ゼラチンシルバープリントとは
※Xに書いた記事の転載です
自分の作品説明でよく聞かれること
僕は鶏卵紙や湿板を使って作品を作っていることもあって、人に作品のことを説明するときに「このシリーズはゼラチンシルバーで、それでこれは・・・」みたいな言い方をしています。でもまずここで聞いた人がつまづくのは、「そもそもゼラチンシルバーって何??」ということです。 僕をフォローしている人の80%くらいはそんなの知ってるわ❤️って感じだと思いますが、
説明すると・・・
ゼラチンシルバーの説明
ゼラチンシルバープリントとは、"ゼラチンに感光性のある物質(臭化銀や塩化銀など)を混ぜたドロドロの液体(乳剤)を紙に塗って乾かした紙"に写真フィルムの像を転写したもの。この感光性をもった紙のをことを”印画紙”と呼びます。モノクロもカラーもあります。 巷で見られる写真作品は大体がこのゼラチンシルバーかインクジェットプリントの手法で作られています。
昭和平成生まれの人には写真屋さんで「焼き増ししてください〜」といってプリントしたことがあると思いますが、それがゼラチンシルバーです。 シルバーゼラチンと呼ばれることもあります。 「写真が趣味で暗室やってんすよー」と言っている人がやっている作業も大体はゼラチンシルバープリントです。
このゼラチンシルバーの印画紙は製品化されていて普通に買うことができます。(しかし昨今、銀やゼラチンや紙、人件費の高騰で、値段が高くメーカーも減って、良質な製品が少なくなっています。)
バライタとRCの違い
暗室をやっている人の会話の中で”バライタ”とか”RC(アールシー)”という言葉が出てきますが、これはゼラチンシルバーを塗っている支持体(ベースの紙)のことです。バライタというのは厚めの紙の上に硫酸バリウムを塗りそこに感光乳剤を塗った印画紙、RCというのはレジンコートの略で、紙をレジンまたはポリエステル?でコーティングした上に感光乳剤を塗った印画紙です。
バライタはレジンコーティングしていないので、色々な薬品を吸ってしまってそれを洗い流すのに長時間水洗が必要だったり紙が水を吸ったおかげで乾燥時間が長く、波打って平らにするのが難点という欠点がありますが、白から黒への階調が広く一般的に美しいプリントを生み出せると言われています。
RCは支持体が水を吸いづらいので、短時間水洗でよかったり、波うたないので、後処理がとても楽です。一般的にバライタよりも階調が出づらいとか黒が弱いという欠点があると言われています。(物によってはRCの黒が良い場合もあると思います。)
まとめ
ゼラチンシルバーとは感光紙を作る方法のこと。その感光紙にプリントした作品がゼラチンシルバープリント。メーカーが工場で生産していて、一般向けに市販されている。一般的に「印画紙」と言えばゼラチンシルバープリントの印画紙のことを指します。
ゼラチンシルバープリントの種類は大きく分けると”バライタ”と”RC”があり、作品展にはバライタが使われ、簡易的なプリントや普通の写真屋さんのプリントはRCが使われることが多い。(現在モノクロはバライタとRC両方ありますが、カラーはRCしか市販されていない)
鶏卵紙とゼラチンシルバーの違い
そして、超ざっくりで特性も全然違うのですが、鶏の卵をゼラチンみたいに使っているのが”鶏卵紙”です。歴史は鶏卵紙プリントの方が古く1850年くらいに発明され、ゼラチンシルバープリントは1890年くらいに発明されたそうです。 鶏卵紙については現在市販されておらずこの手法のプリントをするためには卵白紙、感光紙作りの段階から自分で行う必要があります。(大昔は卵白を塗った紙が売られていて、使う人は硝酸銀を塗れば感光紙が作れたらしいです)
印画紙の感光について
今まで話をした印画紙は感光紙と書きましたが、文字通り光に当たる(感光、または露光という)と反応する紙です。光に当たるとゼラチンに混ざっている感光乳剤の中に光のエネルギーが蓄えられ現像液に漬けると光が当たったところが黒くなります。
ただし、一般的なモノクロの印画紙は、赤い光であれば当たっても黒くならない特性があります。それゆえ、暗室は赤いランプの世界なのです。
カラーの印画紙の場合は、赤い光でも感光するので、真っ暗な暗室でプリントすることになります。
印画紙を見つけたら
誰かの形見とか写真好きだった親戚から印画紙をもらってたとして、誰かに活用してもらいたい場合、売りたい場合・・・ とりあえず薄暗いところ(赤いランプの下が良い)で箱や厚紙の袋をそっと開けてみてください(開けた形跡がなければ開封しない)。そして中に黒い袋が入っていたとしたら、それ以上開けないですぐ閉じてください。 黒い袋から印画紙を出すと感光してしまって使えなくなります。
ヤフオクなどで、袋から印画紙を出して丁寧に写真を撮った出品がよくありますが、その印画紙は光に触れた時点でもう使えないものになっています。貴重な印画紙を無駄にしないために是非ともご注意ください。
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