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ガパオライスとせっかちな友人

ガパオライスを作った。
玉ねぎ、ピーマン、パプリカをみじん切りにして、ひき肉と炒める。長男と夫はナンプラーが苦手なので、鶏がらの素とオイスターソースで味付けする。でもナンプラーが入ってないとガパオライスっぽくならないから、ちょっとだけ入れる。
切り干し大根とジャガイモとウインナーをじっくり煮込んでスープにした。

刻んだり煮たり揚げたりしていると元気になる。

だから、こんがらがった頭の中を整理したい時は、いつもよりちょっとだけ手の込んだ料理をする事にしている。私が悩んだときはパーティみたいなメニューになるから、家族が喜ぶ。その後の洗い物も好き。シンクに山積みになったものを片付けていくと、心が落ち着くのを感じる。ついでにコンロの汚れをピカピカに磨き上げる。こういう生活の中の「いつもよりちょっとだけ」が出来た時、「大丈夫」だと自覚する。

とてもせっかちな友人がいる。

料理は「強火で焼いてできるもの」しか作らない。電子レンジの温め数分も待てないのだそう。映画は最初の10分が面白くないと見ることを辞めてしまう。本は結末を先に読む。カーリングを見ているとイライラするらしい。ビリヤードも同様で、球がゆっくり動いていくのが待てないという。

驚くのが待ち合わせ。彼女はギリギリ、もしくはやや遅れて現れる。せっかちなのに。理由を問うと、「自分が待ちたくないからギリギリを目指す」のだそうで、もはや感心してしまった。

私は彼女が苦手とするものは大体平気。待ち合わせ場所には30分ほど早くついて(彼女との待ち合わせの時は特に。遅れてくることを知っているので)本を読んで待っている時間がむしろ好きだ。

そんな彼女は、なぜだか私によく相談をする。彼女はここでもまた、せっかちだ。結果や答えをすぐに欲しがる。正反対の、じっくり考えるタイプの私にどうして相談してくるのか甚だ疑問である。というか、人生に関する問題の答えがそんなに短期間で出るはずもなく、それがまた、彼女をやきもきさせてしまう。


せっかちな彼女はいつも生き急いでいる。答えが出る前に、次の問題に立ち向かおうとする。そうして解決しない問題達が、彼女の心に積み重なっていく。息切れしながら急ぐ先が、果たしてどこなのか、何があるのか、何に辿りつきたいのか、自分でわかっていない。

彼女に足りないのは、自分と向き合う時間で、自分自身との対話だ。

答えは自分で出した方がいい。結局自分でたどり着いて這い上がるよりほかないのだから。



「煮物、作ってみたら?」

「揚げ物でもいいけど。」

そう続けたら、まるで見たことない生物を見るような目で不思議そうにしていたので、本気だよ、念を押した。

スペアリブとか手羽元、牛すじなんかがいいよ。唐揚げもいいよ。カラカラっていう油の音を聞いてると、落ち着くよ。

「できるかな~」と頭を搔いていた彼女、あれからどうなったかな。



ガパオライスとスープを作りながら、彼女の事を想った。










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