台湾語が話せないと仕事を逃す
業務に台湾語が必要だと思っている経営者は台湾語が話せない人を雇わないというのは当然よくあることだと思うが、仕事を既に依頼されて、一回目の打ち合わせに行って、台湾語ができないことを相手側の社長に知られ、仕事を断られてしまったという話を聞いた。今の時代でもこんなことがあるのかとびっくりした。
仕事を断られた人は両親とも中国移民の家庭(いわゆる外省人家庭)で、子供の時から家庭内で中国語しか使わず、若い時にアメリカ留学してアメリカの大学を出て、専門職(建築家)に就き、台湾に戻ってきた人だそうだ。
この話は知人の友人の身に起こったことだ。知人のお父さんも中国移民だけれど、知人本人は台湾語がちゃんと話せる。知人は台湾語も大事だし、言葉は一つでも多く話せたほうがいいと考えていて、老後の生活を豊かにしたいということで、英語と日本語の学習を続けていて、早期退職し、海外へ留学することも夢見ている。
また、別の知人は日系企業に勤めているが、その会社では台湾語ができる営業マンでチームを作り、中南部や台北近郊の台湾語がよく使われる地域の担当になっていて、また客家語ができる営業マンで別のチームを作り、客家人が多い地域の営業を担当しているそうだ。
この話を聞いて思い出したことがある。以前、短期間だけ所属していた台北市内の出版会社の営業マンは客家人だった。ある日、偶然に客家人の多い地域のマクドナルド店内でばったり逢った。話を聞くと、広告を取るための営業は台北市内より客家人地域のほうが成功しやすいので、台北市内より客家人の多い地域ばかり回っているということだった。
台湾語や客家語などの台湾本土言語だけでなく、同じエスニックに所属していると、その関係で仕事や生活が有利に働く場合もある。僕の妻(妻の亡き父は福州人)の妹は福州人の上司(すでに引退)に今でも可愛がられていて、よく飲み会に誘われる。それに妻や妻の弟、僕もよく誘われる。いつも全て上司のおごりだ。その飲み会には福州語が話せる上司の友人たち(台湾の離島の馬祖島出身者)も参加することもある。馬祖島で使われる馬祖語は福州語と同じ閩東語系の言語であり、お互い通じ合う。ちなみに馬祖語も台湾語や客家語、原住民諸語と同様に台湾では国家言語の一つという位置づけになっている。
その福州人の上司は台湾生まれの外省人二世だが、両親とも福州人なので、福州語が話せる。飲み会で会った時、僕に福州語を教えてくれることがあった。義父さんに福州語で話してあげなさい!喜ぶからと言われ、教えてくれるのだが、義父さんの前で実際に話す時にはすでに発音が狂っていて、いつも全く通じなかった。福州語は日本人にとって苦手な曖昧な発音が多く、声調(発音のトーン)が言葉の繋がりの前後関係で複雑に変調したり、変音する特徴があり、聞き齧るだけではなかなか覚えられない。
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