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春ピリカグランプリ、すまスパ賞発表!

111作のゆびが集まった、ショートショートの祭典、春ピリカグランプリ。いよいよ本日の午後、主催のピリカさんより、個人賞が発表されます!
先立ちまして、審査員がみんなで選ぶ「すまスパ賞」を発表いたします。

👑モギー虎司と大きな鳥・Nyaajima Hikaru(ぼんらじ)さま👑

📕講評・橘鶫📕

 とにかく登場人物のひとりひとりがくっきりと印象に残る作品、というのが最初に読んだ時の印象だ。
 それはひとえに、過不足の無い小さなエピソードの積み重ねによるものだと思う。1200文字の中に、決して窮屈に感じさせない丁度良さで、三人分の人生が詰まっている。そして中でも印象的なのは、なんと一度も実体の出てこない「母」なのである。
 所謂風来坊で、けれどどこか憎めない「父」は、実際に一緒に暮らすには大変な相手だろう。その父と一緒になり、出ていかれ、ひとりで息子を育てて、父の最期の雄姿を成人した息子に見せる。裏に相当大変な人生があったことは想像に難くないが、その母の印象は常に頼もしく気丈で、朗らかですらあり、その笑った顔さえ想像できるようだ。

優太は母親に真意を確かめなかった。きっと割り切れない感情は人生におけるタネみたいなものだ。とにかくモギー虎司は最期に息子の前で一世一代の手品をやってみせた。

 物語をきゅっと引き締めると同時に主人公である優太の魅力を深めているのは最後の一節だ。
 割り切れない感情は誰にだってある。それを話すも話さないも、訊くも訊かないも自由。誰かの人生という手品そのものを見て心揺さぶられるのもよし、タネを知って感動するのもよし。手品だと思えば、色々なことが少し楽になるかもしれない。この物語そのものが、世界の見方を変えてくれる手品のようだ。

 それから…
 鳥好きとしては触れずにはおられまい。タイトルの「大きな鳥」、冒頭に出てくる「鳥のモニュメント」、そして比喩として出てくる「大きな鳥」。
これは私への挑戦…いや、挨拶状だろうかと少々自意識過剰気味に思ってみたりもした。そして私は何度も物語を行き来して、鳥の謎解きに挑むことになる。
 虎と鳥と言えば最初に出てくるのは「鵺」だ。妖怪でもあるが、よく正体がつかめぬものの例えにも使われる。どうだろう。これ自体がマジシャンという存在とも、虎司のイメージとも若干重なる。
 しかし私が最終的に感じたのは、この「大きな鳥」は人生の波のようなものなのだということだ。
 そう思って読むと、最初の「鳥のモニュメント」からして象徴的である。これから起こる出来事が、優太の人生を新たなステージへと引き上げる。父親である虎司は大きな鳥とともに現れ、また去っていくように優太には感じられるのである。優太はこの大きな鳥は逃すが、無事に鳥の残していった人生のタネを手に入れる。
 鮮やかな手品のような作品に、大きな拍手を送りたい。

👑ひとさし指の世襲・ヱリさま👑

📕講評・猫田雲丹📕

ららぽーとに辿り着きたいのに、ひとけのない鳥取砂丘がどこまでも広がっている。

なんと奇怪な(いい意味で)冒頭文でしょう。
どうしてららぽーとなのか?
どこまでも広がっているのなら、
それはもうただの砂漠じゃないのか?
この一文だけで、もうどうしようもなく
引きずり込まれます。

そのまま作中で描かれるのは、
まるでシュルレアリスムの絵画のような風景。
非現実的で独創的な作品世界に
すんなりと浸れるのは、
作者の確かな表現力によるもの。

とにかくその世界観が圧倒的で
全応募作品中、飛びぬけて異彩を放っていました。

電源を入れると大音量でオールナイトニッポンのイントロが流れた。パーソナリティーが一言も喋らないせいで、今日が何曜日なのか分からない。

風もないのにむくむくと鯉のぼりが膨らんでいくので不安な気持ち。

理不尽極まりない砂丘の中で出会う、「私」と女。
鯉のぼりにおける緋鯉は母なのか、違うのか。
そんな普遍的な問答の中で、
「私」は女の正体を思い出します。

脈絡のない単語が羅列されているようで、
それらが自然と「ゆび」を想起させ
「私」を導いていく展開。

ともすれば難解な印象をも与えうる作風を、
母と子という身近で根源的なテーマでまとめ上げ、
爽やかな読後感を残す手腕。

「いつまでも浸っていたい」
そんな風に思わされる、
作者の持つ独自の世界観が巧みに表現された
心地の良い名作です。

ちなみに
思わず調べてしまいましたが、
鳥取にららぽーとは無いそうです。

👑アルファ博士のピアノロボット・はねの あきさま👑

📕講評・さわきゆり📕

まさに人工知能が世間を騒がす昨今、ストライクゾーンど真ん中の物語です。主人公は、ロボットに関するふたりのスペシャリスト。天才のアルファ博士と、専門家のベータ博士です。

人型ロボットを開発する、アルファ博士はこう言います。「人の営みを模倣してこそ、人類に貢献できるロボットが生み出せる」それに対して、ベータ博士は真っ向から反論したのです。「人にできないことをするのがロボットだ。指は百本でも二百本でもいいのだ」火花を散らし合うふたりは、テレビ番組の企画の中で、論争に決着をつけることになりました。

対決方法は、それぞれのロボットによるピアノの演奏です。アルファ博士の人型ロボットに対し、ベータ博士のロボットは、無数の指が生えたムカデのような形。両者とも、それはそれは見事な演奏を繰り広げ、勝負は引き分けとなったのです。

しかし、人型ロボットは演奏後、ある予想外のアクションを取りました。足の小指を椅子の角にぶつけて、うずくまってしまったのです。なんと、ロボットは教師のピアニストの演奏だけでなく、つまずいたことまで学習していたのでした。

この「足の小指あいてて事件」により、ロボットたちは住み分けをするようになりました。ムカデ型はオフィスに、人型は酒場に。その関係は、百年の時を経てもなお続いていくのです。

◇◆◇

この物語を読み終えたとき、あの問題の解決策がここにある、と思いました。いったいどうやって、人間とAIが共存していくのかという、現代社会の大問題です。ムカデ型はオフィスに、人型は酒場に。AIが人々の仕事を奪うと、ニュースサイトや報道番組でよく言われていますが、適材適所で住み分ければ良いだけの話なのですね。

「アルファ博士のピアノロボット」は、現代社会に生きる大人たち、とりわけ事務職に携わる人々の不安を取り除いてくれる物語でした。まるで、雨雲を取り払ってくれる、やわらかい風のように。

もちろん、それはAIと人間との話だけではありません。多様性というきれいな言葉で世の中を覆っても、日本人はやはり、周囲と同じであることを求められがちです。しかし、できることや得意なことは、みんなそれぞれ違うもの。この物語を読むと、実は「それぞれ違う」ということこそ、大切なのだと気づくことができます。

もしも他人と自分を比較して、落ち込みそうになったときは、ぜひこの物語を読んでみてくださいね。

👑誰モガ・フィンガー・オン・ユア・トリガー・福永諒さま👑

📕講評・穂音📕

 冒頭から、大好物の香りが漂っております。
 殺し屋? 私立探偵? 諜報部員?
 こうなるとわたくし、もう止まりません。一気に目を走らせます。気の利いた会話を交わす男女、場所はどこでしょうか、Los Angelsあたり、乾いた風が吹き抜けていく小洒落たオープンテラス。
 きっと二人は、油断なく周りに気を配り、低い声で誰にも聞こえないように話を続けているに違いありません。途中で、サブスクのApple musicに手を伸ばし、ビートルズをBGMにしながら読み進めていったのは、至極当然の成り行きと言えましょう。
 なんてカッコいい。

誰もがあなたの構えているピストルの引き金に指を掛けているのです。

 そうよ。
 さあ、殺っておしまい。
 わたくしは主人公の耳元に囁いたのです。

 ヤ・ラ・レ・タ。
 こんなに鮮やかにやられてしまって。ちょっと悔しくなって何度も読み返すのですが、どうやっても見抜けません。
 じわじわとわたくしの口元には殺し屋も真っ青な笑みが浮かびます。
 これぞ、ショートショート! 口笛でも吹き鳴らしたい気分です。

 星新一氏のショートショートにどっぷり浸かってきた世代です。なので近年、ショートショートの概念が広がって、「超短編」と同義に扱われることに違和感を覚えておりました。
 やはり、こうでなくちゃ、この切れ味の鋭い返しがなくちゃね、と雄叫びをあげながら何度も味わいました。何度も読んでいると、そろそろだよ、準備はいいかい? と脳内にライブ会場さながらの盛り上がりが生まれてくるのです。その流れに身を任せて、さあ来い! とオチへダイブするこの心地よさ。

 福永諒さん、誠にありがとうございました。楽しすぎてどうしましょう。
 こんなオシャレな会話のできる先生、私の人生には現れなかったぞ。

 って、もしかしてこのスターターピストルに見せかけたもので、校長先生をズドン! とか。

👑背中をなぞる指・しめじさま👑

📕講評・紫乃📕

正直に言う。私はエロティックな作品が苦手である。
そんな私は以前、しめじ氏の作品(過去分)を読み始めて間もなく、これはまずい方向に展開しそう、と退散したことがあった。

今回、グランプリのお題は「ゆび」。しめじ氏のご応募を確認した際、私の中で密かに脳内マークが変わった。

しめじ🐒」 ☞ 「しめじ💀

警告の髑髏💀。80%以上の確率で、まずい(あくまでも紫乃的に)表現が来るだろうと。

だが、私は審査員。今回は、しめじ💀氏に挑もう、と心を決めた。


     ・・・・・

タイトルは「背中をなぞる指」。トップ画像は、女性の素肌の背中。
早々の二行目にお題の「指」提示あり。

背骨に沿ってなぞるように誰かの指が、一糸纏わぬ私の背中を這っている。

読者は、この一行で、指の存在を映像と肌感で意識し、その後、その指が2本であること、人差し指と中指であることを順に知る。

すらすらとリズムよく続く、主人公とその指との関係性提示からの中盤、

レースのカーテン越しの月明かりが、私の胸の膨らみの間に立つ2本の指を青白く照らしていた。

2本の指が際立つ、非常に美しい景の一文が目の前に。まるで一枚の画のようである。
そして、ここから、作品は別の展開へ。

驚かせて逃げないように、そっとやさしく話しかける。

「あなたは死んでしまったのね、痛かったでしょう、かわいそうに」

主人公は、その指を恐れることなく、優しく語り掛ける。指の反応は必要ないかのように。
だが、とうとう、指は反応を示す。

私がまた喋り出そうとすると、人差し指が私の唇の上にやってきて、もう喋るなとでも言いたげに口を塞ぐように寝転んだ。

主人公と指との戯れ、心の通い合い、からのクライマックス。

「さようなら」
と告げると、彼の笑顔が墓前に浮かんで、ピースサインをつくるように2本の指が揺れて、墓の中に消えて行った。

さらりとした読後感を読者に残す終わり方。

*文中、繰り返され、散らばる「指」の文字。
*2本、4日、5日、という数字の提示が、二本、四本、五本の指のイメージに繋がるという小技。
*読みやすく、理解しやすい文章と、リズム。
*固有名詞(人名)を使わないことの効果。
*多くの方に受け入れられるだろう、愛情と母性に満ちた作品。


     ・・・・・

痛い。痛い。どこもかしこも痛い。なんだこれは。
俺は、あいつに「やり直そう」を伝えに行きたいんだ。
行かなくちゃ、、いけないんだ。

動かない。動かせない。右の指しか動かない。
俺は、、死ぬのか?
もうあいつの近くには、、行けないのか?

「俺らが代わりにいってくるよ、心配すんな。
あいつに、伝えてくるよ。任せろ。
だからもう楽になれ」


私には、指の持ち主と指との、このような会話が聴こえてきました。
私は、またマークを変更しなくてはなりません。

しめじ💀」 ☞ 「しめじ🐒」

警告の髑髏💀は、必要ありませんでした。(大変失礼いたしました)
もしかしたら、主人公の女性も再び、指の主を愛したのかもしれませんね。母親のように。

素晴らしい作品をありがとうございました😊

👑優しい彼・ひよこ初心者さま👑

📕講評・ピリカ📕

昨夜、彼の薬指を口に含んだのを思い出す。根元から噛み切れば、指輪も外れるのではないかと思いながら、歯を立てる勇気が無くただ嘗め回した。彼は息を漏らし「もう欲しいの?」と優しく問う。ただ見つめる私を、彼は是と捉えた。私は彼の決めた答えに従う。彼の望む答えを私は提供する。

この表現に、せつない!と唸ってしまった。
彼の指輪に、憎しみとも呼べる感情があるからゆえの愛撫に、「もう欲しいの?」と答えるハヤトの単純さが、もうなんというか歯がゆくてたまらない。

苦しい恋をした人なら、きっと「そうそう、そうなんだよね!」と言いたくなる方も多いのではなかろうか。

ひよこ初心者さんは、淡々とした語り口のなかに感情移入のピンを打っていくのが巧みな作家だと思う。
読者はそのピンに惹き付けられ、自らの感情を重ねながら読んでしまう。

もちろん、私もだ。

彼女が食事を用意する場面も印象的だ。

朝食を用意するのは、ひとり分。その皿の中のウインナーを見て、指輪のついた彼の指先に想いを馳せる。
噛みちぎりたかったのは、既婚の証か。
それとも彼の望むがままになっている自分自身だろうか、と私は感じた。


タイトルは、優しい彼、である。
もちろん、ハヤトは優しいのだろう。

だが、優しさと残酷さは同時に成立するのだ、ということもこの作品は語っている。

1200字という、決して長くはない文字数の中に、ひよこ初心者さんは「指」を効果的に使い、微妙な感情のズレを見事に描いた。

見える場面はあくまでも甘く美しく、それでいてなんだか苦しい。

二十九歳ではないけれど、私も、泣いた。

👑指紋・師走さま👑

📕講評・geek📕

「指紋」は数十年経って刑務所からでてきた男の話である。

 数十年経つと、当然のように世の中は変わる。仮に昭和から平成を飛び越して令和にやってきたら、だれだって「とんでもねえ世の中だな。」と思うだろう。世の中はいつの時代もまだ見たことのないもの、便利なものをもとめて日常生活をどんどん変化させていく。数十年も刑務所に入っていたら、日本語こそ通じるものの異世界へ転生したような心持ちになるだろう。

 ここに登場する男には指紋がない。服役している間に世の中は生体認証が常識となっていた。この世の中で指紋がないのは致命的だ。男にとって自ら消し去った指紋はそのまま自らの経歴であった。指紋を復元しようとする前科者に世間の風は冷たい。そういう世間の冷たさは男にこう言わせた。

指紋が手に入るなら何だって良い。

 進化したのは日常生活だけではなかった。医療の進化は気に入らない自分の肉体を都合よく移植できるまでになっていたのだ。そうして男は非合法なやり方で指紋を手に入れる。


 一方で数十年の時間を経ても変わらないものもあった。刑務所から出所したときの挨拶は「おつとめご苦労さん。」であり、おとずれた役所では窓口をたらいまわしにされてしまう。このあたりに社会的な時間の流れ方の違いが表現されていて、今の世の中にもそのまま通じる可笑しさが感じられる。
 そして、人は時間が経っても変わらない存在だと思わされる。生きる時代や場所が違っても、技術が進化して体のパーツをきれいに取り替えることができても、人の性根というものはそうかんたんに変わらない。縁さえあればそれまでやっていたことをまたやってしまう。

まあいい。指紋さえ手に入ればそれで良いのだ。

 欲しいものが手に入りさえすれば、それでいい。そうやってみずから選んだ道はとんでもない結末へ男を導いてしまう。男が背負った業なのか、冷たい世間が悪いのか。

 「指紋」は、人の姿が描かれた逸品であった。

👑車窓・林白果さま👑

📕講評・兄弟航路📕

 舞台は、ゴールデンウィークの電車内です。語り手は、新しい高校の制服を着ています。入学したての一年生でしょうか。語り口から、女の子だと推測できます。
 秀逸な点の第一は、この語り口だと思います。実に、十代半ばの女の子らしい言葉づかいで、リアリティーがあります。

 語り手が若年であるほど、文章は上手すぎてはいけません。本作は、ほどよい上手さで、年相応の未熟さを魅力的に表現しています。

 語り手が電車に乗った目的は、合唱部の活動に赴くためです。
 歌うことは好きだけど、嫌になっちゃうなあ――という心の動きと、何気ない描写に、思春期が畳み込まれています。周囲の視線を気にしたり、前髪を慌てて押さえたりする様は、まさに女の子です。

 何度読み返しても、心地よかったです。語り手のすぐ側で、車内を眺めているように感じました。
 もしかすると、タイトルの車窓は、読み手のことかもしれません。

 吹き抜ける風は、車内の扇風機と対比して、効果的に用いられています。
 一度目は、青嵐を思わせる強い風です。語り手の視線を一瞬閉ざします。目を開けた瞬間、まるで手品のように、あっと驚く変化――非日常を与えます。
 二度目のやや弱い風は、語り手の視線を車窓に向けます。読み手と目が合う瞬間でしょうか。そして、読み手も背後を向くように、新緑の渓谷を思い浮かべます。

 出会ったおばあさんは、ぽつりと言いました。
「もう一度、ここが見たかったのよ」

 彼女は、いったい何者でしょうか。

 謎を解く鍵は、どうやら小指のようです。語り手のきれいな手の中では、唯一残念な箇所です。同じ形をした二人のそれをおばあさんからくっつける様は、秘密の約束を交わすようでもあり――
 謎に手が届きかけます。

 そして、窓枠に届かないことで巧みに暗示されています。ぴたりと合う鍵穴が読み手側にあるとして、鍵はそこまで届きません。

 答えは、読み手次第という計らいです。
 謎を残したまま、窓の外で燕が飛び去る光景は、本作をより良いものに高めていると思います。

 再読をいざなう作品です。皆様にお勧めいたします。

👑若者のすべて・yuhi(ゆひ)さま👑

📕講評・Marmalade📕

左手の小指の爪にQRコードを施す若者が増えているという。

から始まるこの物語。このQRコードがアプリと繋がって、出会った相手が赤い糸の相手か教えてくれるというから驚きだ。いつかそんな日がきてもおかしくない、いや半年後くらいにはそうなっているかもしれない、とつい思わせる説得力がある。
その上、若者たちは恋愛に余分なエネルギーを使いたくないためにこのアプリを使うというのだ。オソロシイ。けど、やっぱりあり得そうだ。そうして出会う「つがい」が9割な一方で、物語の主人公の男女はこのアプリを使っていない。

作品の中にあるこのセリフがいい。

「わからないことが、だんだんわかっていくほうがぼくは好きなので」

と言いながら、彼は彼女は謎解きのような会話を続けていく。そのジレンマがまたいい。言うなれば、とにかく彼はロマンチストなのだ。女性なら誰でも(かはわからない、ロマンチストが嫌いな人はイライラするだろう)憧れるようなロマンチックなセリフをさらりと伝えてくる。これだよこれこれ!アプリじゃこれがないじゃない!とつい熱を入れたくなるのは私だけなのかちょっと心配になりながら読み進んだ。

 と、語り出したらキリがないけれど、これ以上書くとネタバレになってしまうので、まだ読んでない方は先に読んできてください。そして、この先のさらに素敵な展開と二人の小指にある小粋な糸の色に注目しながら、楽しんでいただけたら、この作品をすまスパ賞に選ばせていただいた審査員一同みんなとても嬉しく思います。

 ところで、スマートフォン、いや携帯すら持たずに青春時代を送った人たちはまだまだ多いと思うけれど、これから先、その世代がこの世から潰えたら、この世の中はどうなるんだろうと想像して心をざわつかせるのは私ばかりなのか。


以上、すまスパ賞9品の発表でした。
受賞された皆様、ほんとうにおめでとうございます!

そして、BIGな副賞!
いぬいゆうたさんから、朗読のプレゼントです。

すまスパ賞は審査員全員の投票で決まりますが、ひとりの推しだけでは、受賞できない仕組みになっています。
毎回大接戦なのですが、今回も9つの枠に収まらない数の作品が候補に挙がり、熱い戦いとなりました。
お寄せいただいた作品のレベルが高いからこそ、起きることだと思っております。
素晴らしい作品を堪能させてくださり、本当にありがとうございました。

それでは、ピリカさんからの「個人賞」発表をお楽しみに!


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