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沖縄県民から見た滝維吹と紅月加入について


沖縄県民で紅月がきっかけで太神楽からあんスタ始めたオタクの視点から、今回あんスタで滝維吹が紅月に加入したことについて語ろうと思う。

先に言いたいことをざっとまとめる。

①沖縄で生まれ沖縄以外のところで過ごしたことによるアイデンティティの揺れや日本文化(和風)に対する思いはわかる
②しかし沖縄生まれというキャラ設定もっとテコ入れできんのか?
③さらに紅月の3人や紅月の既存コンセプトを尊重せずストーリーを展開させるのは間違ってる
④かといって公開された楽曲や衣装に既存の紅月らしさも滝のルーツである沖縄やアメリカらしさもないのでどこに走りたいのかわからん


今年10年目を迎えるあんさんぶるスターズ。

このたび、和風をコンセプトとした3人組ユニット『紅月』に、去年新登場したばかりのキャラが加入。
これまでの既存メンバーキャラの発言やキャラ設定、ユニットコンセプトを全てを破綻させるようなストーリーに加え、最初から炎上回避するつもりの情報公開、SNS広報の仕方でめちゃくちゃ荒れている


滝はエスプリでも、MaMに続く第二のソロアイドルとしても活躍できてただろうに、なぜあんスタが10年目を迎える節目のタイミングで、これまで培ってきた紅月のコンセプトやキャラを無理やり捻じ曲げる方向で加入させた?


って思っている。正直。
紅月は3人だと思っているし、私が初めてプレイしたイベントは「!」時代の紅月の太神楽だったし、元バンギャなのでシドの楽曲提供を受けた紅月の楽曲がとても好きで思い入れのあるユニットだ。
だから今回の加入についてはとても不服だ。

でも、滝維吹の「ほんとうの和風」という言葉に、沖縄生まれの身として色々思うことがあったので、今回はそれを重点に置いて語ろうと思う。




滝が和風を求めて紅月に加入した経緯


滝は沖縄生まれアメリカ育ち。
そんな彼がなんで和風にこだわるの?って思うよね。

でもその気持ち、わかる。私もそうだった。
私も沖縄から日本らしさの集まる本土の文化がうらやましくて、あこがれてて、それが理由で京都の大学を選び、関西に合計12年間住んでたから。

突然だが、滝維吹というキャラクターは沖縄生まれからみた本土の視点をちゃんと持っている

沖縄と日本本土は同じ日本でも気候、文化、植物、建築物、宗教観が全然違う。沖縄でふつうに暮らしている分にはテレビやSNSを通して違うな~と感じるくらいだが、実際に本土で生活し、本土における日本文化を身をもって知ると「私が生まれ育った沖縄は日本じゃなかったの?」と思ってしまうくらいギャップを感じる。
本土の人がたまにジョークで「沖縄は日本じゃないみたい」って言うじゃないですか。
そうだよね。わかる。だって本当に違うもの。なにもかも。
その言葉が的を得すぎて傷つくくらいに。

沖縄では3月~4月に桜は咲かないし、桜の花びらが待って散ることもない。
電車の踏切もない。秋に紅葉が黄色や赤に染まることも、晩秋に息が白くなって冬の訪れを感じることも、雪が降った時の静けさやかじかむ感覚もないから。

私の話になるが、高校時代に海外でホームステイをしたことがある。
そのとき、ホームステイの家族から「日本で桜が有名なところはどこ?」と聞かれたのだが、うまく答えられなかった。
沖縄の桜は寒緋桜。1月~2月に咲き、散るものではなく落ちるもの。本土の桜とは全く違う。
沖縄で日本人として過ごしてきたのに、日本らしさを知らないことが悔しくて、それがきっかけで京都の大学を選んだ。京都で大学生活をしたときも、気候、文化に慣れるのに必死だった。方言が通じないし、標準語も訛りが強すぎて通じない。生活の何もかもが沖縄と違い過ぎて、最初の一年は自分は外国から来た留学生だと思って生活しようと思っていた。
それに加えて、沖縄というルーツで本土の人から異分子扱いされることも多かった。関西で12年過ごした中で、沖縄に電気は通ってるの?とか虫を食べるのが当たり前なんだよね(笑)だとか下に見るような発言をされたのは一度や二度だけじゃない。

いざ日本の別の場所に行って何もかも違う、むしろ自分が沖縄で見てきたものが全部日本らしいものとは違ってたんだというのを目の当たりにすると、結構悲しいような傷ついたような気持ちになる。

これは私だけじゃなく沖縄を出て本土で生活したことがある友達や先輩、親戚も同じようなこと言っていた。

さらに沖縄の人はわりと沖縄にルーツがあることを大事にするところが多い。

滝がどのくらいその沖縄ルーツを大事にしているのか分からないが、アメリカで生活するなかで、彼は「日本人」として認識されていただろう。日本人として、日本本土の文化を知り、その文化圏で生きてきた人だと。

滝もアメリカでの生活のなかで、自分が生まれた沖縄の文化はいわゆる日本らしいものとは全く違うことを知り、アイデンティティーが揺らいだことがあるんじゃないだろうか。
アメリカという異国で、自分が日本(本土)のルーツを知らないのに日本人として認識されるという過程は滝に「和風」に対する執着や憧れを与えたのではないか、それが紅月にこだわる理由ではないかと思う。

おそらく紅月加入はそんな滝のアイデンティティに対する執着も絡んでいるのだろうが、それが今回のストーリーでつまびらかにならず、上澄みしかすくえてないのが致命的な欠陥だと感じた。



滝の沖縄生まれというルーツをもっと大事に扱ってくれ





おいハピエレ、沖縄には雑煮の文化はないぞ。
正月は中身汁かイナムドゥチだわ。
あと「○○なんさ~」「あるんさ~」とは言わない。
「○○なわけさ~」「あるわけさ~」にしてくれ。

滝の「沖縄生まれアメリカ育ち」という設定。
沖縄県民からの視点だと真っ先に浮かぶのはアメリカ軍人と沖縄県民の子という組み合わせ。

在日米軍基地の約7割が集中する沖縄では国際結婚率が5.0%で全国平均の3.7%を上回っている。しかしこれは結婚率の話。
実際は子供をなした後、外国人夫が本国に帰国し、母子は沖縄に残り、母子家庭や貧困に陥るケースも少なくない。実際現在の沖縄県知事・玉城デニー氏がそんな来歴を持ったアメラジアンだ。

これはあんスタ内で全く言及されてないことなので憶測にしかならないのだが、両親の話が今のところ出ていないうえ、孤児院で兄貴分だったという滝の設定はわりと沖縄のデリケートな部分を彷彿とさせる。

アドニスですら「アラビア半島の小さな国」とぼかしているし、関西弁のみかやこはくは出身地を明確にしていない。

それなのに滝だけ明確に「沖縄生まれアメリカ育ち」と固有名詞出してまでキャラ付けしているのってなんで?
キャラ被りを防ぐとしても、あえてルーツを明確にしているならそれなりの理由があるんだろうか。
それならば文化に対してのディティールも細かく、リスペクトを持っていてほしい。




新生紅月のコンセプト迷子すぎん?


滝の沖縄生まれアメリカ育ちのキャラ設定が迷子だったとしてもここはしっかりしてほしかった。

新曲がこれまで紅月がコンセプトとしてきた和風とはかけ離れた曲調。
衣装もかろうじて紅型モチーフかな…といえる柄で、しかも洋装。というかぱっと見中華だよね。

なんで今回のイベントでサブマリンみたいなコンセプトにできなかったんだ…楽曲のワンフレーズに琉球音階使うとかじゃ駄目だったんか…むしろサブマリンでできたのになんで今のイベントでできてないんだよ…

紅月with滝維吹のイベントを冠するなら、紅月に加入するなら、尊重すべきは新しいキャラを軸に繰り広げられる展開とコンセプトではない。ずっと紅月でありつづけた3人に決まってんだろ。
10年間かけて構築された紅月3人を軸としたコンセプトとストーリーがもっと納得できる形で表現されててほしかった。

今回それができてないどころか紅月全員のキャラが改変されたような(今までのストーリーで言及されてた物事が全部反転したような)内容を話させているからこれだけ炎上していると思う。

流星隊が明確に世代交代したユニバースの時は全23話だったけど、今回紅月のストは全18話。あんスタ10年目で新メンバー加入させるという状況でこのボリュームは正直少ない。
ユニバースと同等か、それ以上に紅月が新体制を迎える葛藤や悩み、希望、滝の抱える物語にも、もっともっとストーリーが必要だと思う。

もっと知りたかったよ。鉄虎が入りたくても入れなかった紅月になぜ滝がすぐ入れたのか。
敬人と紅郎を尊敬しずっと紅月を守ろうと必死だった颯馬がけろりと新体制を受け入れたのかも。



余談:沖縄は和風じゃないのか


Xで見かけた今回のイベントの感想の中に「沖縄は和風じゃない」っていう声をたびたび見かけた。
沖縄県民としては勝手に「あ、沖縄は和風じゃないってことは沖縄って日本じゃなかったんだ?自分日本人だと思ってたんだけど?」ってちょっと複雑な気持ちになった。

私は13年間沖縄の古典舞踊を習っていたので沖縄文化や歴史に触れることが多かったし、県民の中でも割と詳しい方だと思っている。
そんな私からすると、確かに沖縄には独自の文化がある。

でも「和風じゃない」と言い切られると、「日本の一部じゃない」みたいに言われてるようですっっっごいもやもやするんですよね。


沖縄の方言には日本の古語の名残が見られるし、琉球王国時代も公文書でひらがな使ってたよ。
三味線のルーツは沖縄の三線(中国の三弦が琉球へ渡来したもの)だよ。
琉球王国時代の舞踊は能楽の形を参考にした部分が多いし、組踊は能楽と歌舞伎を参考につくられてるよ。
エイサーだって浄土宗の念仏踊りがもとだよ。



確かにぱっと思い浮かぶ沖縄文化のイメージは大衆的なイメージの「和風」ではないかもしれない。
けれど、それでも日本の文化と吸収しあって今の「日本の沖縄」と「沖縄の文化」があるので、そう突き放したような発言しないでほしいな…と思いました。


ここまで書いたけどやっぱり滝、エスプリでもソロでも良かったじゃんという気持ちはある。
あんスタに加入脱退卒業要素求めてないんでこれ以上NCTみたいなことせんといてくれ…

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是ことり(ここ ことり)
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