絵本でイランの今に触れる~「2ひきのジャッカル」1000年以上前に生まれたおはなし
これは、1000年以上むかしに作られた話である。
西暦8世紀なかばに生まれた物語集「カリーラとディムナ」におさめられている「ライオンと牛」という話をベースに書き上げられたそうだ。
8世紀というと、日本は奈良時代。聖武天皇が大仏を作り、国内初の法令文章「大宝律令」が完成した頃。中国は唐と呼ばれ、かの有名な楊貴妃がやりたい放題やっていた。
西アジアではイスラムが勢力を拡大し、ヨーロッパではフランク王国がローマ教皇とタッグを組んでキリスト教の勢力範囲を広げようとしていた。
そんな時代に生まれたこの「2ひきのジャッカル」。
そこにはどんな教訓が詰まっているのか。
まず、ジャッカルというのが、なんとも外国風で良い。日本で言うところの、キツネ的ポジションだ。
ストーリーはというと……。
2匹のジャッカルのうち1匹が、森の王様であるライオンの手下になりたいと思っていた。なんとかライオンに褒められ手下に加えてもらうべく、人間に置き去りにされた家畜の牛(怖い鳴き声をあげる)が、ライオンの召使になるよう取り計らう。(ライオンは牛の正体を知らず、洞窟に引きこもってしまうほど怖がっていた)
うまーく牛を説き伏せてライオンと面会させ、牛はライオンの手下になる。物知りな牛はライオンの手下どころかベストフレンドになるが、一方でこずるいジャッカルの手柄(牛をライオンに紹介した)はすっかり忘れ去られてしまった。
やっかんだジャッカルは、こうなったら牛を倒すしかない!と意気込むが、もう一匹の温和なジャッカルには、余計なことをするなとたしなめられる。
どうしてもライオンの手下になりたいジャッカルは、牛とライオンを対立させるよう嘘八百を並べ、ついに両者は戦うことになってしまう。結果、ライオンが牛を殺してしまう。こずるいジャッカルは、これで遂に自分もライオンの手下になれると喜ぶ。
親友を殺してしまったことを激しく後悔したライオンは、本当に牛がライオンを裏切ろうとしていたのか聞き込みをする。そこでジャッカルのついた嘘がばれ、こずるいジャッカルは森から追放されてしまう。
残された温和なジャッカルも、友達の暴走を止めることができなかたことを後悔し、友達を追って森を出ていく。
この話の教訓はなんだろうか?
他人を貶める嘘から得るものはない。
どうだろう?
いろいろな学びがこの話には詰まっている。読み手によって得る教訓は異なるだろう。
翻訳家の愛甲恵子さんのあとがきを参照すると、
とある。また、
ともある。
1000年以上も昔から、人間の虚栄心や悩みどころは変っていない。
そのことが素直に驚きであり、人間の進化とは何かと考えさせられた。
1000年の時を経て、いくらテクノロジーが進化しても、人間性の根本のところは変らないのだと‥‥‥。
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