宇佐美魚目「崖」

 宇佐美魚目さんです。念のため「うさみぎょもく」さんです。やわらかな堅実さを感じますね。ときに、浮遊しているような感覚にもなります。では、一句と一言します。

椿流るる速さとそろひわが歩み
 るる。

大萵苣の葉につのる雨山隠し
 でかい。

空蝉や家も漸く二代目に
 ここでの空蝉よ。

蜘蛛の糸石の角より庇へと
 つながっておるよ。

八月や息殺すこと習字の子に
 止めるだけではなく、殺す。

蝶の影浴びてこころにうたふ歌
 よろこび。

風邪の畫家立てばコップの水うごき
 水、絵描きさんに従うか。

春の夜の手が冷たくていのちあり
 しっとり。

削氷やふと恐ろしき父の齢
 そういえば。

岬炎天どこの家にも老が居て
 突端。

黴餅を焼きながら食べ信じあひ
 だいじょうぶ?

朧夜の鋪道爪音立てて犬
 てっちてっち。

鵜の籠に蝶は紋様ふりしぼり
 叫びのような。

石の上に扇を置いて水へ指
 手でなく、指を見ている。

繪に二人西瓜の種へすでに蟻
 食べながら。

冬日さす二階隣家の机見え
 ふあーっとね。

レモン手に訪ふや白息継ぎ継ぎて
 プレゼント用。

白足袋を踏まれても妻繪をはなれず
 絵が圧倒的。


 付箋が足りない。買いに行くのも忘れる。付箋って交配して増殖しないかな。(了)

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