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ボールという琥珀色の液体。

 東京都葛飾区には当区発祥のアルコール飲料がある。その名も焼酎ハイボール、または下町ハイボールなどと呼ばれるものだ。ご存知だろうか? これを酒場では略してボールと呼ぶ。

 主にもつ焼き屋などの安価な大衆酒場にて供される薄っすらと琥珀色のお酒です。
焼酎と謎のエキスを混ぜ合わせたボールの素を仕込んでおき、それを強炭酸で割ります。割る炭酸水は瓶に入ったドリンクニッポンの物が良いだろう。なにせ葛飾区で製造されている炭酸だからだ。

 このボール、葛飾は堀切辺りが発祥となっており、戦後の復興期に町工場などが多かったため、労働者が早く安く酔える飲み物として人気を博したわけである。そもそも、ホッピーなどもビールの代替品として安価な焼酎を美味しく飲むために開発された商品であり、このボールも源流は一緒なのです。

 基本的には氷を入れず、キンキンに冷えたグラスに冷やしたとボールの素(焼酎+謎エキス)を注ぎ、冷えた炭酸で割り、レモンスライスを浮かべれば出来上がります。
 不思議なほど口当たりがよく、どんな食事にも合うと思いますが、ここはやはり脂っこい焼きとんをアテにして飲みたいものです。個人的には塩ではなく、コッテリとしたタレが合うと思います。

 ここで謎のエキスを少し説明しておきましょう。お店によってはこのエキスから手作りしてるところもあります。その場合、レシピは門外不出でお店の人しか知りません。
 自家製でないお店は、天羽(てんぱ)飲料が製造販売している「天羽の梅」というシロップ(エキス)を焼酎と前割りして寝かしたものを炭酸で割って提供しているところが多いですね。しかし、この前割りの比率でも大きく味が変わるため、比率ですら秘密となっています。また、使う甲類焼酎も各店で銘柄にこだわりがあり。聞いたこともないような地方の焼酎を使ってるところも多いようです。

 私は目黒区の出身で葛飾区に引っ越してきたのは8年前、ボールを知ったのは7年ほど前でしょうか、葛飾区発祥のローカルドリンクがあると聞いて飲みに行かないわけにはいきません(笑)。

 もつ焼き屋など堀切を中心に綾瀬、亀有など色々なところに行っては、もつ焼きとボールを楽しみました。
 中でも1番好きだったボールは、ボールBAR「喜多G」のボールでした。地元堀切出身のマスターが若い頃に飲んだボールを再現したものです。この店は焼きとんはありませんが、美味しいおでんと工夫を凝らした気の利いたツマミが嬉しかったなぁ。

 また、ウイスキーの品揃えも多く、ボールをチェイサーにウイスキーを飲むのが最高だったのです。シングルモルトとチープなボールが絶妙に合うのです。
 残念なのはマスターが亡くなってしまい、お店も無くなり、二度とこのボールを飲めなくなってしまったこと…。

 ここまで、手作りのボールの話でしたが、お店によっては酎ハイサーバーの焼酎タンクにボールの素を投入して、ガスボンベからの強炭酸でボールを提供する強者のお店もあります。利点は素早く提供することが出来ますが、どれだけボールの需要が多いんだよと笑ってしまいます。
 また、氷を入れるか入れないか選べる店もあります。ここは信じられないくらいアルコール度数が高く、最初に飲んだ時は、なんでこの杯数でこんなに酔ってるのかと思いました。なので、氷を入れてゆっくり飲む人も多いようです。氷の量も1つ、2つから選べるようになっています。

 このように葛飾区で生まれ、葛飾区で大人気のボールですが、隅田川を都心に向かって超えると、全くと言っていいほど存在が希薄になります。提供しているお店もありませんし、ボール自体を知ってるという人も急激に減るのです。
 未だに浅草はもとより、上野や日暮里界隈でも見かける事はありません。

 気になった方、一緒に葛飾で飲みませんか??(笑)

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