\ケアラー・ヤングケアラー支援/全国キャラバンVol.1(後編)
※この記事は「ケアラータイムズ 第6号」(2024年6月号)からの転載です。
2020年、埼玉県で全国初のケアラー支援条例が成立して以来、条例化の流れは全国へ波及。2024年4月1日時点で、9道県21市町がケアラー支援に関する条例を制定しました(地方自治研究機構調べ)。この流れをますます加速化させるため、ケアラータイムズ編集部では、2023年より「全国キャラバン」をスタート。全国各地を行脚し、各自治体での条例化や地域におけるケアラー支援のあり方などについて議論し合います。今回は、後編として、2023年9月に訪れた北海道で伺ったお話をまとめました。
*前編はこちら*
4 北海道 江別市
ファストフード店やキッチンカーで相談会を開催
■設立の経緯
江別市の介護施設で働いていた際、悩みを抱える介護者の存在を知り、支援しようと職員有志とともに立ち上げました。当時、北海道ではあまりケアラー支援の情報がなく、先進的な取り組みをされていた栗山町を訪問し、出会った方々に背中を押していただきました。江別市には大学が4つあり、若者が多くいるため、ヤングケアラー支援もすぐに取り組み始めました。
■最近の活動
地元のラジオ局とコラボしてヤングケアラーのキャンペーンを実施しました。また、子どもたちが安心して過ごせる場所であるファストフード店をお借りして、何でも話せる居場所づくりも実施。こちらから誰かのフィールドに出向くこと=アウトリーチを大事にしており、「ケアラーカー」といってキッチンカーで道の駅を訪れ、相談を受けることもあります。
■今後の目標
まずは道内でケアラー支援の活動をしている人たちがつながって一枚岩になれたら。そして、全国ネットワークのようなもので全国の仲間とつながり、熱を感じ合えたら嬉しいですね。
5 北海道 栗山町
「福祉のまちづくり」に取り組んで
■福祉のまちづくり
栗山町は、歴史的に「福祉のまちづくり」を推進してきた自治体です。象徴的なのが、1989年に町立では全国初の介護福祉士養成学校を開設したこと。もともと共働き世帯、生活困窮世帯、障害児等のサポートが手厚く、その素地が現在のケアラー支援につながっています。
■ケアラー支援で大切なこと
医療・福祉・保健・教育・民間企業・住民がいかに連携できるかですね。ケアラー支援は行政にすべて責任があるのかというと、それは違う。条例ができただけ、調査をしただけでは何も始まらない。住民は何ができるか、専門家はそれぞれの分野で何ができるか、全体で考えていくことが大切です。
■活動を全国に広げる
現場の声を地域から道庁へ拾い上げ、道から国に意見していく。川の流れを逆流させます。介護保険改正や、マンパワー不足といった大きな課題には、やはり国にも動いてもらう必要があります。
6 北海道 胆振・日高
北海道ならではの課題に向き合って
■児相とヤングケアラー支援の兼務
仕事にやりがいはありますが、業務の幅が広い上に、襟裳岬から函館の手前の豊浦町まで広範囲をカバーするので、時間的・予算的に厳しいものがあります。漁師、農家、競走馬の厩務員をされているご家庭もあって、学校を休んで家を手伝うのが当たり前の地域もあるので、どこまでが家の手伝いで、どこからがヤングケアラーなのか難しいですね。ヤングケアラーと気づいて市町村につないでも、人員不足で対応しきれない自治体もあります。
■今後の展望
子どもを支援しようとすると、学校や教育委員会は協力し合えるまでのハードルが高いです。しかし、周りと連携しようとする校長先生や、子どものために一生懸命な先生方をたくさん見てきました。そんな先生方をもっと応援して、地域の一人一人が強みを発揮しながら助け合える、風通しのいい社会が理想。学校や行政に任せきりにせず、地域住民が議論やお世話をし合えるような、オープンなコミュニティーをつくるのが夢です。