髙田祥聖の、ふりむ句!
今回の記事は、BL俳句対バンネプリ「#ダブルアンプ 」のメイキングについて書いています。
ネプリの性質上 同性愛について触れており、かつ、わたしの作品の性質上 性的な話もしています。そのうえで、創作に関して真摯に向き合っているつもりです。
この記事を読んでくださっている創作者のかたに、届くものがありますように。
来た!!
ありがたいことに、ネプリのお誘いをいただいた。
声をかけてくださったのは、星野いのりさん。
Xのスペースで何度かお話したことはあったのだが、実際お会いするのは先日の俳句四季主催の七夕まつりが初めてだった。
七夕まつりのあと わたしといのりさんを含めた何人かでお茶をすることになり、そのときに「誰かひとりゲストをお招きして、対談したり、競作したりするネプリを出してみたいんだよね」とお話したことを覚えている。
七夕まつりの翌日。仕事のお昼休憩中。
いのりさんから、「BL対バンネプリ(1対1)をやろうと思ってるんですけど、祥聖さん、第一回のゲストに来てもらえませんか?テーマは髙田さんが決めてもらって大丈夫です!」と メッセージをいただいた。
いのりん、行動が早すぎる……!!
「お誘い、ありがとうございます!! お受けさせていただきます。テーマですが、第一回ということなので「初恋」はどうでしょうか?」
「いいよ!!!! 句の数どうしますか? 二人で揃えたいです」
「では、いま七月なので七句でいきましょう」
「承知しました!」
展開が早すぎる……!!
第一回だからテーマ「初恋」って……!! 七月だから七句って……!!
我ながら安直が過ぎる。というか、そもそもBL俳句を詠んだことがない!!
いま考えると勢いに任せすぎている気もするが、不安よりも「ここで引き受けないと誰かにとられちゃう!!」という気持ちのほうが大きかった。
「どうしよう……」よりも「やってみたい!!」のほうが大きかった。
見た!!
そもそもBLとはなんぞや。
BLという言葉は、すでに市民権を得ているように思う。本屋さんに行けば、BLマンガ・BL小説のコーナーが設けられており、ひとつのジャンルと化している。
BL俳句にしても、BL俳句ネプリ「彗星書架」やBL俳句合同誌「庫内灯」などがあり、ほほう、これがBL俳句なのかと思いながら読んだことがある。
読んだことなら、ある。
正直、わたしはBLに明るいわけではない。
ボーイズのラブの句を詠めばいいという認識で、読者がきゅんきゅんする作品を詠めばいいくらいに考えていた。
まず最初に悩んだのは、自分で言い出した「初恋」のほうである。
初恋はなにをもって初恋というのだろう。
文字通り、初めての恋か。
物心ついて「自分は恋をしている」と自覚してこその恋か。
初恋の最大公約数はいったいどこにあるのか。
聴いた!!
そもそも初恋とはなんぞや。
安直なわたしは YouTubeで「初恋」と検索して、初恋ソングをいくつか聴いてみることにした。
なるほど、わからん。
たまたまではあるが、どちらの歌も、走ったり、誰かが走っているのを見つめていたりしている。
抑えきれないほどのエネルギーがあり、身動きのとれないもどかしさもある。壊れやすく、とはいえ 壊れることを厭わない危うさもはらんでいる。
二律背反をこれでもかこれでもかと内包しており、言葉にしようとすればするほど空回りしていく気がする……。
むむむ、これはなかなか難しいものをテーマにしてしまったのかもしれないぞ。
結果として、作品のとっかかりとなったのはBase Ball Bearというバンドの「初恋」である。未聴のかたもいらっしゃるかと思うので、ここで歌詞の引用はしない。この曲は「初恋」というタイトルそのものが、ギミックとなっている。
……あれ? そもそも「彼の」初恋っていつだ?
止まった!!
わたしは「作中主体の初恋はいつなんだろう」という問いに立ち止まった。
物語の主役である彼が「作中主体」ではあまりにも寂しすぎる。
初恋から一字採って「しょうちゃん」と呼ぶことにする。我ながら、ほんとうに安直である。
しょうちゃんはいままでしてきた恋のうち、いったいどれを「初恋」と定義するのだろうか。
この問いは「しょうちゃんが初めからボーイが好きなボーイだったのか」とほぼ同義である。つまり、しょうちゃんが初めて好きになったひとは男の子だったのか、それとも女の子だったのか。
キャラクターとはいえ、ひとりの少年の人生を左右する選択である。
わたしの選択でしょうちゃんの人生が180度変わってしまう……!!(かもしれない)
そう思ったのも束の間、しょうちゃんが初めて好きになったのは女の子だと把握した。神経が神経に接続する短さをもって、彼の初恋がわかった。
わたしが今回のネプリで描くべきなのは、しょうちゃんが初めて男の子を好きになった瞬間。言うなれば、彼の「二度目の初恋」である。
決めた!!
BLを描くうえで、わたしがいちばん悩まされたのは禁忌性である。
BLがひとつのジャンルとしての地位を築くに至った理由のひとつに、「まわりが、世界がなんて言おうと関係ない!! おれはお前が好きなんだ!!」という禁断の恋の成就というカタルシスがあったことは否めないように思う。
そのエッセンスをどれだけ作品に入れるべきなのか。
あらゆる恋愛は自由であってほしいし、そうあるべきだと思う。
「BLはファンタジー」。たしかにそうなのであるが、偏見を助長させるものであってはならない。少なくとも、わたしの作品によって無理解が助長されることがあってはならない。
いろいろ考えた末に、わたしは「好きなひとを性的対象として見てしまう」ことをタブーに据えることにした。好きなひとと心だけでなく、肉体的に結ばれたいと思うことはなんらおかしいことではない(思わないこともなんらおかしいことではない)。
ある種の暴力性をもって、身体が染色体によって「XX」「XY」に分岐していく第二次性徴期。変化していく肉体への戸惑い。好きなひとに対して、性的欲求を覚えている自分自身への不信感。
これらの気持ちは、思春期のわたし自身が感じていたものである。
これならば、描ける。
詠んだ!!
描ける=俳句が詠めるなんて思ったら、大間違いである。
大・間・違・い、である!!
さて、どう描いたものか。
今回の作品は七句。
舞台設定やキャラクターの説明なんてしていたら、描きたい部分のディテールが描けずに終わってしまう。
匂い立つような体感覚。
体を重ねるときのうっとりとした、それでいてふと我に返ってしまう瞬間。
その瞬間を切り取りたい。
思い出して、嬉しくなるような、恥ずかしくなるような。
この感覚は「初恋」に似ている。
似ているなんてもんじゃない。
この感覚は「初恋」そのものだ。
読んだ!!
わたしの作品七句をいのりさんに送って何日か後、いのりさんのほうからも作品七句が送られてきた。
タイトルは「龍くん」。
うまい。やられた。
タイトルで、キャラクター性の土台が作れている。
あとは俳句で肉付けしていけばいい。
さて!! ここからは素直に鑑賞していく。
いのりさんの作品は、ファンシー雑貨屋さんのようだなと思う。
学校の帰りに、子どもたちが立ち寄るような。
お店のひとも寄り道を黙認してくれるような。
ノスタルジー性とでもいうべきものが、今回の「初恋」というテーマと響き合う。
あまえるような口語調。きらきらした言葉の羅列。
あざとい。あざとすぎるやろ、星野いのり~。
星野いのりと髙田祥聖の「初恋」の解釈があまりにも違って、にやにやしてしまった。
未読のかたはぜひ読み比べていただきたい。
思春期特有の過激さを表現するために、わたしは今回の作品でかなり強めの言葉を使用している。それらを忌避するのでなく、表現と受け取ってくれた星野いのり氏の配慮をありがたく思っている。
いのりん、楽しかったよ。ありがとう。
読んだ?
ということで!! BL俳句対バンネプリ #ダブルアンプ 発行中です!!
ダウンロード版も公開中!!
詳しくは、いのりさんのnoteから。
デザインからなにから いのりんが一人でやってるんだぜ。有能がすぎる。
もう印刷したよ!!というかた、ダウンロードしたよ!!というかた、ありがとうございます。ご感想もちらほらいただき、ありがたい限りです。
#ダブルアンプ は第二回に向けて動き出しております。
第二回のゲストはミラバさん。テーマは「異世界&異種族BL」です。
配信は九月を予定しております。お楽しみに。
最後に。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
みんな、ありがとう。だいすきです。
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