台湾ホーロー語(台湾語)学習

 台湾では中国語以外の言葉も使われていることを全然知らないまま留学やビジネスに来たという日本人が圧倒的多数だと思う。そして、台湾生活を始めてから薄々台湾語の存在に気づくのだろうが、中国語を覚えることだけで手がいっぱいで、台湾語まで覚える気になれないのだと思う。僕自身は台湾に来る前から台湾が多言語社会であることを知っていたので、台湾での生活は言語の方面では相当苦労するだろうと覚悟はできていた。多くの人が中国語だけでいいや!となってしまう気持ちもわからないでもない。しかし、台湾に深く関わるつもりの日本人が中国語を身につけるだけでいいとは思わない。台湾語や客家語、原住民語の知識がなければ絶対に知り得ない情報や事情、住民の特別な”感情”は確実に存在する。

 僕がまだ日本で生活していた頃から台湾語の学習を始めていたきっかけは、台湾語が母語で中国語が苦手な在日台湾人の知り合いが多かったこと、妻が台湾人だった関係で台湾にも親戚がいて、台湾の親戚達と台湾語で話がしたかったこと、そして数人の日本人友人がすでに台湾語がベラベラだったという刺激などもあるが、台湾語学習は一生続けて、絶対止めてはいけないと強く思った理由は別にある。

 台北生活を始めて間もない頃から数年間ずっとお世話になっていた方は日本語ベラベラで日本人の人脈が多く、よく自宅に日本人達を何人も集めて食事会をしていた。ある日の食事会の後、帰ろうとしていた時に僕だけ残され、話があると言われた。何かについて怒られるのかなと思って緊張したのだが、話の内容は「台湾語の学習を続けてくれてありがとう。私は台湾語に関心を示さない日本人はいくら台湾が好きだと言っても信用しないんだ。表面上は皆んなと仲良く付き合っているけどね。本当に信用できるのは君だけだよ!」ということだった。この日、僕は今後も台湾語学習から逃げてはいけないと強く思った。

 台湾の研究を続けている日本人、台湾情報をメディアに流す著名な日本人のほとんどが台湾語を話せないし、読み書きもできない。僕が知る限り、これができる人は1人しかいない。僕はこのことに気づいて、すでに何十年も経っているが、状況は今もあまり変わっていない。僕自身は台湾に関わるのなら、中国語も必要だが、台湾語の習得のほうが、もっと必要だと思っている。そして、できれば客家語や原住民諸語も話せたり、知識が豊富なほうがいいと思っている。自分自身が台湾本土言語がわからなくても台湾研究はできるし、情報発信もできるとは思う。しかし、限界は絶対にある。誰か身近な人が台湾語を始めとする台湾本土言語についてフォローをしてくれるのなら、何とか少しは深いところまで接したり、知ることができるかもしれないが、本人が全く学習体験や知識がないのなら、やはり絶対に限界があると思う。

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