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京丹波を自転車で走ってきたよ。(2024/06/14,15)
【あらすじ】
もうすっかり夏日の京都の中央部。円形に整備されたサイクリングロードをゆったり巡る自転車旅。天気に愛された三十路男が出会ったのは、見知らぬ「故郷」と蒐集家の廃屋……。
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金曜日に有休をぶち入れることに成功した私は、自家製の三連休を有意義なものにすべく、京都に向かった。
袋にロードバイクを収納して電車に乗ることおよそ2時間ばかり。亀岡駅に到着。
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ペダリングも快調。サイコンも異常なし。吹く風は若干ぬるいけれども構うことない。なぜなら晴れているから。青空を眺め見るだけで心が安らぐ。
すると、空に一点の赤い模様が見えた。目を凝らすと鳥でも、眼球の異常でもなく、パラグライダーだった。
猛烈に気分のいい私は、ふわりふわり舞うパラグライダーに手を振った。
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すると、徐々にパラグライダーが降下してくるではないか。はじめは気のせいかと思った。だが、間違いない。こっちに降りてくる!
理由は定かではない。何か異変を感じて降りてきたのかと思った。降りてきて「なに?」と尋ねてこられたら、私はなんと返せばいいのか。わざわざ空から降りてきてくれた人間に「なんでもないっす」はないだろう。
そこで私は逃げることにした。邂逅を避けるため懸命にペダルを漕ぐ。
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しかし、空からの襲来に地上の生き物は弱いものだ。息を切らしてヒーヒー言いながら走っても、真っ赤なパラグライダーはスィーっと迫ってくる。
「もうダメだ……!追いつかれる!」
そう思い、後ろを振り返るとパラグライダーが右へと逸れた。なんだ、と目線を移すと、私を追跡していたと思っていたパラグライダーは、道路脇にあった指定のポイントに着陸しただけだった。
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一人で盛り上がって、無駄に体力を使ってしまった。気を取り直して先を進む。
天若湖(あまわかこ)を横目に北へ向かうと、そろそろ今日の宿だ。予定よりもかなり早い時間に着きそう。
そんな時、大きな古びた一軒家が目が止まった。見るからに人が住んでいない、まさに廃墟だ。
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開け放たれた門の向こうを覗くと、妖怪や中世ヨーロッパに見られる美術品の模型らしいとのが沢山。いったいここは何なのか。何だったのか。
気になって、敷地内にいたオーナーさんに尋ねてみた。すると、もとは神社だったらしい。整備して住居とし、住人の一人が色々と集めて飾るのが趣味だったそうだ。
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ところが度重なる盗難被害にあって住人は蒐集品をほとんどそのままに引越し。今は土地のオーナーさんが毎日のように整理しているそうだ。
快く建物の中を見せてもらったのだが、予想通り物に溢れた屋内。どれもこれも曰くのありそうら骨董品ばかり。このままお化け屋敷にでもなりそうな気配だった。
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オーナーさんに礼をして、本日の宿へ。美山ハイマート ユースホステルという、ユースホステルの一つ。
会員の登録をすると、全国にある「ユースホステル」に安く泊まることができる。会員制の安宿の一つだが、会員でなくても十分な値段で泊まることができる。
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ハイマートはドイツ語で「ふるさと」を意味する。あえて「故郷」と書かないのは、この言葉が本来の意味以上のものを持っているように感じたからだ。
心休まる場所。
そんな意味を持つのが「ふるさと」だろう。別に生まれたところがとこだっていい。己の心が鎮まる場所なら「ふるさと」と言ってもいいのではなかろうか。
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泊まった、というより帰ってきた感覚に近かった。朝も快く見送っていただいて、実にありがたい。寂しささえ感じる。
最終日はぐるりと西側を回って、亀岡駅へと戻るルートだ。
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今日も今日とて晴れだ。京都だけに。
しょーもないことを呟けるのも幸福な証拠か。ゆったりのんびり、冗長に感じるルートではあるが最低限の集中力を保ちながら行く。案外、車通りが多い。
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このまま傾斜の緩い道が続いてくれるのかと思いきや、ぐんと登る坂道出現。しかし、快晴と心地よい風に体力はほとんど全快状態。
どんな坂でも登ってやるぜ!と思った矢先、坂道は降りへ突入。
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くだってくだって、降り続ける。どこまで降るのか、このままブレーキシューを使い切るのではないか、と不安になるほど降ったのち、見えてきた亀岡の文字。
ゴールはすぐそこだ。
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せめて温泉があればなぁ、などと贅沢なことを考えながらゴール。
後半は脇を通る自動車たちに神経を尖らしていた。しかし、全体を振り返ると、とても精神に優しい旅だった。
次は友人と共に同じルートを走ってみたい。そしてまた、ハイマートへ帰ろうと思う。