空區地車の力学49.裏方さん①まかないさん ~To drink of the same cup.~
どのような行事においても裏方さんがいる。そしてどの行事においても裏方さんはボランティアで成り立っている。だんじり祭りも同様に多くの裏方さんの力を借りて成り立っている。
私も子供会担当なので、ある意味裏方になるが、しかし私には綱を曳く子供達やその親御さんから毎回「ありがとうございました」やら「お世話になりました」やらの労いの言葉があり、ややもすると「子供会から引退して地車を曳きたい」という欲望に打ち勝ち、「来年も子供会やるか!」となる。
従って私は、裏方として相当恵まれている。
しかし私以外の裏方さんのほとんどは、誰からも感謝の言葉もなく、祭りの2日間、中には1年間ひたすら裏方さんに徹している。
年末も押し迫ってきたので今回は1年間の感謝を込めて、裏方さんについて書きたい。
私は食いしん坊なので、まず感謝を込めて「まかないさん」について。
まかないさんとは、料理や宴の用意をする方で、昔は地区の婦人会がやっていた。時は経ち、子供会の綱が出るようになってからは、子供会のお母さん方が担当してくれていた。子供会は小学6年生までなので、長くて3年間続けてくれる奇特なお母さんもいるが、毎年顔ぶれは少しづつ変わっていく。
我が家は、全員祭りバカなので、カミさんがまかないさんになってからは親子4人がゴールデンウイークの4月28日から5月5日まで、「家族旅行に行きたい」なんて不謹慎な事を言われることもなく、ましてや夫婦喧嘩もすることもなく楽しく過ごせてきた。
最近10年ほどは、年配の若中(年寄りと呼ばれる方々)の奥さんが中心になって、まかないさんをしてくれている。
まかないさんの活動は、本宮の約1ヶ月前に行なわれる「若中会」の食事作りから始まる。若中会には若中全員が集まり、巡行コースや祭りまでの段取りが説明され、その後、決起大会の酒盛りが行なわれる。
祭りの2日間は、四つ脚と呼ばれる牛肉や豚肉、さらにウインナーやコロッケなど四つ脚の加工品も含め、食べることがご法度なので、祭り前までの寄合には四つ脚の定番料理であるトンカツやカレーがメニューになる事が多い。
この若中会以降、地車の飾り付けなど寄合の度に酒盛りが行なわれる。
元々祭りは、働く男どものガス抜きの場でもあったのだから致し方ないのだが、今ではそんな事をホザコウものなら、奥方の手により神戸港にセメント詰めにして沈められる。それでも、献身的に、半ば諦めも含めて、まかないさんは黙々と料理を作り続けてくれる。
そして迎えた祭り当日(宵宮)は、遠方から参加の若中が、前夜から会館に泊まるので朝御飯から作ることになる。
さすがに昼と夜は、子供会も含めると100人以上になるので仕出し弁当になるが、祭り終わりの夜の酒盛り用にアテを出してくれ、宴は地車納車後の21時半頃から23時まで続く。
この酒盛りでは、未成年者には鶏のから揚げなど濃いい物が用意され、年寄りにはソーメンや野菜の炊いたん、だし巻き、冷奴など、喉越しの良いものが用意され、宴は盛り上がる。
その後片付けをして、また本宮の朝御飯を作り、祭り終わりの酒盛りの準備をする。
さらに祭り後の直近の休日には、地車の後片付けと落札(らくさつ)と呼ばれる会合(来年の三役任命式)での食事を作る。
実に大量の食事を数日間作ってくれるのが、まかないさんだ。
最近、PTAの請負業が話題になっているが、まかないさんは昔も今も女性陣が担当してきた。会館から帰る折には、まかないさんに「ありがとう」「お世話になりました」と声かけをし、落札の日には花束贈呈もある。しかし、男女雇用均等法の観点からも、働き方改革の観点からも、SDGsの観点からも、いずれ男性陣がまかないを担当する日もそう遠くない。そうなると手作りではなく、味気ないが仕出し弁当になる可能性大だ。そして最悪(?)PTAと同様、請負業者に丸投げという日が来るのかもしれない。
その場合は仕事からケータリングチームを段取りするが、その前にまかないさんにも立候補したいと考えている。当然、祭り好きの次女もまかないチームに入っていただく。なんなら、日本酒好きの連中も集めてまかないをお願いすることになる(?)。
その日のためにも長生きしなくてはならない。祭り好きは、何と幸せなことか・・・
さて、こうして「まかないさん」が手塩にかけて作った食べ物を、巡行中の若中に届ける運搬役だ。運搬役は軽トラの運転が必須なので男性の役割になっている。
彼らはまさに裏方中の裏方、劣悪な状況下(?)で働く裏方さんだ。次回は裏方さん「トランスポーター」について書きたいと思う。