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逆にお悩み相談室042(等速直線運動)
中3の理科で、等速直線運動というのを習いました。そのころ私は「なんで自分は生きているのか」ということを考えていて、理科でそれを習ったときに、感動してうっかり声を上げそうになりました。
「動いているものは動き続ける。止まっているものは止まり続ける」
そうか、生きているから、生き続けるんだ!
たしかに長生きすれば摩擦力によって、少しずつ生きる勢いはなくなります。そしていつか止まって、寿命がくる。そして、今まさに生きているものを止めるには、生きるのとは逆の強いエネルギーが必要なのだと。
私は阪神大震災で被災して、たくさん人が亡くなるというのを経験していました。近所の人、友人、友人の親。
自分はそこから母の実家へ避難して、転校した。どうして自分だけ、神戸から逃げたのか。残って共に苦労をすべきではなかったのか。私にもできることはあったはずなのに。
考えても分からない、誰に相談していいか分からない、そういう思いを、中学生の私は悩み抜けなかった。それらを包み隠して、生活するしかできなかった。
だから、高校で複雑な因数分解を習ったとき、やはり感動したのを覚えています。いったんab+2cを大文字Aで置き換えて処理するように、私はいつか整理できるその日まで、震災に関わる複雑な思いをカッコでくくって、心のどこかに置いている。
そう、思って、夢中で難しい因数分解を解いたのだと思います。