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【短編推理小説】五十部警部の事件簿

事件その18

 駆け出しの役者である小塚ススムは、
その夜、自宅のアパート鏡に向かって、
ネクタイを直しながら、
流行歌を口笛で吹いて上機嫌だった。
ポケットに玄関のカギをしまい、
ふと鏡を見上げると、玄関の戸が開いて、
女がこちらを睨んでいる。
鏡に映る男前の顔はすでに血の気を失っていた。
女は黒くピカピカと光る、
拳銃を彼に向けていたのである。
音が鳴り、彼は床に倒れた。
 
捜査は簡単に終わるかと思えたが、
以外に難航していた。
小塚は表向き愛想はいいが、
自分のことをほとんど関係者にも話さない男だったのだ。
しかし、調べていくと、
彼には三人の親しい女性がいたが、
いずれも過去になんらかの警察沙汰がある女たちだった。
小岩夏子、磯谷典子、湯川秀美の三名である。
小塚はこのうちの一人と赤線の宿を経営していたのだ。
五十部警部と坂木刑事の捜査により、
以下の事実も分かって来た。

小岩夏子は最近まで行方が分からなかったが、
小塚にヒロポン中毒者とは別れた方がいいと、
警告の手紙を送っていた。

湯川秀美の夫は、
小塚を撃った女の夫とは兄弟の間柄であった。

小塚と共に赤線の宿を経営していた女は、
結婚歴は無く、小塚に自分の夫になって欲しいと頼んでいた。
 
五十部警部は逮捕状を取り、女を逮捕した。それは誰かな
 


犯人は小岩夏子。
一緒に赤線宿を営んでいたのは、磯谷典子である。

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