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空區地車の力学18.子供会の綱さばき②

ひきつづき、子供会のポテンシャル、なめんなよ!「綱さばき②」です。

❻上り坂で赤信号になったら

上り坂で地車を止めると再始動に大きな力が必要になります。
そこで指揮者や前責(前の責任者)の停止位置から重なり合うように綱を手繰り寄せ、地車をジワジワと上らせていきます。次の青信号で責任者の「進め」の合図があるまで、極力地車を止めずに上らせます(下図➀)。止めたらしんどいぞ~。
もし信号のタイミングが悪く、どうしても坂の途中で停止する場合は、安全のため後テコを素早く入れます(下図②)。

➀坂道では地車を止めると再始動時に最大のパワーがいるのでジワジワでも上りきる
そのため子供会は横に広げせて綱も手繰る寄せていく
できれば青信号まで止まらず地車をジワジワ上らせたい
②止まる場合は必ず後ろテコを入れる

❼上り坂で曲がる場合の綱さばき
上り坂で曲がる場合は、たいてい一旦地車を止めて後ろテコを入れてから肩を入れての旋回になります。したがって後ろテコが入るまでは、綱を曳き続け、地車を引き上げなければなりません。
当然曲がり角では、綱が先に曲がることになります。その状態で綱を引っ張っていると前の曳き手の邪魔になります。したがって下図のように誰かが支点になって地車を引き上げるようにしなければなりません。そうすると、支点に大きな力がかかることになります。
子供や付き添いの親御さん(特にお母さん)では支えきれません。お父さんでも地車に初めて触る方には力学がわかりにくく戸惑うことになります。
この支点には若中(A)が率先して入ります。支点は地車が進むごとに地車に近づいていきます。旋回場所まで(A)はがんばります。綱は曲がり角に地車がかかりだしたら、緩めて余裕を持たせます。つまり曲がり角に入る手前からは、曳き手のみで地車を押し上げるのです。

《従来型》若中Aが支点になって子供会の力で地車を上らせる
若中A一人では耐えきれない

というのが、これまでのやり方ですし、一般論となっています。私は子供会の安全を考える時、この曳き方は違うと感じています。以下は私の考えですので、議論をすると1対100で負けますが、あえて以下を記載します。

私論:上り坂で「肩を入れて曲がる」場合
「肩を入れる」場合は、後ろテコが入って停止させるので、手間はかかりますが後ろテコの入る位置まで子供会の綱は(3時の方向には)曲がらずに真っすぐ進みます。後ろテコが入ったら子供会は、移動して地車の旋回を待ちます。この間の綱はユルユルで、旋回の妨げにならないように待機します。

この方法が最も安全だと思いますが、現在は綱の世話役が私一人なので、この方法を取ることができません。若中の子供会への理解が進めば、より安全な方法へ転換できることでしょう。

《私論》
➀子供会は真っすぐ上らせる ②後ろテコが入ったら綱を持って子供会は移動
③地車が旋回し切るまでは綱は緩めたまま

❽下り坂で曲がる場合の綱さばき
下り坂では、子供会が曳かなくても地車は進みます。むしろ綱が地車の邪魔になります。そこで子供会には可能な限り素早く曲がってもらいます。
ここで大切なことは子供たちが曲がりきったら綱をどこで止まらせるかです。その判断は地車が「肩を入れる」のか「張る」のかで異なります。

1)下り坂で「張って曲がる」場合
下り坂の場合は地車に推進力があるので、道路幅がある場合は、前の責任者は、たいてい「張る」を指示します。

「張る」場合は、可能な限り素早く子供会を曲がらせます。綱をピンと張り過ぎると、曳き手が「張る」時に綱が邪魔になるので、綱が張らないようにし、余った綱は曳き手の最前の若中が手繰り寄せます。
地車が旋回しきったら子供会に指示を出し綱を曳かせます。
綱の世話役は、子供会の人数や曳き手の技量を見極めて「張る」タイミングを指示しますが、すべてが一体になって初めてうまく張れる、とても難しい指示です。それゆえに上手く張れた場合は綱の世話役は「参ったか、若中!なめんなよ、子供会のポテンシャルを!」と心の中でガッツポーズをしています。その表情は誰が見てもドヤ顔、綱の責任者ひとりだけが子供会に拍手を送る場合もあるほどです。
もし、曲がった先も下り坂なら、地車が旋回し切ったら一旦地車を停止させ体制を整えてから再出発する方が子供会にとっては安全です。

2)下り坂で「肩を入れて曲がる」場合
下り坂で「肩を入れる」のは大変ですが、道が狭い場合は「肩を入れる」しかありません。
前テコを入れて一旦地車を停止させます。後ろの曳き手が”重し役”になたら、前の曳き手は肩を入れるのですが、綱にゆとりを残しておきます。曳き手が地車に肩を入れる時でも、入れてから旋回が始まった時でも、常に綱が曳き手の邪魔にならないように子供会を誘導しなければなりません。
下り坂で肩を入れるとテコは効いていない状態になるので前の曳き手に全重量がかかりとてもキツイものです。一気に旋回なんて事態もあるので、地車に近いところで曳く子供には注意が必要です。
地車が旋回しだしたら少しずつ綱を前に出し、旋回しきって地車の前が着地したら、綱の世話役は綱が緩まない程度に曳くよう指示します。

❾ちどりでの綱さばき
空區で「ちどり」をする可能性が高いのは、有馬道の入り口から空地区会館までの上り坂です。
後ろの曳き手は地車に乗って”重り”になっています。その状態で、前の曳き手は肩を入れて前輪を持ち上げた状態で「ちどり」で有馬道を上ります。
地車は後ろコマ2輪のみで上りながら、道幅いっぱい使って蛇行します。曳き手と子供会の綱のイキが合えば、空地区会館までの約500mを「ちどり」で上れます。
この時の掛け声は「とばせ」「とばせ」。若中だけでなく子供会も「とばせ」の掛け声は大好きです。一気に駆け上ります。

ちどりでは子供会は綱をひたすら曳けばよい

❿三礼時の綱さばき
道中で祝儀をいただいたら、地車は前を三回上げ下げする「三礼」で返します。地車前を持ち上げても綱に余裕があるように、子供会を早めに停止させます。
「三礼」が済んだら鳴り物に関係なく、速やかにその場を去るのが流儀です。道中の鳴り物を待つ必要はありません。地車前輪が地面についたら、子供会の世話役は間髪入れず「せ~の」と掛け声して、すぐに綱を曳かせます。

前を持ち上げやすいように綱を緩める

⓫ちどりの最中に「三礼」もある
さきほど❾で有馬道で「ちどり」をすることがあると書きましたが、有馬道は空區が誇る巨大(?)商店街です。したがって途中で寄付をくださるお店も多くあります。前上げ状態の地車は寄付をくださったお店の前で「三礼」しなければなりません。三礼は、後ろテコが入ってから始まるので、後ろテコが入ったら綱を緩めて子供会はその場で待機します。
三礼が終わったら、また前を上げたままめい一杯綱を曳いて「ちどり」を続けるか、前上げのまま進みます。目標は空地区会館までの約500m走破です。

⓬子供会も「とばせ」の掛け声は大好き

だんじり祭りに参加すると、年齢に関係なく誰でも「とばせ」の掛け声に、無意識に反応するようになります。
1)上り坂では「とばせ」を有効活用する
上り坂は力がいります。「とばせ」の鳴り物と「とばせ」の掛け声は大きな力になります。上り坂ですから実際は平地でのスピードと変わりませんが、綱に力がみなぎるのは見てもわかるほど、半端ネ~。

2)時には平地でも「とばせ」の掛け声を
一生懸命曳くので子供会も次第に疲れてきます。低学年では歩きながら綱に寄りかかって居眠りをする子もいます。
そんな時、子供会の世話役は意識的に「とばせ」と掛け声を掛けます。タイミングは平地に見えていても、実は緩やかな上りの直線を選んでいます。あくまでも子供たちの鼓舞のための「とばせ」です。
その時、地車の曳き手も鳴り物も合わせて「とばせ」となりますが、実際はとばしてはなりません。鼓舞するための「とばせ」ですから、若中がブレーキをかけて早足程度の速さにします。
しかし、若中も「とばせ」の鳴り物が鳴ると無意識にテンションが上がり、本当に「とばせ」を行なってしまいます。低学年ではスピードが速いと足がもつれて転倒する子供もでます。四隅責任者と打合せの上、十分場所を選んで細心の注意を払って行ないます。

⓬子供会を通じて家族全員で参加することの意義
住吉の街を住みやすくするのは、住吉の住人にしかできません。だんじり祭りは地区のコミュニティに大切なものです。
「いじめ」が社会的問題になっていますが、これは親の顔と子供の顔が一致しないことからも起こると私は思っています。「あの人はアッちゃんのお父さんだ」と、他の子供が認識することは大切なことです。また、「あのおっちゃんに祭りで叱られた」という記憶も大切です。祭りは地域の安全のためにも役立ちます。
また、祭りはキョ~レツな縦社会です。縦社会は弊害もありますが、目上の人を敬い、大切にすることを教えてくれます。さらに、ご心霊に手を合わせて先人に感謝したり、喜びを若中全員で分かち合うことも教えてくれます。
そして何よりも、家族全員で楽しむ場でもあります。
このように、だんじり祭りは、住吉を住みやすくする街づくりのためにも欠かせないものなのです。

近年5月といえども真夏です!熱中症に要注意!!

#神戸市東灘区 #空區地車 #空區