見えるフィルターをかけられた、ふたりのカメラマンの物語です。
それをラッキーだと喜ぶ健吾と、憂いて元の世界を探す哲也。
同じ夢を追うふたりの、まったく正反対な反応が、物語に立体感を生み出していました。
そう、ロスト・リアリティが、とてもリアル!

写真や鏡など「世界を映しとったもの」にだけ、元の世界が見えるというのも、主人公のもどかしさが垣間見える巧みな設定でした。
実際には、写真は簡単に加工できますし、痩せて見える鏡なるものも存在します。ここが面白いところですよね。
果たして、このフィルターはフェイシアのイタズラなのか……解決編をぜひ書いていただきたいです。
とき子さん、どうぞよろしくお願いします!

そのひたすら真白き世界にて|KaoRu IsjDhaさん

KaoRuさんの、どこまでも白く壮大な物語。
読み進むほどに、その世界の白さと奥行が増していく。そんなスケールの大きさがありました。
白く不思議な空間で、フェイシアは人間の汚さを語り、主人公の哲也は真っ向から彼女の言葉を否定します。
その叫びは、汚れた現実の世界で一生懸命生きる、私達の想いに通じているかのようでした。
それを聞いたフェイシアの瞳からは、色が抜け落ちてしまいます。
その真っ白な目が、哲也の強い感情を、より鮮やかに彩っているように思いました。

哲也が現実に戻ったとき、駆け寄るふたりに、とても温かい色を感じます。
だからこそ、最後の一文にものすごいリアリティがありました。
KaoRuさん、壮大な世界をありがとうございました!

白い夢|ぱんだごろごろさん

妖艶なモデル・フェイシアの、実はとても可愛らしい素顔。
白と言う冷たい色が、淡いピンクに染まるような、ぱんだごろごろさんのキュートな物語です。

「ヌード写真なんて(中略)もっと胸の大きい子じゃないとだめでしょ。私なんて、ぺったんこなんだから」
もっともフェイシアが可愛らしく感じられたのは、この場面でした。
そして、ぺったんこなんてことはありませんよ、と言いかけて踏みとどまる哲也の反応。
フェイシアへ芽生えかけた恋心と、ヤクザのお嬢さんだったことへの戸惑いが感じられて、つい口元が緩んでしまいます。
娘がヌード写真のモデルになることを憂う、パパの気持ちも愛らしいですね。
ぱんだごろごろさん、心を温めたいときに読みたくなるような、素敵な物語をありがとうございました!

始まりのクリスマスイブ(或いは祝福の13日の金曜日)|しめじさん

「金」からつながり「緑」も溶け込ませた、色が重なる独特の世界。
全色コンプリートを達成した、しめじさんの個性がキラリと輝く、怖いながらもスカッとする物語です。
フェイシアの正体が、まさかあの人だったなんて!

消したい存在を消し、名前と顔を変え、美しい悪魔へと変容していくフェイシア。
健吾は「こいつなら何でも言いなりにできる」。
緑のあの人は「使い捨ての計画実行要因」。
彼女が起こした出来事も怖いですが、人間をこんなふうに捉える冷淡さは、それ以上に恐ろしいです。
クリスマスに、そしてその後に白い悪魔が考える「計画」。
未来に連鎖していく怖さが、だからこその快感!
4色含めて、しめじワールドにのめり込んでしまいました。
しめじさん、魅惑的なフェイシアをありがとうございました!

天使のくちづけ|みなとせはるさん

絵画「死の天使」の、天に召される女性がまとった服の白。
黒い服を着た、顔が見えない天使の翼の、細い光に浮かぶ白。
この物語の美しさを堪能するために、ぜひ「死の天使」を見てから読んでいただきたい。本当にそう思います。

ある目的をもって、自ら「死の天使」と化したフェイシア。
死へのいざないは、とても官能的に、美しく繰り広げられます。
しかし、その舞台は、古い電球に照らされた築三十年の木造アパート。
光と影、善と悪のように相反するこの対比が、逃れられない死を際立たせ、私を物語へ引き込んでいきました。
「フェイシア」という名前の意味を活かした手法も、さすがだなと感動します。
実は、みなとせはるさんは、私自身が大ファンである作家なのです。
彼女の卓越した世界を、ぜひ皆様に読んでいただきたいと切に願います。
はるさん、素晴らしいクリスマスプレゼントを、ありがとうございました!

スノーノイズの刹那|こーたさん

不思議な物語のはずなのに、実話を読んでいるかのような現実味。
だからこそ、最後の台詞には、私自身へ向けられたかのような重さがありました。
元々、実力のあるこーたさんが「一段上のレベルに上る刹那」を読ませていたように感じます。

フェイシアに近づいて行った健吾が、不思議な現象で亡くなる、あるいは殺されるのは、明らかに超常の力。
それが不自然どころか、実話のように感じられるのは、こーたさんがきちんと仕掛けをしていたからだと思います。
「俗に未解決事件と呼ばれている実例の多くは、その捜査過程でおよそ論理的説明が困難な事象に突き当たり、後に事件の立証が不可能と結論付けられた場合がほとんどらしい」(原文のまま引用)
この仕掛けを挟んだことで、一気に立ちあがってくる哲也の恐怖感。
来週、自分にも起こるかもしれない……そんなふうに感じてしまいました。
こーたさん、魅力的な男性には近づかないようにします。ありがとうございました!

本当の愛|はそやmさん

はそやmさんの、あなぴり4部作のラスト1色。
実は、他の3色を読んで「どうやってスイーツ探偵とフェイシアを結ぶんだろう?」と、わくわくしていました。
おぉぉ、こう来たかぁ! というスカッと感を味わうために、他の3色の後にお読みいただきたい物語です。

見るものを虜にする、フェイシアの凶器を含む視線の理由。これがまず最高です。
彼女が走り出した先にあるのは、もちろんあの探偵のところ。
そして、そこに飛び込んでしまった新進気鋭のカメラマンken-goは、やがてその姿を失ってしまいます。
そう、失ってしまうんですよ!
「僕が健吾を見たのは、それが最後だった」というわけです。
年始にぴったりなその理由を、ぜひお確かめくださいませ。
はそやmさん、爽快な「世界のぶっ壊し」気持ち良かったです。ありがとうございました!

透明な息と灰色の空の間に|はらつくねさん

哲也と健吾とフェイシア、3人が混ざり合っていく不思議な物語。
はたして、どんなふうに混ざり合っていくのか……。
はらつくねさんの「白」は、絵の具を置いたパレットのような世界です。

健吾を待つ哲也の前に現れた、変わらず美しいフェイシア。
前半であれほど彼女に興奮した哲也ですが、実は……という仕掛けが、二転三転していく流れに惹き込まれます。
そして、色を変えながらコロコロと転がる仕掛けは、致してしまった後、さらに不思議な光を放ちます。
そして、重くも軽やかな、相反するふた色が混ざり合った最後の一言。
はらつくねさん、ミラーボールのように楽しくきらめく物語を、ありがとうございました!

Cats Rule the World Ⅰ|めろさん

「あなぴり」全色コンプリートのめろさん。
それぞれの物語を書くのではなく、まったく異なる4色の世界を、見事なひとつのオーナメントにつなげてくださいました。
白は最初の1色です。

4色でひとつの物語になるので、1色のみのコメントというのは違う気もするのですが、あえて白のみで書かせていただこうと思います。
起承転結の「起」の部分でありながら、フェイシアを追って行った健吾がどうなったのか、白の起に対する「結」が明確に描かれたパーツ。
「ちょっとぉ、健吾がフェイシアとどうなったのか、4色読まなきゃわかんないの?」というストレスを感じることなく、しかも、しっかりと物語の冒頭に徹していました。
それは、前半の書き手として満足すると同時に、読み手として次の赤へと指が動く、卓越した手法だったと思います。
めろさん、素敵なオーナメントをありがとうございました!

白い悪魔の誘惑|大橋ちよさん

4色を違うジャンルにかき分けてくださった、大橋ちよさん。
白はダークファンタジーです。
クスっと笑える部分もある、でも確かにダークな世界。白に混ぜ込まれた、黒のさじ加減が絶妙で、ベアトップワンピースをまとっていたフェイシアが、生き生きと浮かび上がるように思えます。

住宅街にぽつりと佇む小さな雑貨屋、小さな机に乗った水晶玉、川沿いの緑地内にぽつりと存在する物置のような建物。
何気なく描かれる風景が、サキュバスという悪魔の存在に影を与えて、奇想天外ながらリアリティある物語に仕立てていました。
哲也は、それで哲也はどうなるの? と、ドキドキしてしまいます。
そして、そのドキドキをひっくり返すようなラストが、本当に衝撃的でした。
大橋ちよさん、ダークファンタジーな世界をありがとうございました!

創作『消えた友だち』|バジルさん

バジルさんのフェイシアは、純真さと残酷さが混在するモデルの女性。
そして哲也は、まっすぐさと嫉妬心に挟まれたカメラマン。
危うい二人が、感情の落としどころを見つけた物語です。
でも、その落としどころがまた危うくて……。

前半では、本能に振り回された感のある哲也ですが、この後半では感情に振り回されています。
その感情の移り変わりが、見事な読みごたえになっていました。
特に、行間から伝わってくる「雄介への嫉妬」、哲也の最後の行動に、自然な意味と納得感を添えてくれます。
果たして、最後の哲也の行動により、健吾は帰ってくるのでしょうか。そして、雄介は……この続きを想像するのも楽しいですね。
バジルさん、キュートとダークが混ざり合った物語を、ありがとうございました!

🎁

今回の「あなたとぴりか」では、たくさんの物語を届けていただきました。
様々なジャンルの、様々な物語は、私達にとって大切なプレゼントです。
この嬉しさを忘れずに、2023年も楽しいことを企画していきたいと思います。

ご参加くださった皆様、お読みくださった皆様、本当にありがとうございました!

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