私が愛するカメラが生まれた国に行く
あの国に行ってからもう一ヶ月以上が経った.
それでもまだ,4日間の熱が冷めずに,時折写真を見返している.
私はもうとっくに社会人だけれども,海外に行ったことがなかった.「そろそろ海外に行こうかな」なんて思っていた大学時代にはコロナが直撃し,卒業旅行にも行くことはなく日々は終わった.
初めて「国際線」と書かれた側のターミナルに立った.
夫が台湾が好きだから.それ以外に,私が持つ最愛のカメラ,Papershootが生まれた地だから.そんな理由で,私にとって初めての海外旅行の行き先は台湾になった.
初めて日本以外の地に降りた瞬間に海外の匂いがするとか,雰囲気の違いに圧倒されるとか,そういう感覚は持ち合わせていなかったけれど,外を走るタクシーが揃いも揃って黄色いことと,当たり前だけれども看板に書かれた文字が日本語でないのを見て,「ここは日本ではない」という今まで一度も経験したことがない事実を感じていた.
日本語はほとんど聞こえなかった.音が遠くなったように思えた.
台湾に降りたら私が一歩も歩けなくなることを夫は危惧していた.その予想通り,私は鉄道の窓から見える景色が移ろう度に写真を撮り,一歩歩けば写真を撮り,目的地とは別の方向に歩き出すなんてことを繰り返していた.
そうして4日間のうち,3回迷子になった.現代はすぐに連絡が取り合える手段も道を案内してくれるツールも発達していて良かったと思う.そうでなければ私は夫と会えないままに,今も異国の地で写真を撮りながら彷徨っていたかもしれない.
台湾の景色を一言で表すならば,「いちいち愛おしい」という賞賛なのか批判なのか分かりにくい言葉がぴったりなように思えた.もちろん賞賛なのだが,とにかく撮らずにはいられない景色が多すぎて,時間がいくらあっても足りない.そんな時間泥棒に対して少し皮肉も込めたくて「いちいち」と言いたくなる.
少し台北の中心地を離れると,全く違った世界が広がっていた.
不思議なことに,一年のほとんどが雨といわれる台湾で,4日間のうち雨が降ったのは一度きりで,それも30分の短いスコールだけだった.
旅の最後に行ったのは士林夜市だった.正確には今回の旅行で2回行ったのだが,初日に行ったときにはあまりにも出店がなかったので,休日にもう一回見に行ったのだ.
休日は打って変わって人人人.たくさんの出店と観光客で溢れていた.
4日間はあっという間だった.帰ったらまた仕事の日々で,次はいつ来ることができるだろうか?なんて思いながら,ターミナルで最後の元をお茶に換えた.
日本に戻ると,稲だかはわからないが,まろやかな匂いが風についていた.日本の匂いはわかるんだな,と思った.
おわり.
今回の写真について
初の海外旅行日記を最後まで読んでいただきありがとうございます.
今回,すべて撮って出しで載せた写真はPapershootというカメラで撮ったものです.タイトルにもあるように,Papershootは台湾で生まれました.
本当にこのカメラが出す色によく合う景色ばかりが溢れていて,この環境だからこそ生まれたカメラなのかもな,と思いました.
今回の記事をきっかけにPapershootに興味を持ったら是非上の記事も読んでいただけますと嬉しいです!