超ショートショート『眠くならないアルコール』
医学の常識的に、寝酒は身体に悪いことがかなり以前から指摘されている。寝酒は、睡眠の質を大きく下げることがわかっているからである。
にも関わらず、アルコールが睡眠薬代わりというオジサンたちは、現実、少なくない。最近では、社会進出の進む女性にも増えてきている。
これを問題に思った医療従事者によって開発されたのが『眠くならないアルコール』である。
アルコールを睡眠薬代わりにしてしまうのは、アルコールを飲むと眠れるという間違った認識からである。
それならと、そもそもいくら飲んでも眠くなった気がしない不思議なアルコールばかりの世界にしてしまえば、寝酒の習慣というのを失くせるのでは、と開発に着手したらしい。
『眠くならないアルコール』によって、確かに寝酒の習慣は減った。
しかし、代わりに睡眠薬の世界的な消費量が、大きく増えてしまったようだ。
寝酒は身体に悪いとわかっていても、結局は何か飲まなきゃ眠れないという人たちが少なくないのが、この世界。
『眠くならないアルコール』は、寝酒を睡眠薬に代替しただけで、睡眠薬の消費量増大という別の問題を産み出してしまった。
しかし、眠るためにアルコールを飲むというオジサンたちの姿を見なくなる日も、そう遠くはないだろう。
睡眠薬で眠るのと、寝酒を呑んで眠るのと、いったいどちらが身体にいいのだろう?
それは、これからわかってくるはずだ。
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