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【短編推理小説】五十部警部の事件簿

事件その32

ある冷え込んだ晩、宿直室の火鉢を前に、
あれこれと世相について風評していた、
五十部警部と坂木刑事のところへ、
若い新米の刑事が相談にやってきた。
若い女四人組の窃盗団を追っているが、
密告された情報から、
四人の役割を特定できないかというものであった。
「ほう、それはどういうヤマなんだい?」
五十部警部が尋ねた。
判明しているのは以下の通りであった。

四人は多田道子、太田文、
木田妙子、高橋ミチである。

一団のリーダーは、
スリをしていた親仕込みの窃盗犯で、
見張り役と盗み役を家伝の仕込みで、
一端に育てたらしい。

四人目はこの二人を補佐する役割のようだ。

10日ほど前に盗み役はリーダーに、
木田妙子を、
仲間に加えて欲しいといって連れてきた。

リーダーはひどく用心深い。
仕事場を決めると多田道子に電話で連絡、
おおよその段取りを伝えると、
多田がその詳細を詰めてから、
見張り役に伝えて仕事に掛かるようだ。

高橋ミチとリーダーは左の手の甲に刺青がある。

先週、木田妙子は盗み役と見張り役が、
列車のスリでかなりの金額を盗ったことを知った。
木田はリーダーに金は四等分すべきだと伝えた。

以上である。

五十部警部は少し考えてからメモ用紙に、
リーダー、盗み役、見張り役、補佐役の、
それぞれの氏名を書いて新米の刑事に渡した。


リーダー: 太田文。
盗み役: 多田道子。
見張り役: 高橋ミチ。
補佐役: 木田妙子。


 
 

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