のんびり投資報告
のんびり投資報告 ・・リラックス版④・・
<売り一辺倒の個人投資家と巨額資金の外国人投資家>
東京証券取引所が公表している主体別投資家の売り買いです。とくに市場での注目度の高い投資家の12月から直近までの週別の動きを表にしました。
憶円 外国人投資家 事業法人 投資信託 個人現物
12月1週 -5868 1696 724 1557
2週 2378 2924 141 -2123
3週 565 2079 724 -3013
4週 -2020 -7954 264 -3280
1月1週 1405 623 40 -1150
2週 9557 1312 -1200 -8163
3週 3841 462 -2455 -2918
4週 4105 575 -1468 -137
新NISA導入後でもあり気になるので注目ポイントを観ることにします。計算式が示す投資家別の特徴、さらに個別銘柄発掘への役立ちも触れてゆきます。
〇現物個人投資家・・・一般の個人投資家で現物での売り買いをする人の集計値です。
まず、気が付くのは個人現物投資家の場合、こうして発表される記録は殆どがマイナス、つまり売り越しです。月ベース,年ベースごとの集計でもその傾向は変わりません。買い越しが上記12月1週に記録されておりますが、これはレアケースです。、2000年以降の年べースでみても買い越しを記録するのは2008年のリーマンショックの年だけです。その理由は、市場での新株発行、公募増資等の株式はその殆どがこの個人現物投資家に供給されることにあります。つまり受け皿です。必然的にそのうち返しと言うべき売りが継続的に市場に出されることになります。今後もこのマイナス基調に変化はないと思われます。稀に買い越しが記録される場合があります。頭に入れておくべきは、その多くの場合が、短期的、中期的、長期的株価の急落時です。上記の昨年末から今年に入っての売りには、新NISAを利用した新たな節税口座を利用するための既存の銘柄の換金売りが含まれていると思われます。しかし、積立型、成長型合わせて一投資家最大限360万円です。上記全体金額の推移からしてそれほどの金額ではないと思われます。
〇投資信託・・・国内投信の売り買いがここに反映されます。東証で売り買いされたものの合計です。新NISAに関係する売り買いもここに反映されます。外国投信に新NISAの相当部分の資金が流れているという報道がありますが、当然この数字は表れません。積み立て型には国内インデックス型ファンドが採用される可能性高いと思われますが、今後じっくり買ってくるような動きが推測できるかもしれません。目先は、株式同様、新NISA乗り換えの売りが出ている可能性もあります。
〇事業法人・・・実質的内容は自社株買いです。近年、事業会社は積極的です。以前、このリラックス版➁で触れましたが、将来のM&Aの際に用いられる等価交換用自社株の存在が大きくなっております。比較的底値で買う機会が多く、株価を下支えするような動きが目立ちます。今後もこの動きは変化ないと思われます。自社株式を購入、消却するので発行済み株式数の減少となります。必然的に一株当たりの利益(EPS)純資産価値(BPS)の増大につながり、株価評価上もプラス要因です。
〇外国人投資家・・・この投資家が最も株価への影響度が大きいので、ここでは他の投資家も共通である計算方法に触れておきます。主体別投資家動向の金額は
買い総額―売り総額=買い越額(売り越額)
によって導き出されております。ここで注目すべきは総額の大きさです。買い総額、売り総額の実数をみると外国人投資家の存在感の大きさに驚きます。
例えば、上記に示された直近1月4週の場合、いくつかのソースから数字を引用し、筆者なりに100億単位で大雑把に概算すると次のような結果になります。
買い総額 - 売り総額 = 買い越金額
外国人投資家:14兆8000億円-14兆3900憶円 =4100憶円
事業法人: 3200憶円 ― 2600億円= 600億円
投資信託 : 3000億円 ― 4500億円=(―)1500億円
現物個人 :1兆9100億円 ―1兆9200億円=(―)100億円
通常、買い越金額、或いは売り越金額だけを見ておりますが、それは単純な計算結果でしかありません。計算プロセスを見ると改めて外国人投資家の巨額な売り買いを認識します。当然、週ごと、或いは月ごとにその金額が大きく変わりますが、日本人投資家と比べその絶対額が大きく異なるのはいつものことです。
〇個別銘柄発掘への役立ち
外国人投資家の売り買いが市場全体を押し上げ或いは押し下げます。同じ銘柄を外国人投資家どうしが売ったり買ったりしていることも結構あります。一方で全体の上げ基調の中で、全くその動きに孤立無援である銘柄もあります。この場合、銘柄発掘の大いなるヒントを提供するケースが多くあります。個人投資家がそれぞれの守備範囲(よく知る銘柄)として認識している銘柄にそのような動きが見えたときは要注意です。外国人投資家の場合、当然ですがファンダメンタル(業績の行方)に非常に忠実な投資行動をとります。日本株全体が上げ潮基調にあるときでも、減益予想等の銘柄は買い控えます。のんびり投資報告、前回の寄稿、実践編(オリックス)で取り上げましたが、それに該当する動きが象徴的に出ております。2019年、2020年業績不振の間、外国人投資家の大好き銘柄であるオリックスが大きく出遅れたのは、この業績不振によるものです。業績が反転に向かう2021年は単年でオリックス株は48%も上昇しました。オリックスのビジネスモデルからして、こうした業績低迷の時期は次の展開を控え戦略上の腰だめをしている時期でもあります。ほとんどの外国人投資家はその状況をよくわかっております。しかし、目先、悪い決算が通りすぎるまで積極的に参加しません。つまり、株式取得に説明責任のない個人投資家はその通過点で、行動を起こすことが出来るのです。いわゆる国際優良株と言われる外国人投資家の好む銘柄をじっくりとチェックしていればこうしたチャンスは、よくあることなのです。
個別銘柄の別の事例は今後も実践編で触れてゆきます。市場の大きな流れの中で、外国人投資家のリズムをつかみ銘柄を発掘すること、1年~3年の投資期間を考えれば、これは比較的やさしく、しかも高値を掴まないアプローチとして有効です。