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海って言うから #5
「すまんすまん」
袋の中身が傾かないように、上下動を抑えた歩き方で男がコンビニから出てきた。
「すごい迷ってたね」
「海で何食べるかって重要じゃない?」
「何買ったの?」
「焼きそば」
男がニンマリ。
「海っぽいやろ」
「どこで食べんの?」
「うーんと」
港までの帰り道を眺めて刹那、男は固まる。
「防波堤で座って食べよう」
「全然考えてなかったじゃん」
「ハハハ」
愉快そうに男は私の前
海って言うから #4
料金所から遠ざかるに従って次第に信号は減り、車も減る。
爽快度が増していく最中に、車は海沿いの一本道に出た。
瞬間、いつからかニヤニヤしていたバギーは両側の窓を開ける。
わかってんじゃん。私もニヤニヤ。
心地のいい涼しい風とともに潮の匂いが車内を洗う。
すれすれのガードレールの程なく先に目線の高さくらいの堤防。
真横では海は見えない。が、行く先を眺めてみると海岸線に沿って湾曲した堤防の裏側に、何
海って言うから #3
2時間後には日付が変わる。まだ明日の予定は決まらない。
すぐに返したくはないけど、あんまり引っ張ると身動き取れなくて迷惑だよな。まあそもそも誰のせいでこんなギリギリになってるのって話なんだけど。
やれやれ。お風呂上がって少ししたら答えよ。
イライラの後の虚無感も落ち着いた。
一人でぼーっと思いを虚空に描く。メイクを落としたら急に強風が止んで、自然な風向きが現れたように感じた。
不思議と二人だけ
海って言うから #2
“ロイさん、明後日空いてる?“
今までの流れをぶった切って単発のメッセージ。それもここ数週間でやりとりし出したばかりだった。
急だなあ。別にやりとりの中身に意味はないからいいけど。
手帳を確認すると、その日は“ニットワンピ”とだけ書いてある。1週間前の自分が、予定が空いていたその日に、秋冬用の服を見に行くことにしたのを思い出した。特に友達を誘っていたわけでもない。