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【2019忍殺再読】「ファイア・アンド・アイス・ビニース・ザ・ブロークン・ムーン」
暴力と対話でととのえろ
インシネレイト・サウナ対決回、まさかのエピソード化。スレイトでばら撒いたアイデアを軽率にエピソード化してゆくこの感じ、もっとどんどんやって欲しい。ツインテイルズのドラキュラ城日常回とか、チリングブレードのドン底生活回とか読みたいよね。インシネくんの強烈なキャラ萌えっぷりとか、クスバくんのなんか気持ち悪い舎弟ムーブとか、一般モータルとシックスゲイツが気軽に言葉を交わせるようになったネオサイタマ社会の変化とか、ほのぼの日常回ぶってるけど普通に前半で人間が生きたまま消し炭になっていることをヘッズもボンモーも忘れていないか?とか、まあ色々あるんですが、暴力殺人焼肉!サウナ勝負昏倒!の流れが、サラリマンとの対話を通し、スーッと冷えてゆき、美しい割れ月へと結びつくという、まさしくエピソード自体がサウナとして機能している構成がイカしてていいですね。ほっこり奇妙なこの感じ。タイトルもバシバシにキマってて凄い。忍殺、なんかトンチキ回にやたらかっこいいタイトルをきめてくる傾向にないか?
あと公式twitterの紹介文がおもしろすぎる。
🌟【PLUS】高温サウナを我慢比べと解釈し、帝王たらんとするインシネレイトであったが……。【ファイア・アンド・アイス・ビニース・ザ・ブロークン・ムーン】|ダイハードテイルズ @dhtls|note(ノート) https://t.co/vRAQVtEzdw
— NJSLYR / ニンジャスレイヤー (@NJSLYR) August 26, 2019
論理サウナ教会
しかし、インシネくんは本当に味わい深いですね。世界を「勝敗」という単純な構図を通してしか見ることができないこの感じ。先日、京極夏彦の『地獄の楽しみ方』という講演会録を読みまして、そこで京極先生が「すぐに勝敗を持ち出す奴はアホ(意訳)」と言ってたことを思い出して笑ってしまいました。ただ、ケオスの坩堝たる世界と向き合うにあたって、情報を落として単純化する(≒言語化する)というのは確かにとるべき一つの戦法でして、実際、その代表例たる論理聖教会は世界を数値の大小(お金)に翻訳することで多くの人を救済しているんですなあ。そういう意味で、本作はインシネくんが勝敗のフィルターを外し渾沌たる世界に初めて真正面から立ち向かうエピソードとも読めるでしょう。解像度を上げて見る世界は確かに美しいはずで、それは割れ月のシークエンスに強く表れているのでしょう。
……で、その後、(ああそうだ、これで俺の勝ちだ)とか言い出すのが実にインシネレイトですね。勝敗にこだわらない俺の勝ちだ理論ですよ。何もフィルター外れてねえよ!インシネレイトの伊達眼鏡はすぐ焼き溶けるけど、いくらでも代わりがあるのだ!
未来へ…
アイアンアトラスの話します?私は怖いのでやりません。
■note版で再読
■2019年12月1日