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台湾生活や食事などを通して感じていること

 真夏は熱々の料理より、冷たいものか、常温で甘酸っぱい料理が食べたい。ということで自宅前のベトナム料理店で米線(東南アジア系のビーフン)と揚げ春巻きの和え物=「越式乾拌炸春捲米線」を選んだ。自宅周辺にはやたらとベトナム料理店が多い(ベトナムから移民してきた人が多く住んでいる)が、どこの店も台北市内の台湾料理店や中華料理店のように、文化や民族、歴史を彷彿させるような飾りやデザインなど一切ないし、安物のテーブルと椅子だけの殺風景な店内だ。

越式乾拌炸春捲米線
ベトナム料理店の店内

 台湾ではベトナム料理店に限らず、台湾料理店や中華料理店でも安物のテーブルと椅子だけのシンプルで殺風景な店がほとんどだ。台湾料理系の小さな店だと、店主の子供が店を手伝わされていたり、店の片隅のテーブルで宿題をやっていたり、飼い犬や飼い猫がウロウロしていたりする。でも、僕はこんな店が大好きだ。そういうお店のほうが美味しい!なんて言えないけど。実は僕は美味しいか、美味しくないかなんて、あまり気にしていない。不味くてもいい。それより、いつも気にするというか、期待するのは、台湾らしい料理を食べながら、台北の庶民的なワンシーンが見れたり、聞けたりすることだ。

  でも日本にある台湾料理店は、台湾料理も中華料理ですよ!って宣伝しているかのように、中華っぽい派手派手インテリアの店が多いのではないだろうか。台湾だと中華料理店でさえ地味な店ばかりだ。高級店だとさすがに店内インテリアデザインにお金をかけているけど、派手派手中華風の店はほとんど見たことがない。中華をイメージするようなデザインのレストランは過去に数軒見たことがあるが、それは台湾人にとっては外国料理のような存在の北京料理店だった。

 海外で見かける日本料理店というのは外国人が見たステレオタイプ的なデザインの派手な店が多いが、台北市内で見かける日本料理店の店舗デザインや雰囲気は、もし日本のどこかにあっても違和感を感じないような店が多いと思う。

 3日前、臨時に得た夜の仕事(映画の役者)の現場で夜食の注文取るからこの中から選んで!と言われて、メニューの中から臭豆腐(chhàu-tāu-hū=発酵させた豆腐)と鴨血(ah-hoeh=アヒルの血)の塊が入ったスープを選んだ。そうしたら、台湾人スタッフ達の間で話題になってしまったらしい。

 つまり、皆んな日本人はこういうものは食べられないという先入観があるようだ。僕は台湾生活が長い(25年)から、食べれるようになったのでなく、台湾に来て初めて食べた時も別に臭いとか、気持ち悪いとは全く感じなかった。

 臭豆腐に関しては、ある種の刷り込みもあったと思う。初めて台湾に旅行で訪れて、日本に帰る時、駅まで親戚の子が車で送ってくれた。その時に臭豆腐の屋台の脇を通った。親戚の子はあれはいい香りがしてすごく美味しんだよ!自分は大好物なんだ!と教えてくれた。でも、その時は食べる時間がなかった。

 結局、その初めての台湾旅行では食べる機会なく帰国した。それから8年後、台湾へ移住した時、ずっと気になっていた臭豆腐を一人で屋台に食べに行った。以前親戚の子からの刷り込みがあったからなのか、本当に香りがよく、美味しい食べ物だと感じた。

 例えば、台湾家庭料理「オォホアイ(ō͘-hoâiⁿ=芋莖:タロイモの根から茎にかけての部分を炒め煮したもの)」は見た目が汚らしくて、食べ物に見えない外観だが、初めて食べた時には、確かにすごい外観だけど、すごく美味しい食べ物だと思った。

 台湾の親戚や家族から美味しいから食べなさい!と言われたら、どんなものでも絶対美味しいものだと信じるからだろうし、実はオォホアイに関しても刷り込みがあった。

 昔、日本語を教えていた70歳代のお年寄りに、台湾料理の中で一番好きなものは何ですか?と聞いたら、「オォホアイが一番好きだし、一番美味しいと思う!」と言われていたので、オォホアイは台湾料理の中できっと一番美味しいものなんだと信じていた。

 今までの人生で一番美味しいと思った麵料理は子供の頃に韓国ソウルの中華レストランで食べた海鮮麵だ。ナマコがそのまま入っていた。当時父には山東系韓国華人の部下がいて、その人が忙しいのに時間をさいて、僕と弟だけを中華レストランに連れて行って、ご馳走してくれたのだ。すごく嬉しかったから、美味しいと感じたんだと思う。

 また、今までの人生で一番美味しいと思ったチャーハンは20代の頃に付き合っていた台湾人女性のお母さんが作ってくれたチャーハンだ。実はその女性と一緒にいる時に彼女が突然持病の喘息の発作を起こしたので、慌てて病院に連れて行った。そうしたら、すぐに入院となり、お医者さんに「もうちょっと遅かったら死んでいたよ!ぎりぎりセーフだった。君もこういう人と一緒にいるとこれから苦労するよ!」と言われた。こういうことがあったので、次の日に彼女の実家に挨拶に行った。
 
 初めてお母さんと会って話したのだが、お母さんが何か食べていきなさい!今何もないんだけど…と言って、ご飯と卵だけでチャーハンを作って食べさせてくれた。初めて会いに来た娘の日本人男性友人に、さっと料理を作って食べさせてくれた…ということがすごく嬉しかったし、めちゃくちゃ美味しかった。

 本当にただ、ご飯と卵だけで、野菜や肉はなく、ニンニクとネギすらもなかった。二つの食材だけで、何でこんなに美味しいものが作れるのか不思議に思ったし、もしかしたら台湾人の生活は日本人の生活よりも食べることを重要視するのかもしれないと感じた。

 だから、何かやどこかと比べて、美味しいとか、美味しくないということを話題にするのではなく、食べ物を通して体験したことや、知った知識などにありがたみを感じて、大事な思い出にしていきたい。

 他のSNS上で、ある日本人が中国、香港、台湾の料理を食べ比べると、だんぜん中国が一番美味しくて、香港はそこそこ、台湾は小籠包は確かに美味しいけれど、他はすべて不味いとツイートしていた。どんなものを食べて比べているのかは知らないけれど、庶民的なものから高級なものまで、全て食べ歩いて比べれば、ひょっとしたら、そういう印象になるのかもしれない。僕は中国に一度も行ったことがないから比べられないけど…。でも、僕はこの人はつまらない料理の楽しみ方、つまらない観光、つまらない海外生活しかしてきていない人なんだなあと感じた。僕は美味しいとか不味いとか、そんなことはどうでもよくて、料理を通して、もっと他のことを見たいし、聞きたいし、感じたいし、考えたいし、思い出に残したい。


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