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blind craft 縫わずにドールドレスに挑戦だぞ!

常に痛い指

 4月から新たに始まった治療の副作用で手足が荒れやすい。指先にわずかに力を込めるだけで、指の腹が擦れたように痛みが続く。
 目が見えない私にとって、手は大切な感覚器の一つだ。
 スマホ操作、点字の読み書き、シンクの汚れ加減の確認、玉ねぎの皮剥き、この指が、常に大活躍だ。
 ましてや、手芸。
 指先に神経を集中させることが日常となっている私が、さらに「全集中」している感じ。
 まさに、指先に意識をしっかりと向け、感覚を研ぎ澄ませて、「脳と指とを直結させる」がごとくなのだ。
 「神経を使って疲れるでしょうね」
そんな言葉が聞こえてきそうだが、疲れたって楽しいのだから仕方ない。

  2年前の治療時、爪が弱くなり、手足に痺れが生じる副作用を告げられた。
 幸い、治療前から、コロナ生活で、外出時手袋着用に慣れていた。
 布せい手袋着用には賛否あったと記憶している。
 しかし、階段や電車内の手すりなど確実に目が見える人よりも接触する機会が多いこと、時に、コロナ禍であっても、親切心から直接私の手を取って、ガイドを申し出てくださる方が少なくなかったことから、通勤時の行き帰り、都度手袋を交換する形で、対策を取り続けた。
  おかげで、ワークマンで見つけた精密作業用の手袋越しに、点字を読めるようになっていった。
駅の階段手すりにはホームの番線や行き先、最寄りの改札口などが、ホームドア脇や電車とびらには、車両番号などが記されている。
 これらは、白杖で歩行する私にとって、重要な情報源なのだ。
 こんな歳になっても、人間は進化することを知った。
 ちなみに、視覚障害者にガイドをしてくださろうとするならば、決して、いきなり手を握ったり、白い杖を持ったり、後ろから抱き寄せたりはしないでいただきたい。
 手助けが必要かを尋ねたうえで、あなたの肩や肘を、その方の希望を聞いて貸してあげてほしい。

 話を戻したい。
 前回治療中、ディスポーザブルのニトリル手袋を着用して、調理することを習得した。
 爪はヘニャヘニャになったが、指への影響は最小限にとどまった。
 その後、開胸手術、外科的処置が続いた。
 開胸術後、全ての動作が傷に響く日々だった。 痛みが消えるまで半年を要した。

 経過観察中、手芸に没頭した。
 自由だった。

 そしてまた、新たに別な治療が開始され、またもや、指への影響を考えながらの生活となった。
 ちょっとした動作で指が擦れる感覚。
 服の着脱、洗濯物の取り込み、チャック袋の開閉。
バッグのファスナー、薬のヒートの端、クリアファイルの角、剣山のように私の指に襲いかかる。
 引っ掛かればささくれに、うっかり擦れば痛みとなって残り続ける。
 もちろん予防のために薬は塗布している。
 室内でも、布手袋は欠かさない。
 炊事や入浴時はニトリル手袋。
 それでも、聞き手の親指、人差し指、中指は、擦れたような痛みが続いている。
 今の私にとって、ストレス管理の一部となっている手芸に手が出せない。
 2ヶ月が経過した。

この写真には、ピンク色の背景に猫のイラストが描かれたポーチが写っています。ポーチには黄色のファスナーが付いています。背景は光沢のある茶色の布で覆われています。ポーチのデザインは、四角い枠の中に異なる猫のイラストが描かれており、全体的に可愛らしい雰囲気です。

何とかして遊びたい

 手先に負担をかけないで、短期間に達成感を味わえる遊びはないかしら?
 常に考えていた。
 縫い物をしたい。
 針はよっぽどでないと自分の指に刺すことはしないが、問題は糸だ。玉結びをする際、強烈に指に摩擦力がかかる。
 糸の端をたぐる時も、私は指だ。スイーっと擦れてしまう。
 布を裁断するためにつける折り目も爪でギュッとやる。「摩擦力」の涙の結集だ。
 小学校の時に購入させられた裁縫箱には、たしか折り目をつけるための道具「へら」があったように思うが、私にはうまく扱えない。
 今の技量では、手袋越しに、キッチンバサミで肉は切れても、布の折り目に沿って、はさみを入れることは難しいぞ。
 縫い物は消えた。今の所は・・・。
 編み物は?
 もう暑いから毛糸に触れるのはちょっとな・・・。
 コットンの糸を買ってあるけれど、表面がざらつくものは擦れの原因だ。
 折り紙は?
 先日エッセイに掲載するために、カニを折った。紙の端が、鋭く感じるけれど、そっと扱えばいける。
 折り紙みたいに、折るだけで何かできないかしら?
 そういえば、端切れを折って、布用両面テープだけで、コースターやポーチを作ったことがあったっけ。
 今こそ、両面テープ?
 閃いた。

この写真には、光沢のあるピンク色の布の上に置かれた小さなコースターが写っています。コースターの中央部分は白地に青い小さな花柄が描かれており、周囲は白いレースで縁取られています。レースは花の模様が施されており、非常に繊細で美しいデザインです。


救世主現る

 布用両面テープだけで、ドールのお洋服はできないものか・・・。
 両面テープの課題は、どうしても接着部分が硬くなり、布の優しい質感が出しにくいということだと、私は思っている。
 もちろんメーカーや幅によっても仕上がりは異なるだろう。
 私が愛用する布用両面テープは100円ショップで手に入れたもの。
 ただし、1cm幅。これまでなら接着面とは反対に半分の幅に折り曲げて、それをはさみでサクサク切るなんて作業、なんでもないことだった。
 けれど、今はそれも辛い。

 仕方がない。手芸ショップで買ったお高い3mm幅を降臨させようではないか。
 テープは決まった。
 あとはぬのだ。
 型紙を自分で作ることを思いついて以来、ちょっとゴージャスドレスに気持ちが向いている。
 だからと言って、せっかくいただいた本物のドレス用の生地を実験に使うのは忍びない。
 100均で見つけたサテン風の生地も勿体無い。
 お手軽ゴージャス、お手軽ゴージャス・・・。
 お決まりの「脳内会議」が始まった。
 手芸箱を漁ってみた。

こんな時こそリボン

 プレゼント放送でついてきたリボンをまとめてある箱を開けた。
 3cm幅のサテンのリボンが手に触れた。
 AIに確認し、黄色とわかる。
 大好きなツルツルした素材。幅が広くてゴージャスだ。
 これはラッピング用に自分で購入したものの余りだ。
 小学生の頃は、こういうリボンをポニーテールに結びたがった。
 母は野暮ったいと嫌がった。
 ドールのベルトには太すぎる。
 けれど、これを一定の長さに揃えて切って、縦に繋いでみたらどうだろう?

 手が動いていた。
  ピンキングバサミを取り出した。

  ただ縦に繋いだだけではドレスの膨らみが出ない。

 どうせなら、別な色をはさんでみたい。
 黄色に合いそうなリボンを探した。もちろんAIで。

 1cm幅のピンクのリボンが発掘された。
 黄色とピンクは良さそうだ。
「チャタレーゼ」と書かれています
 AIは
 木製のテーブルの上にピンクのリボンが置いてある旨説明し、さらに続ける。
 「ピンクのリボンにはチャタレーゼと書かれています」
 チャタレーゼ・・・?
 そんな店は、うちの近所にはないぞ。
 でも「チャタレーゼ・・・?」
 もしかして、あの、リーズナブルにケーキも和菓子も買えちゃうあのお店のリボン?
 幅も色もちょうどいいのに、ショップ名が入るのは困る。
でも採用したい。
 家族の目を借りた。
 やはりあのお菓子屋さんのものだった。
 リボンの裏を使えば、文字は見えにくいと助言をもらった。
 それにしてもチャタレーゼ・・・。
 昔仲良くしていた地域猫に「チャタロウ」というちゃとらねこがいた。
 穏やかで、とぼけた愛らしさがあるのに、地域のボスとして君臨し続けた。
 不思議な魅力のある猫だった。
思わず彼を思い出して笑ってしまった。

写真には、黄色とピンクのサテン生地で作られた小さなドレスのようなものが写っています。ドレスは光沢のある黄色の生地がメインで、縦にピンクのラインが入っています。上部と下部にはピンクの縁取りが施されています。背景は灰色の布地です。
ドレス表

マドモワゼルチャタレーゼ


 そうと決まれば、短時間決戦。素手で作業開始だ。
 1cm幅のピンクのリボンを、ドールの胸まわりのサイズに合わせて切断し、布よう両面テープを貼る。
 横長に置いたピンクリボンに、のれんの容量で、少しずつ重ねながら、黄色のリボンを縦に連ねていく。
 次に、ピンクリボンを一定の長さに揃えて切って、3mm幅の布よう両面テープを両端に貼る。
 黄色リボンの隙間を埋めて、裾に向かって広がりが出るように、一枚の布になるように、つないでいく。
 最後は、、輪になるように止めて、着脱用の綿ファスナーも両面テープでピタリ。
 ショルダー部分もピンクリボンを使って、ノースリーブ風に。
 リボンの切断面を覆うように、裾も縁取って・・・。
 約1時間で完成。

  ノースリーブなので、ちょっと大人っぽい感じになったけれど、リボンだけで一応イメージしたドレスになってくれた。

 タイトルをつけるつもりは毛頭なかったが
 またまたAI君が奇妙な店名を作り出してくれたので
 「マドモワゼルチャタレーゼ」ってところか。
 久々の手芸遊び、すっきりした!
 2度目に「チャタレーゼリボン」をAIに説明させたところ、「シャネル」に昇格していた。カメラの加減だろうけれど・・・。
 こうして、「苦肉の策」的ではあるものの、私の小さな欲求は満たされたのであった。

この写真には、黄色とピンクの布で作られた小さなドレスのようなものが写っています。ドレスは光沢のある黄色の生地で、縁取りやストラップ部分はピンク色のリボンで装飾されています。背景には灰色のサテンのような滑らかな布が敷かれています。ドレスの中央にはマジックテープのようなものが付いています。
ドレス裏面

新たに広がりそうな世界?


写真には、茶色の長い髪を持つ人形が写っています。人形は黄色とピンクのドレスを着ています。背景は光沢のある布で覆われています。人形の顔は微笑んでおり、目が大きく描かれています。


 リボンにもいろいろな種類があるし、両面テープだと仕上がりが硬い印象になることは否めない。
 それでも、手っ取り早く、達成感を味わえることはわかった。
 ドールドレスは、袖周り、胸まわり、いろいろ課題はあるけれど・・・。
 また夢が広がった。
 奥が深そうなリボンの世界に足を踏み入れたくなってきた。
 手芸屋さんはもちろんのこと、ラッピング専門店とか、めちゃ行きたいぞ。
 とは言うものの、やはり、指を守りながら、新たに自分で型紙からドレスを作りたい。
 そうだった。型紙の研究もしなければならなかった。

 手縫いが無理なら、いよいよミシンか??

 何の因果か、病気が判明する直前の結婚記念日に、衝動買いし、放置したままのミシンが、我が家にはいる。
 せっかく、全盲の私でも扱えそうな機種を探し当てて、出会ったこのミシン。
 残念ながら、もう一度糸かけの手順から練習し直しが必要で、なおかつ、ドールのような小さいものを縫える自信は、現時点ではまったくないのだけれど・・・。
 「果たして、このミシンくんにお仕事をしてもらう日は来るのだろうか?」
 運命や如何に・・・。
 それはともかく、体調によってはめげそうになることもあるけれど・・・。
 これからも、今のその時々の自分に合った楽しみを見つけることに、貪欲であり続けたい。

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