空區地車の力学56.エア地下足袋
日本で下駄から靴に履き替えたのは坂本龍馬からだろうか?
しかし、下駄から靴になり通気性が悪くなったことで”水虫”が大増殖し、下駄や草鞋で鍛えた”土踏まず”も劣化したはずです。
私が若中に入って初めて体験したのが地下足袋(じかたび)。とび職人さんや畑作農家さんは底の薄っぺらな地下足袋を愛用していましたが、一般的にはマイナーな商品。履くと裸足の感覚ではありますが、歩いているだけでも衝撃が足腰に伝わります。
祭りでは、飛んだり跳ねたり、走ったり、踏ん張ったりと非常に動きも激しく、底の薄っぺらな地下足袋では足腰に相当な負担がかかります。そうでなくとも、町中を一日中練り歩いたら、足はボロボロ、私は夜は掛け布団を丸めて脚を高くして寝ていたものです。翌日は「今日も曳くのか」と布団からなかなか起きだせませんでした(笑)。
それが1990年代にエアマックスが発売されると、祭りの地下足袋にもエアソールが導入され、価格はそれまでの地下足袋の倍ほどでしたが、瞬く間にエア足袋が祭り文化に溶け込んだのを鮮烈に覚えています。
それが(株)丸五の”エアージョグ”。
エアージョグは、土踏まずから踵にかけてエアソールが入っており、ショックを和らげてくれます。
(株)丸五は1919年作業用の地下足袋メーカーとして岡山県倉敷市で創業した老舗。同社ホームページによると2000年エアー入りバスケットボールシューズにヒントを得て考案されたのが”エアージョグ”とのこと。
靴感覚の足袋の登場に私は2足まとめ買いしました。私の周りの若中もあっという間にエアー地下足袋の愛用者になりました。
ちなみにその頃の私は、エアージョグを2足持っていたにもかかわらず、エアマックスは高くてまだ手が出なかったのですが(笑)。
■地下足袋の選び方
地下足袋を長時間履いていると足がむくんでしまうので、普段履いている靴よりも少し大きいサイズを購入しておくとよい。
ネットとかで激安で販売されている事もありますが、激安商品は1回限りの使い捨てとして使用するのであればいいのですが、耐久性を考慮したら、あまりお勧め出来ません。また1年に2日しか履かないので、何年も履くことを考えると少々高くても耐久性の優れた商品の方が経済的だと言えます。とはいえ普通の地下足袋に比べエア地下足袋は倍ほどするので、試着してから買う方がよいでしょう。
私は、岸和田にある祭り用具専門店の「大阪屋」で購入しています。試着できるのが一番のメリットで、岸和田の祭り人にも愛されているお店なので相談にも乗ってくれるし安心!
色は白。丈は膝下、袋はぎを覆う長めのタイプ(コハゼ12枚仕様)がよいでしょう。足首までのものや黒色もあるが、粋と野暮は紙一重。足元にも気を使ってこそ粋。また目立つよりも統一感を重視することも粋なのです。
■女性の地下足袋の選び方
ウチの三女は今でも祭りに参加しています。女性用の地下足袋はまだなく、ユニセックスです。
三女曰く「男物だと横幅が大きく地下足袋の中で足が遊んで踏ん張れない!」らしく、素足ではなく足袋型の靴下を履いた上から地下足袋を履いています。三女だけでなく「姫若(女性若中)」は、靴下を履く女性が多いらしく、女性の場合は足のサイズにピッタリか、気持ち小さいぐらいの方がよいと次女は言います。
■コハゼ
地下足袋には留め具の「コハゼ」が付いています。
コハゼは上(膝側)からではなく、下(足首側)から留めます。
コハゼをかける留めヒモは2~3列あり、ちょっときつくなった時には外側に、余裕があれば一番内側に留めます。
足袋にシワができてしまうのは野暮、しかし足袋には靴下のように伸縮性がないため、コハゼでシワができないように留める(絞める)と粋な着こなしになります。
ちなみに、江戸時代のコハゼは金や象牙、クジラの骨などで作られていましたが、現在では真鍮やステンレスなどの金属で作られています。祭り用としては、コハゼ5枚、6枚、7枚、12枚があります。
空區は腰巻が正装なので、私のオススメはコハゼ12枚です。