Vintage Liner Notes 1 - "Van Halen III" (1998) 25th Anniversary!
"Without You"
(381) Van Halen - Without You (1998) (Music Video) WIDESCREEN 720p - YouTube
記念すべき最初のライナーノートは25年前の1998年に発売された"Van Halen III"。
デビューアルバムが"Van Halen"、2ndアルバムが"Van Halen II"だけど、"Van Halen III"は「3rdアルバム」ではなく11thアルバム。
"III"は今作から(結果的には今作だけ)新たに加入した「3代目Vocal」のGary Cheroneにかけてのネーミング。
「Van Halen史上最大の失敗作」などと言われることもあるけど決してそんなことはなく、いろんな不運が重なった結果受け入れられなかったのではないかと思う。
一つ目の不運は「これまでの流れ」。
2代目VocalのSammy Hagarが加入してからのオリジナルアルバムはすべて全米No.1という流れでの新作には否が応でもハードルが上がるのは必至で、「そこそこ」では許されないというレコード会社やファンからのプレッシャーたるや想像を絶するものだったと思う。
「優勝して当たり前」の巨人の監督を引き受けるようなものだ(きっと)。
そんなところに挑戦したGary Cheroneはそれだけでも称賛に価すると思う。
実際、"Neworld"~"Without You"への流れなんかは秀逸だと思うし、他にも3rdシングルの"Dirty Water Dog"や"Ballot or Bullet"などVan Halenファンに受けのよさそうな曲もいくつかあるんだけど、全体の空気感が変わりすぎていて埋もれてしまっている感は否めない。
二つ目の不運は「"That's Why I Love You"という曲」
初代VocalのDavid Lee RothからSammy Hagarに代わったときもバンド名を変えるか議論されるぐらい「ほぼ別バンド」になったんだけど、それが当たって結果的にはさらに売れたという成功体験があったから今回の交代もおそらく「明確な路線変更」を打ち出したいという意図があったのではないかと思うが、これが外れた。
その証拠に、当時アルバムからシングルカットされるのではないかと言われていた"That's Why I Love You"という曲があったのだが、最後の最後で"Josephina"に差し代わりアルバムへも入らずお蔵入りとなってしまったのだ。
曲調としては前作"Balance"からのヒットシングル"Can't Stop Lovin' You"の続編、と言われていたようなアコースティカルポップだったのだがおそらく「アルバムの方向性に合わない」という理由で外れてしまった。
確かにこのアルバムに入ると浮いてしまうかもしれないけど、リリースされていたらこれまでのファンにももう少し受け入れてもらえていたのではないかと思うともったいない。
いつか完成版が日の目を見てほしいと思う。
三つ目の不運は「ライブで昔の曲をやったこと」
Gary Cherone加入時に本人が「ツアーではこれまでやらなかった昔の曲をもっとやる」と宣言していた。
これはSammy Hagarが昔(David Lee Roth時代)の曲をやりたがらず、ライブであまりやらなかったことを受けての「路線変更」アピールだったのだろう。
確かにオールド(David Lee Roth時代)ファンには昔の曲をツアーでやることには好意的な反応が多かったはずだ。
しかし、これが皮肉にも"Van Halen III"の曲の評価をさらに下げることになってしまっていたのではないかと思う。
海外ではオーディエンスの反応があからさまに昔の曲にはよく、新曲には悪かったようだ。
Billboardチャートも御祝儀相場で4位にはなったものの、これまでのオール1位に比べれば見劣りしてしまう、というのも不運だったのではないかと思う。
これらが重なった結果、Gary Cheroneの存在価値がいよいよなくなってしまい、次の作品も制作中だったにも関わらず、バンドからというよりはレコード会社から解雇される形で脱退を余儀なくされてしまった。
実際EddieとGary Cheroneの関係は良好だったようだし。
作品全体としては「ギターの音が生々しい」という印象。
当時のEddieはアナログ録音、生楽器にこだわっていたようで、エレクトリックギターの音も全体的にディストーション少なめなこれまでよりクリーンな音作りになっていると思う。
冒頭のピアノとアコースティックギターのイントロ"Neworld"がまさにその覚悟の表れだろう。
そして、先述した"Neworld"に続く"Without You"がよく作りこまれていて秀逸!MVではショートカットされてしまっているけど(ライブでも)、アウトロが個人的には一番スキ。これは是非アルバムバージョンで聴いてもらいたい。
そして、最初で最後のEddieがVocalを取った"How Many Say I"。
往年のVan Halenファンには受け入れられなさそうだけどこれもいい意味で味があってスキ。
このアルバムの曲は、その後のベスト盤に収録されることもなく、Gary脱退後はライブで演奏されることもなくまさに「葬り去られた歴史」になってしまっているが、Eddie亡き今、オリジナルシンガーとしてGary Cheroneに是非ともVan Halen IIIの楽曲をトリビュートしてもらいたい!
ExtremeのNuno Bettencourtなら何の問題もなくEddieのプレイができると思うし、NunoもEddieは憧れの存在なわけだからExtremeでトリビュートしない手はないと思うんだけどな。。
ExtremeでVan Halenへのトリビュートとして"Without You"が聴きたい!