はじめの言葉
「ルセットのためのルセット」
以前から伝えたいと思っていた。
食べ物をつくるというと、「レシピを見てつくる」ということを思い浮かべる人が多いけれど、レシピはつくったときの記録、次に繋げるための記録であり、次は違う素材と向き合わなければならないし、向き合うのが料理。
「レシピ通りにやれば大丈夫」という安心を手に入れるためのものではない。
いつでも、自由に表現できる方法を身につけて、いつでも、素材や状況を変化させることができる、変化に対応できる自分をつくる。
少しの変化もせず、正確につくろうとしても季節や環境による状況や素材は変化してしまう。それならば、いかようにも変化できる自分をつくり、表現したい着地点が変化しないようにすればいい。ちょっと最初は大変だけれど、この不動の安心を手に入れるのが一番だと思う。
そのための基準となるルセットをお伝えしたいと思います。実際に「sens et sens」で使っているルセットです。
そこから、どうしたいときにどうすればよいのか?
起こりえる変化の傾向と対策。
全ての素材、その分量、作業工程の意味を示します。
できる限りつくり慣れているか慣れていないかは関係なくできるように。「失敗しないけれど理想ではない」を何回やっても理想には近づかない。80点を100回やっても100点にはならない。
つくることに慣れておいしくつくることができることもあるけれど、本当は、慣れたからではなく、結果として、回数を重ねることで、表現したいイメージと実行することの整合性が生まれるだけです。最初からきちんと理解していたら少ない回数で理想にたどり着けるようになります。
まずは、正しい素材の知識、適切な判断をするための知識、方法を知ること。
うまくいかなくても、次回に活きるように、失敗自体を理解できるように。イメージした味と現実にズレが生じたとき、その失敗を突き詰めずにもう一度つくってみようとしても失敗を繰り返すだけです。
なぜなら、それは、理由を知らないからです。
理由を知らないからレシピを変えることもできない。
とても不自由ですね。
短時間でできる、楽にできる、はよいけれど、
その前に、今、つくりたい味をつくれるかどうかです。
その中で、できるだけ無駄のないように節約する。早くできるようにする。100点を取ってからスピードや労力の節約を考えましょう。
もちろん、そういうコツもお伝えします。
つくることができるけれど、
つくる気もしないほど大変ではつまらないですからね。
ノウハウにばかりに意識を向けることなく、
きちんと理解して、楽しく自分らしく表現できるように。
一生、使えるルセット。
一生、使える「自分好みにする方法」。
写真と言葉で伝えることを表現して行きたいと思います。
とてもとても細かく説明します。「おいしい」は、素材と素材が心地良く共存していること。調和という平和な状態です。素材の気持ちになってよく読んで理解してくださいね。
日々の「食」の愉しみが広がることに役立てると幸いです。