
【コンクエスト・ピルスキャッスル】
【コンクエスト・ピルスキャッスル】
ノバラ・ストリートの一角、ネオサイタマ立カブキシアター廃屋。通常ならば一部退廃カブキパンクスしかいないであろうその地は今、赤らんだ光でライトアップされ、異様なアトモスフィアを放っていた。
「門番の仕事は大変なんですけお」「こっちも同じなんだからぶつくさ言わないでくだち」赤らんだ廃屋の前、赤漆塗りの門の左右には二人のぴるすが門番の様に立ち、他愛ない会話を続ける。
「そろそろ交代なんですけお?」「ハァ…あと十分だから大人しく待っ」不意に右ぴるすの言葉が途切れる。「…どうしたんですけお?」左ぴるすは訝しみ、右ぴるすへと向き直った。…だが、その目線の先には誰も居ない。
「けお…?」左ぴるすは周囲を見渡す。しかし、廃屋の周囲は何ら変わりなく静寂に包まれたままだ。何者の姿も気配も無い。「オイ…どこに行ったんですけお…?」返事はない。
「い…異常事態なんですけお…!?」左ぴるすは通報すべく、慌てて携帯端末に手を掛けた。その瞬間。「イヨーッ…!」控え目なカブキシャウトが響き、白黒の影が彼の視界を覆った。
◆
「イヨーッ!」鋭いカブキシャウトと共に扉が勢い良く開く!「ケオアバーッ!」哀れなぴるすが扉と壁に挟まれ圧死!扉を越え現れたのは、1人の白黒カブキ装束の男!
「ナンデスケオッコラーッ!」「ザッケオコラーッ!」守衛武装ぴるす二体が威圧的なぴるすスラングを叫びながら危険な釘付き角材を振りかぶる!だがそれよりも速く!「イヨッイヨーッ!」「「ケオアバーッ!」」鋭いカブキチョップの2連撃が守衛ぴるす二体の頸椎を破壊し即死させた!
そのあまりに素早い殺戮に廃屋内の者は誰一人として気付くことはなかった。カブキ装束の男、カブキニストは周囲を確認し、速やかに三つの死体を廊下に設置された大型用具箱内に隠蔽すると、気配を消して動き出した。
ここネオサイタマ立カブキシアターの巨大な廃墟は外部の赤らんだライトアップのみならず内部にまで手が加えられており、今や廃墟ではなく怪しげな城めいた姿へと変貌している。
この違法改築を秘密裏に施したのは自身らを『聖ぴるす帝国』と自称するぴるす集団である。そして彼らはここを拠点に破壊活動を行うと予告した。阻止を望むならぴるすの管理を放棄し、自由を与えよ。それが彼らの要求である。
無論コウライヤはテロに屈しはしない。自社の商品を守り、破壊活動も起こさせない。彼らが破壊活動を始める前に…この問題が表沙汰になる前に彼らを秘密裏に葬る、それがカブキニストのCEOとしての任務だ。
殺すべき相手は五人のニンジャぴるす。首謀ぴるすと四人の配下。他の木っ端モータルぴるすなど後でどうとでもなる。構わずにニンジャぴるすを殺すべし。
カブキニストは「ニンジャぴるす以外立入禁止」と書かれた看板を越え、二階へ続く階段を登り出し、扉の前で立ち止まる。扉の先に感じる気配。…ニンジャぴるす。カブキニストは意を決し、警戒しながらその扉を蹴破った。
扉を越えた先には畳の新調されたカブキ舞台が広がる。カブキニストがタタミへ足を踏み入れたその瞬間!部屋の上下左右から無数のヤリが勢い良くカブキニストへ射出された!
「イヨーッ!」カブキニストはヤリを難なく払い除ける。彼ほどのカブキアクターニンジャにこのような子供だましなトラップなど通用せぬ!カブキニストは部屋中央へ歩みを進める。
部屋の中央、そこにはヤリを携えた一人のニンジャぴるすがアグラしていた。彼はカブキニストがトラップを容易く突破する事を予期していたかのように微塵も動揺せず、静かに立ち上がる。
「ドーモ、カブキニストです」先んじて行われたアイサツに、ニンジャぴるすはヤリを構え応じた。「ドーモ、カブキニスト=サン、我は聖ぴるす帝国がシテンノの一人、パルチザンです」
「ヤリトラップは言うなればスシのガリ…お遊びに過ぎないんですけお。真のジゴクは今始まる…我がヤリ・ドーによって!」パルチザンは油断ならぬヤリ・ドーの構えを取る!カブキニストは臆することなくカブキを構えた…!
◆
「イヨーッ!イヨーッ!」カブキニストの容赦ない左右カブキパンチのコンビネーションがパルチザンの顔面に叩き込まれる!「ケオーッ!?ケオーッ!?」
パルチザンはその常人の三倍近いニンジャ腕力とヤリ・ドーの掛け算による百倍のカラテによって一時はイクサのイニシアチブを握りカブキニストを追い詰めていた。だがカブキニストは忍耐強く一瞬の隙を待ち、そして彼の持つヤリを奪い取り、へし折ったのだ!
己の得物を失ったパルチザンはもはやカブキニストに太刀打ちできぬ!「ハイクを詠みたまえパルチザン君!イヨーッ!」鋭いカブキチョップに首を切断され、パルチザンは爆発四散した。「サヨナラ!」
「スゥーッ…ハァーッ…!」カブキニストは呼吸を整える。二階の番人パルチザン。実際油断ならぬ相手であった。ヤリを奪い取る隙が無ければ敗北していたのは己だったかもしれぬ。
だが、まだ終わりではない。ほんの一瞬の休息の後、カブキニストは再び歩き出した。
カブキニストは三階扉の前で立ち止る。扉の先に感じる気配。…ニンジャぴるす。カブキニストは意を決し、警戒しながらその扉を蹴破った。
扉を越えた先には室内とは思えぬ土の床が広がり、様々な植物が植えられていた。カブキニストは警戒しながらフロアへと足を踏み入れる。その時!無数のツタ植物が土を割って飛び出し、カブキニストを目掛けて伸びる!
だが、この程度カブキニストの敵ではない!「イヨッイヨッイヨッイヨーッ!」細やかな連続カブキチョップで触手を切断し追い払う!そして部屋の中心へと跳躍した!「イヨーッ!」
カブキニストが着地した部屋の中央、そこには深緑色の装束を纏う一人のニンジャぴるすがアグラしていた。彼はカブキニストの襲来を予期していたかのように微塵も動揺せず、静かに立ち上がる。
「ドーモ、カブキニストです」先んじて行われたアイサツに、ニンジャぴるすは応じた。「ドーモ、カブキニスト=サン、俺は聖ぴるす帝国がシテンノの一人、プランターです」
「パルチザン=サンを殺して調子に乗ってるかもしれないが、俺はヤリしか取り柄の無いあの野郎とは格が違うんですけお。さあ俺のバイオツタ植物の肥料になってくだち!」プランターがカラテを構えると、周囲の土からツタ植物が触手めいて生え、カブキニストを囲う!カブキニストは臆することなくカブキを構えた…!
◆
「イヨーッ!」「ケオーッ!?」カブキニストの鋭いカブキックがしたたかにプランターの顎を砕き、彼の体を空中へと浮かび上がらせる!
プランターは無数に生えるバイオツタ植物を操るジツにより擬似的多対一の状況を作り上げ、一時はイクサのイニシアチブを握りカブキニストを追い詰めていた。だがカブキニストはその優れたニンジャ観察力によりバイオツタ植物が同じ根幹より生える1つの個体であることを見出し、その根をカブキの炎で焼き尽くしたのだ!
バイオツタ植物による援護を失ったプランターはもはやカブキニストに太刀打ちできぬ!「肥料になるのは君の方だ!イヨーッ!」鋭いカブキ踵落としが宙に浮いたプランターを地面へ蹴り落とす!「ケオアバーッ!」プランターは頭から土に埋まり、爆発四散した。「サヨナラ!」
「スゥーッ…ハァーッ…!」カブキニストは呼吸を整える。三階の番人プランター。実際油断ならぬ相手であった。バイオツタ植物の特性に気付けなければ敗北していたのは己だったかもしれぬ。
だが、まだ終わりではない。ほんの一瞬の休息の後、カブキニストは再び歩き出した。
カブキニストは四階扉の前で立ち止まる。扉の先に感じる気配。…ニンジャぴるす。カブキニストは意を決し、警戒しながらその扉を蹴破った。
扉を越えた先には巨大なプールが設置されていた。プール内には透き通った水が満ち、水面は静かに波打つ。カブキニストは警戒しながらプールへと近づく。その瞬間!「ケオーッ!」水面が激しく波打ち、意志を持つかのように水の塊が!カブキニストへと飛んだ!
だが、カブキニストは油断なくカブキで応じる!「イヨーッ!」激しい平手打ちが水の塊を打ち砕き、水が四方六方へと散った!そして…おお!見よ!散ったはずの水が蠢き、合わさり、再び一つの塊へと戻る!
水の塊はグネグネと己の形を整え、四肢と頭部を持つ透明な人の形へとなった。そう、彼はれっきとしたニンジャぴるすなのだ!
「ドーモ、ペネトレイター=サン、カブキニストです。…久しいな」カブキニストのアイサツにニンジャぴるすが応じる。「ドーモ、カブキニスト=サン、お久しぶりです。私は聖ぴるす帝国がシテンノの一人、ペネトレイターです」
そう、彼らは互いを知っている。ペネトレイターというニンジャぴるすはコウライヤが産み出した透明ゲルの体を持つバイオニンジャぴるすであり、彼はコウライヤの徒であった。しかしある時出奔し以降行方不明となっていたのだ。
「カブキコードを解かれた私はもはや自由!この自由を皆にも与える為に貴方は死んでくだち!」ペネトレイターが透明な流体ゲルボディでカブキニストへと飛び掛かる!カブキニストは臆することなくカブキを構えた…!
◆
「イヨォーッ!」KABUKOOOOOM!ミエによる激しいカブキ爆発がペネトレイターのゲルボディを四散、蒸発させ、テニスボール大の塊が残った。「ケオーッ…!」テニスボール大のペネトレイターが呻く。
ペネトレイターは物理的破壊を無効にするその流体ゲルボディにより、一時はイクサのイニシアチブを握りカブキニストを追い詰めていた。だがカブキニストは核を破壊されれば死ぬというペネトレイターの弱点を知っており、ミエにより核以外の水分を全て消し飛ばしたのだ!
プールも干上がり補給する水分も無いペネトレイターはもはやカブキニストへ太刀打ちできぬ!「君の自由もここまでだ。イヨーッ!」カブキニストに核を握り潰され、ペネトレイターは水飛沫を散らしながら爆発四散した。「サヨナラ!」
「スゥーッ…ハァーッ…!」カブキニストは呼吸を整える。四階の番人ペネトレイター。実際油断ならぬ相手であった。自社の実験体である彼の弱点を事前から知っていなければ敗北していたのは己だったかもしれぬ。
だが、まだ終わりではない。ほんの一瞬の休息の後、カブキニストは再び歩き出す。
カブキニストは五階扉の前で立ち止まる。扉の先に感じる気配。…ニンジャぴるす。カブキニストは意を決し、警戒しながらその扉を蹴破った。
扉を越えた先には石畳が敷き詰められ、その中央には一人のぴるすがアグラしていた。小手先のトラップやアンブッシュの類は無し。油断ならぬアトモスフィアを纏うニンジャぴるすを前に、カブキニストは先んじてアイサツした。
「ドーモ、カブキニストです」ニンジャぴるすが応じ、オジギをする。「ドーモ、カブキニスト=サン、私は聖ぴるす帝国がシテンノの一人、そして副官を務めるパトリオットです」
両者はアイサツ以上の言葉も無く見合う。張り詰めたアトモスフィアが告げる。…パトリオットは今までのニンジャぴるすシテンノより更に上の実力者だ。
「イヨーッ!」カブキニストは深く踏み込み、稲妻めいた速度の右ストレートを繰り出した!「ケオーッ!」パトリオットは深く沈み込んで拳を躱し膝破壊ローキックを繰り出す!「イヨーッ!」カブキニストは垂直に飛びローキックを躱す…だが。
「ケオーッ!」「ヌゥーッ!」宙に浮いたカブキニストをパトリオットの対空ポムポムパンチが捉える!カブキニストはクロス腕ガードで受けるが、衝撃でタタミ十枚ほどの距離を離された!
そしてそこへ!「ケオケオケオーッ!」空へカラテパンチ素振りをするパトリオットの腕からエネルギー球体…カラテミサイルが分離しカブキニストへ降り注ぐ!「何ッ!グワーッ!」被弾!
カブキニストは瞬時に姿勢を立て直す。パトリオット。ローキックで足を刈り、空中へ避ければ対空ポムポムパンチによる追撃が迫り、距離を取ればカラテミサイルが迫る。全距離に対応した危険なカラテ。
だが関係ない!コウライヤの為、害を与えるぴるすは全て殺す!飛来するカラテミサイルを前に、カブキニストは臆することなくカブキを構えた…!
◆
「ケオーッ!」ローキックがカブキニストの足を破壊すべく迫る!「イヨーッ!」カブキニストは垂直跳躍回避!おお…だがそれはポムポムパンチにより迎撃されるパトリオットの筋書き通りの動きだ!判断を誤ったのか!?
「ケオーッ!」定石通りパトリオットは対空ポムポムパンチを放つ!例えガードしようとも再び距離を離されカラテミサイルによる一方的攻撃が始まる!もはや打つ手は無いのか!
…否!「イヨーッ!」カブキニストの動きを見よ!彼は空中で己の体をくの字に曲げ前屈めいた姿勢となる!その頭の上をパトリオットのポムポムパンチが通過!「何だと…!」
おお…コウライヤ!パトリオットが繰り出すローキックとポムポムパンチ、その二つの間に存在する僅かな安全地帯へとカブキニストは己の体を畳み、捻じ込んだのだ!「イヨーッ!」カブキニストが頭上のパトリオットの腕を掴み、瞬時に絡みついて肘関節を逆方向へ折り曲げる!「ケオーッ!?」
「イヨーッ!」腕から離れたカブキニストは背中から着地後、即座にブレイクダンスめいたウインドミル回し蹴りを放つ!「ケオーッ!?」パトリオットの両足破壊!
イクサのイニシアチブは既にパトリオットの手から離れた!両足と腕を破壊された今、カブキニストへ太刀打ちできぬ!「イヨーッ!」カブキニストに頭部をストンプされ、頭蓋を破壊されたパトリオットは爆発四散した。「サヨナラ!」
「スゥーッ…ハァーッ…!」カブキニストは呼吸を整える。五階の番人パトリオット。実際油断ならぬ強敵であった。彼のカラテ内に存在する安全地帯に気付けなければ敗北していたのは己だったかもしれぬ。
だが、まだ終わりではない。この事件の黒幕であるニンジャぴるすがまだ残っている。ほんの一瞬の休息の後、カブキニストは最後の戦いへ向けて歩き出す。
◆
豪華に飾り付けられた無人の六階、七階、八階、そして九階を越えカブキニストは最上階である十階へ到達する。「イヨーッ!」扉を蹴り破り侵入!
その部屋も道中の階層と同様に豪華に飾り付けられ、中央に置かれた玉座に喪服めいた装束を纏う一人のニンジャぴるすが座る。「やはり最上階か。豚とイディオットは高い木に登るというマサシのハイクは正しいようだな」
ニンジャぴるすがソファから立ち上がる。「ドーモドーモ、わざわざおいで下さって。お時間は平気なんですけお?」「こちらは君と違って忙しいのだ。夜が明ける前にさっさと終わらせてもらおう」
カブキニストが手を合わせオジギする。「ドーモ、カブキニスト…」その瞬間!「ケオーッ!」「グワーッ!」突如放たれたキックにカブキニストが蹴り飛ばされる!
ナ…ナムサン!何という事であろうか!信じられぬ!このニンジャぴるすはあろうことかカブキニストのアイサツ中に攻撃を仕掛けたのだ!ニンジャのイクサに詳しくない方であろうともこれがあまりにもシツレイな許されざる卑劣行為である事はお分かりであろう!「ハーハー!ドーモ、プロファネイションです」ニンジャぴるすはオジギもせず言い放つ!もはやニンジャのイクサに対する冒涜だ!
普通のニンジャであっても到底許せぬシツレイ行為。礼儀礼節を重んじるカブキアクターニンジャならば猶更だ!「舐めた真似を…!プロパゲイション君!死にたまえ!イヨーッ!」カブキニストは赤く染まった顔で飛び掛かる!プロファネイションは嗤い、「クンリ!」奇妙なシャウトを上げた。
ポーン…ポーン…。不可思議な音が響く。黒い靄が両者を飲み込み、世界を水墨画めいたモノクロへと染める。ポーン…ポーン…。数多のUNIXが足元に転がり、空間に滲んで消える。墨絵めいた世界。サップーケイ……。
「ヌウーッ…!」カブキニストは唸る。おおいなるカブキと接続できぬ。
…カブキネシスもカブキエンハンスメントも使えぬ。
「この世界こそ我がフーリンカザン。ケオーッ!」プロファネイションがトビゲリを繰り出す!「イヨーッ!」左腕で防ぎ、右チョップのカウンター!「ケオーッ!」左チョップで相殺!
「ケオーッ!」ローキック!「イヨーッ!」カブキニストは側転めいた動きでプロファネイションの蹴りを跨ぎ越え、メイアルーア・ジ・コンパッソへと繋ぐ!「ケオーッ!」プロファネイションは後ろへ跳躍回避!
「ヌゥーッ…!この世界ではカブキは使えないはずなのに…この力はなんなんですけお!」プロファネイションは吼える!カブキニストがサップーケイ空間でもこれほどまでに強いのは彼にとって想定外なのだ!「おおいなるカブキから切断されようとも、この鍛えられた肉体と体に染みついたカブキが残っている限りぴるす君に遅れなど取るものか!」
「クソッ…死んでくだち、カブキニスト=サン!」BLAM!プロファネイションが隠し持った拳銃を撃つ!カブキニストが目を見開く!「イヨォーッ!」力強く踏み込む!これは暗黒カブキ奥義、トビ・ロッポー!
TELLING!カブキニストと衝突した銃弾が消し飛ぶ!「イヨォーッ!」「ケオアバーッ!?」バッファロー殺戮武装鉄道との正面衝突めいた重い衝撃がプロファネイションの全身を一瞬の内に破壊し尽した。「…サヨナラ!」
カブキニストは辺りを見渡す。ジツの主は死んだが自身は未だモノクロ世界に囚われたままだ。…自らこの世界の出口を見つけ、抜け出さねばならぬか。カブキニストは世界の果てを見つめる。
ニンジャぴるすは全て殺したが、加担したモータルぴるすの処分は未だ成らず。速やかに脱出し、殺戮を成さねば。カブキニストは両足に力を込めて駆け出す。…だがその寸前、不意にカブキニストの周囲に水墨画めいた影が無数に湧き上がった。
「ドーモ、プロヴォケイターです」「パラダイムです」「ポセイドンです」「プレイグです」それはかつて戦い、殺したニンジャぴるす達の影!「ヌウーッ…!」カブキニストはカラテを構えた。
◆
一階に放置されたぴるす達も異常に気付き始めていた。「さっきからなんか騒がしいし…おかしいんですけお」「どういう事なんですけお…」「そもそも開放するって言われて付いてきたのに結局奴隷じみた…」ぴるす達が不安げに会話する。
…その時。「イヨーッ!」カラテシャウトと共に彼らのいる部屋の窓が破壊され、何者かが部屋へと跳び込んだ!「けおおおおおお!?」「な…なんなんですけお!?」
フルフェイスメンポのニンジャは奥ゆかしくぴるす達にオジギし、アイサツした。「ドーモ、パニッシャーです」彼の純白のニンジャローブは薄汚れた廃屋室内であっても塵1つとして付かない。何らかの力場が防いでいる。
「それでは、コウライヤの任務で皆様には死んでもらいます」
◆
「イヨーッ!」カブキニストのキックがプライマリーの腹部を突き抜ける!「イヨーッ!」カブキニストのチョップがペインシェアの首を切断する!だが、影は倒しても倒しても次々と湧き出る。キリがない。
「このまま戦い続けるのは得策でない、か…!」パルスグレネードを投げ飛ばしながら考える。終わりがあるかも分からぬ戦いを続けるぐらいならば…。カブキニストは力を籠め、「イヨォーッ!」トビ・ロッポーでサップーケイ空間を駆けだす!消耗など気にしておられぬ。ピルグリムが轢かれて霧散した。
「イヨッイヨォーッ!」カブキニストは加速する。(出口はどこだ!)周囲を確認しながらさらに加速、周囲の風景が次第にカブキニストの視界前方へと集まってゆく。墨汁めいた世界が徐々に引き離される。靄が引き剥がされる!「イヨォォォォーッ!」
…気付けば、カブキニストは色のある世界に佇んでいた。我に返り、瞬時に状況確認をする。部屋にプロファネイションの姿は無し。確かに死んだのだろう。…そして、彼の眼前には純白のニンジャが立っていた。カブキニストは瞬時にカブキを構える。
「ドーモ、カブキニストです。何者だ、プロファネイション君の仲間か」「ドーモ、カブキニスト=サン。私はパニッシャー、コウライ社所属のニンジャぴるすです。反逆ぴるすの処分は私が完了させておきました」
「なんだと…?お前は一体誰の…」「それでは、シツレイします」パニッシャーは質問に答えず、窓から外へ跳び去る。パニッシャー。ぴるすを一切感じぬ自我。鋭いカラテとカブキ。誰の差し金か。「…考えるのは後だ」今やるべきは残党の確認と処分、そして隠滅。夜明けはそう遠くない。
◆
「ただ今戻りました」パニッシャーはフスマの前に跪き、告げる。「おかえりなさい」フスマが開き、部屋の中央にアグラする少年が答えた。彼はニンジャではない…少なくとも今はまだ。
「どうでした」「滞りなく執行致しました」「そう。お疲れ様」少年はパニッシャーへ顔も向けない。「休息を取ってください」「御意」少年の言葉に応じ、パニッシャーの姿は闇に溶けて消えた。
少年、マツモト・キンタロはカタナで木材を削りブッダデーモン像を形作る。カタナで余計な部位を斬り落とす。節を斬り落とす。ささくれを削り落とす。薄明りの中、その音だけが響く。
ゼンめいた空気の中、一つのブッダデーモン像が組み上がってゆく。
【コンクエスト・ピルスキャッスル】終わり
カブキ名鑑
◆歌◆カブキ名鑑#20
【プロファネイション】
聖ぴるす帝国皇帝を自称するニンジャぴるす。己の勝利の為であればどんな行為も厭わぬ卑劣で邪悪な精神性の持ち主であり、アイサツ中に攻撃を行うという余りにもシツレイな行為すら臆することなく行う。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#21
【パルチザン】
聖ぴるす帝国所属ニンジャぴるすであり、聖ぴるす帝国のシテンノが一人。愛槍イチバンヤリを用いたヤリ・ドーは彼の通常の三倍近いニンジャ腕力と合わさり強大なカラテを生み出す。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#22
【プランター】
聖ぴるす帝国所属ニンジャぴるすであり、聖ぴるす帝国のシテンノが一人。ツタ・ニンジャクランのソウル憑依者であり、特殊なバイオツタ植物を操り
敵に360度全方位からの襲撃を仕掛ける。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#23
【ペネトレイター】
聖ぴるす帝国所属ニンジャぴるすであり、聖ぴるす帝国のシテンノが一人。バイオニンジャぴるす。そのバイオ流動ゲルボディは物理攻撃を無効化し、水分を吸って巨大化することも可能だ。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#24
【パトリオット】
聖ぴるす帝国所属ニンジャぴるすであり、聖ぴるす帝国のシテンノが一人。
ローキックとポムポムパンチ、カラテミサイルを組み合わせた3段構えの強力なカラテは遠中近の全距離に対応可能。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#25
【パラダイム】
プロファネイションのサップーケイ空間内に影として現れたニンジャぴるす。過去にカブキニストと戦い、そして敗れたようであるが、詳細は不明。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#26
【ポセイドン】
プロファネイションのサップーケイ空間内に影として現れたニンジャぴるす。過去にカブキニストと戦い、そして敗れたようであるが、詳細は不明。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#27
【プレイグ】
プロファネイションのサップーケイ空間内に影として現れたニンジャぴるす。過去にカブキニストと戦い、そして敗れたようであるが、詳細は不明。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#28
【プライマリー】
プロファネイションのサップーケイ空間内に影として現れたニンジャぴるす。過去にカブキニストと戦い、そして敗れたようであるが、詳細は不明。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#29
【ペインシェア】
プロファネイションのサップーケイ内に過去の影として現れた。
かつてカブキニストと戦い、そして敗れたようであるが、詳細は不明。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#30
【パルスグレネード】
プロファネイションのサップーケイ空間内に影として現れたニンジャぴるす。過去にカブキニストと戦い、そして敗れたようであるが、詳細は不明。
◆舞◆
◆歌◆
カブキ名鑑#31
【パニッシャー】
コウライヤ所属のニンジャぴるす。強大なカラテの持ち主。彼の体の周囲にはカラテ力場が生じているため生半可なカラテでは触れることすら叶わず、彼の純白のニンジャ装束には塵1つ付くことはない。
◆舞◆
K-FILES
!!! WARNING !!!
K-FILESは原作者コメンタリーや設定資料等を含んでいます。
!!! WARNING !!
ノバラ・ストリートに佇むカブキシアターの廃墟を拠点に反コウライヤ活動を行う聖ぴるす帝国を滅ぼすため、カブキニストは単身で廃墟へ潜入し、五人のニンジャぴるすと激しい戦闘を繰り広げる。
主な登場ニンジャ
プロファネイション / Profanation
コロス・ニンジャクランのグレーターニンジャソウル憑依ぴるす。自ら立ち上げた聖ぴるす帝国の皇帝を名乗る。キリングフィールド・ジツの使い手であり、ジツを中心に戦うニンジャが彼のサップーケイ空間に閉じ込められてしまえば己が実力を発揮できずに敗北するだろう。
その性格は下劣で、アイサツ中の攻撃の様な己の名誉を汚すシツレイ行為すらも躊躇なく行う。しかし、そのような性格ではあるが四人のニンジャぴるすと多くのぴるすを従えるカリスマの様なものは持ち合わせている。勝つためなら何でもする、勝ちに汚い…そういった点は見方によってはどうやってでも自分達を勝利させてくれるだろうという期待と信頼にもなるのだ。またペネトレイターのカブキコード(ニューロンに刻まれる忠誠の証の様な物)を恐らくはコロス・ニンジャクランの力によって解除したという具体的な功績もぴるすの心を集める事に繋がった。
パニッシャー / Punisher
オーラ・ニンジャクランのソウル憑依ぴるすであり、彼の体の周囲には常にカラテ力場が生じている。カラテ力場は他者のカラテや接触物体に対し斥力を発生させるので生半可なカラテの持ち主では彼の体に触れる事も叶わず、また、カラテ力場を突破出来てもその威力は大きく減退させられるだろう。
彼はコウライヤに所属するニンジャぴるすであるが、マツモト・キンタロの子飼いのニンジャぴるすであり、完成からさほど日数も立っていなかったため、カブキニストはその存在を知らなかった。
聖ぴるす帝国シテンノ
【一】パルチザン
ヤマト・ニンジャクランのレッサーニンジャソウル憑依ぴるす。優れたニンジャ腕力とヤリ・ドーを組み合わせた力強いカラテで戦う。互いに向かい合って戦う場合、ヤリは素手やカタナに対してリーチの差で優位を得られる。その利点を生かすため彼はカブキニストを遮蔽物の無いタタミ部屋で待ち受けたが、カブキニストに敗北し爆発四散した。
【二】プランター
ツタニンジャ・クランのレッサーニンジャソウル憑依ぴるす。本来であるならば己の体から生み出した、あるいは己の体を変化させたツタを操作するべきところを遺伝子改造で生み出されたバイオツタ植物を用いて補っている。バイオツタ植物を活かした戦闘を行うため土が敷き詰められた部屋で待ち受けたが、カブキニストに敗北し爆発四散した。
【三】ペネトレイター
スッパ・ニンジャクランのグレーターニンジャソウル憑依ぴるす。本来は体をほんの僅かな間流体化させる程度の力しか持たなかったがバイオ手術によって完全なる流体ゲルボディを得た。その体を活かすためにプールや水場を多く設置した部屋で待ち受けたが、カブキニストに敗北し爆発四散した。
【四】パトリオット
イカルガ・ニンジャクランのグレーターニンジャソウル憑依ぴるす。ニンジャソウルに由来するカラテミサイルのみならず鍛え上げられた己がカラテで戦う。自身のカラテとカラテミサイルを活かすためパルチザンのように遮蔽物の無い石畳部屋で待ち受けたが、カブキニストに敗北し爆発四散した。
メモ
このエピソードは分かりやすくニンジャスレイヤーの諸要素をカブキスレイヤーに導入していることが読んでもらえれば分かるだろう。今作と前作「ディジェネレイティッド・ドリームランド」そしてさらに前々作「パンデミック、ニンジャヴァイラス」の三作は全てカブキスレイヤーの方向性を巡るストーリーなんだ。前々作ではリアルニンジャの存在を、前作ではパロディ的展開を、そして今回は複数のパロディを混ぜたアンコシチュー展開を実験的に書いてみた。今作前作のパロディ展開に関しては今後は使われることはほぼ無く、ある種ではこの期間はカブキスレイヤーの迷走期間ともいえるかもしれない。けれどこの作品群を書いた経験はしっかりと僕自身の経験となって今後の作品内にも息づいている。
今作に登場するニンジャぴるす、それはボスであるプロファネイションやその配下のシテンノ、サップーケイの影やパニッシャーにはそれぞれ出自や今に至るまでのドラマを持っている。けれど彼らのそのドラマに強くフォーカスを当てる事はしない。このエピソードの主題はタイトルの通りぴるす城を征服することでありニンジャぴるすと連戦するカブキニストの姿だからだ。カブキのスクリプトに人々が求めているのはカブキアクターの強さとぴるすの死であり、ぴるす側のドラマではない。…とは言っても物語的に必要ならぴるす主題の話は気にせず作るけれどね。
この話は本来スレッド連載時は2800字程度の内容だったんだけれど筆が乗ってしまい8700字程度…実に3倍超の文字量になってしまった。シテンノ達も元々はそれぞれ3行で倒されて次へ進む内容だったのがイクサの始まりと終わりに触れる内容へと変わっている。スレッドでの更新と違いここでは文字数を気にせず書ける事はありがたいけれど、スレッドの文字数限界に無理やり押し込んだミニマルな魅力、コミカルな雰囲気が失われるのは少し寂しさを感じたりもする。そういった部分に魅力を感じてくれていた人はスレッド連載版の多少改訂版をまとめて出すこともあるのでそちらを読んでほしい。
カブキスレイヤー連載一年目はこのエピソードで終わり、年を越えた次回、ついにシュウメイが始まりカブキニストの話は一段落を迎える事となる。