【歌詞解説】Somnium de Lycoris - Out Of My Depth
はじめに
最初にアルバムをリリースすると言ってから何年経ってしまったのか……紆余曲折あり、2023年12月1日、Somnium de Lycorisは最初で最後となるフルアルバムをリリースしました。随分と長い事やっていたような気がします。そのレコーディングや作詞にはそれなりの労力を要しました。
バンドアカウント等でもアナウンスされている通り、バンドは解散し、ストリーミングサービスの配信もそのうち終了するのだと思います。
日本にこんな音楽をやっていた人たちが居たのか!と語り継がれるような、一つの「特異点」のようなアルバムであってほしいな、と願うばかりですが、それなりに労力を費やしてきた作詞においても、多少の脚光を浴びたいなと願うものです。
拙い文章ではありますが、思い出せる限り、記録として残しておきたいと思います。なお作詞は基本的に英語から作詞をしていますので、和訳は多少のニュアンスの違いがあることをご容赦ください。
解説
第1弾、という事でまずはTrack.2のOut of My Depthから。ボーカルありの曲としてはアルバム最初の曲です。
今作はアルバム全体を通して、各曲それぞれ文学作品を題材にしており、この曲ではフランツ・カフカ「変身」を題材にしています。最初にこの曲を聴いた時、怒り猛った曲ながらもどこか哀愁漂う印象を受けました。やりきれない焦燥感と、どこか不条理な現実。そういったニュアンスを題材から組み込んでいます。
「変身」はメタファーが非常に多い作品なので、当時性の理解なく読解するのは難しいと思っているのですが、拙い語彙ながらも直接的な表現を極力なくす事で雰囲気を表現する事に努めました。
曲名のOut of My Depthは「私の手に負えない」といった意味で、「不条理からの孤独」というのをテーマに作詞しました。
余談ですが、会社の上司がこの曲を聴いたらしく、歌詞を見て「Midlife Crisis」と表現していました。中年の危機。……解釈は自由です。
英詞
I keep waiting in the dark for someone to come and save me
Darkness gives way to the glaring light of dawn
I struggle to find myself and understand my existence
Falling from on high, drowning in sorrow
At the bottom of the dark sea
When the world fades to gray
The imprint of what I had will always remain in me
All human beings are born alone, and will die a solitary death
Nothing more than an illusion left in the back of my mind
When I wonder what my honor is
Thousands of waves bring unknown voices
When I wonder what my honor is
The answer has no place
Look not into their black eyes
The sun is in my black eyes
All I hear is the crowd's screams
A void inside now filled
You should stop pretending to be something you're not
Who will you follow when the world fades to the gray?
And now...
Shifting the black for the white
At the bottom of the dark sea
When the world fades to gray
The imprint of what I had will always remain in me
All human beings are born alone, and will die a solitary death
Nothing more than an illusion left in the back of my mind
Left in the stygian dark, wrapped in oblivion's light
Thousands of voices bring certain mirrors
Despair is not the outcome of this devastating experience
I was once proud I held that old fire inside, but where has it gone?
試訳
誰かが助けに来てくれるのを暗闇の中で待ち続けている
暗闇から眩しい光が差し込んできて
私は自分自身を見つけ、自分の存在を理解しようともがく
高みから落ちて 悲しみに溺れる
暗い海の底で
世界が灰色に染まるとき
私が持っていたものの痕跡は、常に私の中に残っている
人間はみな一人で生まれ、一人で死んでいく
心の奥に残された幻想にすぎない
私の名誉は何だろうと考えるとき
幾千の波が未知の声を運んでくる
私の名誉は何だろうと考えるとき
答えの在処はない
彼らの黒い目を見てはいけない
太陽は私の黒い瞳の中にある
聞こえるのは群衆の喧騒だけ
その情景が私の心の空白を埋める
自分を偽るのはやめたほうがいい
世界が灰色に染まるとき、君は誰について行くのだろう?
そして今...
黒を白に換える
暗い海の底で
世界が灰色に染まるとき
私が持っていたものの痕跡は、常に私の中に残っている
人間はみな一人で生まれ、一人で死んでいく
心の奥に残された幻影に過ぎない
忘却の光に包まれた 陰鬱な暗闇の中に取り残されている
何千もの声が鏡に映る
絶望は、この破壊的な経験の結果ではない
自らの中に灯っていた火は、どこに行ってしまったのだろうか